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逸材の生命  作者: 郁祈
第二章 破滅の逸材編
14/130

日常に潜む悪

 ──テストも始まり、皆がテストに打ち込んでいた。

 カリカリとと教室に響き渡るペンの音、静かな教室だからこそ聞こえる音なのだ。




 そして昼休み・・・・


 「ん~~~やっと昼かぁ」


 俺の後ろの席にいる棗は身体を伸ばしながらそう言った。


 「テストの手応えはありそうか?」


 後ろを振り返り、俺は棗にそう言う。


 「へっ、今のところは大丈夫だぜ!」


 親指をグッと立てながらドヤ顔だった。


 

 「ちゃんと勉強してたんだねー」


 隣から命が会話に入ってくる。


 「あれ?命ちゃんがパン買ってきてるなんて珍しね。いつもはお弁当なのに」


 命が手に持っているのは購買で買ったであろうパンと飲み物だった。


 「いやー作ってこようかと思ったんだけど、ちょっと眠かったから」


 「どうしたの遅くまで勉強してたとか?」


 昨日は御神槌と楠と戦っていたから帰りも遅くなったけどそこまで遅い時間じゃないはずなんだよな・・・。

 ましてや朝普通に俺の家に来ていたし作る時間は十分にあったと思う。


 「ちょっと寝付けなくて」


 「ふーん・・・」


 棗がコンビニ弁当を食べながら命と話している。

 こうしていると普通の日常で素晴らしいと思う。


 が、


 ガラガラガラ....


 突然教室のドアが開き、思わぬ人物が入ってきた。


 「おーーーやっと見つけたぜ、境川ァ」


 「こら、静かにしなさい御神槌。行儀が悪いわよ」


 何ということか。昨日あったばかりの御神槌(みかづち)(くすのき)が《恋桜学園》の制服を来て、俺たちの教室の前に現れた。


 御神槌と楠は教室に入るなり、俺と命の前までやってきた。


 

 「えっ、なに、生と命ちゃん知り合い」


 「・・・少しな」


 「ええ・・まあそれなりに」


 棗の疑問にぎこちなく答える俺と命だった。



 「探したぜェ、境川」


 「昨日ぶりですね、境川生・・・東雲命」


 二人は俺たちの所に来るなり挨拶をしてきた。昨日あれほど激しい戦いをしたというのに二人はなんともなく俺の前に来たという。


 「色々疑問はあるがなんでうちの制服着てんだよ」


 「あ?なんだ知らねえのか」


 「私たち、今日からこの学園に転校してきたんですよ」



 「え」


 「・・・はい?」


 俺と命はお互いに見つめ合い首をかしげた。



 「はっは、これは傑作だ。逸材ともあろうお前がそんな顔をするとはな」


 御神槌は大きく笑った。


 「クラスは隣ですが、これから同じ学年同士よろしくです」


 「ん?ちょっとまちな」


 俺は今の会話で一つ気になったことがあった。


 「同じ学年と言ったな。楠は知らねえが、御神槌。お前は俺の一個上じゃないのか」


 俺の卒業の一年前に無の部屋を去った御神槌。そこから考えると俺より年上というのが正しいはず。


 「あぁ。なんだそんなことか」


 御神槌は頷いて何かを理解したようだ。


 「──御神槌は貴方と同い年ですよ」


 御神槌でなく楠が答えた。


 「御神槌は貴方より早くあの部屋に入った。それだけです」


 「そういうことだ。俺が早くあの部屋を卒業しただけであって、年齢はお前と変わらないんだぜ」


 

 「なるほどな・・・理解したよ。で?なんでこの学園に来た」


 この二人は俺がこの学園にいるとこを相応しくないと潰しに来たはず。だというのにこの二人ときたら転校してきやがった。


 「さあ、何ででしょうね」


 楠は笑い、御神槌の方を見た。


 「理由なんてねえよ。俺はお前を潰す・・・それだけだ」


 「御神槌は貴方にいっぱい食わされたのが気に入らないみたいですよ」


 「ばっ、余計なこと言うんじゃねえ!!」


 「あら?余計でしたか」


 ほっほっほと楠は手を口に当てて笑う。


 「ちなみに、私たちはMr.Kの言いなりでここに来たわではありません。そこはご承知ください」


 「けっ、彼奴はお前を潰しに色々してくるだろうが、お前を倒すのは俺の役目だ」


 「ということです。貴方を潰しに来る方がいるかぎり、私たちは貴方の《仲間》ということです」


 そう言うと楠はクルッと後ろを向き。


 「今日は挨拶をしに来ただけです。午後のテストも頑張ってくださいね」


 そう言い残し、コツコツと歩きだした。


 「ほら、行きますよ御神槌」


 「あっ、待ちやがれ」


 楠を追いかけるように御神槌も教室から出て行った。



 「・・・忙しい人たち....」


 「ああ、でも今は敵じゃないみたいだし、いいんじゃないかな」


 「生に命ちゃん。随分と変わった友達作ったもんだね。まさか他クラスとは・・・」


 昨日殺りあった仲というのは黙っておいたほうが良さそうだな。








 


 ──教室を出て、御神槌と楠は廊下から外を眺めていた。


 「良かったのですか?御神槌・・・」


 「あぁ?」


 「Mr.Kに刃向かうことを選んで」


 「俺は境川に一人で勝ちたいんだ。だけどKはきっと俺が境川に一杯食われたことを報告したら・・・」


 「間違いなく、私たちは彼の潰す役目を交代させられますね」


 「だったらこれでいいんだ。俺は境川を潰す・・・Mr.Kもついでに潰すまでよ」

 

 御神槌は自分の手のひらを見てグッと握った。


 「だけどお前まで俺についてこなくてもいいんだぜ楠」


 「・・・貴方を一人にすると何しでかすか分かりえないから・・・」


 「けっ、せめて俺の邪魔にならないようにな」


 「貴方のそういう性格・・・少し気に入ってますよ」


 楠は少しだけ微笑みながらそう言った。


 「しかし境川生に御神槌・・・貴方たち逸材者が協力し合うこと、それは大きな力になりますね」


 「だけどMr.Kはもっとすげえんだろうな」


 無の部屋を作った張本人であるMr.K、彼の噂はとんでもないものだ。


 「頭脳明晰、超人とも言える力・・・そしてなにより」


 「──未来を見通す眼、だろ?」


 Mr.Kの一番の特徴、それは強力すぎる視力。境川も似ているのだが、彼は遠くを見ることしかできない。

 だが、Kはもっと遠くを・・・《未来》まで見通すとができてしまうのだ。


 「あの眼は俺たちの行動を一手先読みしてくる。どうあがいても勝てやしない」


 「でも勝たなければ、境川生は潰されてしまう」


 「ああ。だから俺は彼奴と手を組んだんだ」


 Mr.Kを潰す。そのためには一時休戦をして、共闘関係になるしか他はなかった。








 

 ──テストも難なく終わり、放課後となった。


 「おっしゃ終わったぜ!!」


 棗はガッツポーズを取りながら席を立った。


 「確かに終わったが、結果は返されたからだぞ」


 「んだよ、冷てえな生は」


 「赤点取ったら元も子もないんだからな」


 窓を眺めながら俺は棗の言葉に返答する。


 おっ、御神槌と楠じゃん。あいつらいつも一緒にいるよな。仲がいいんだな。


 

 「生・・・」


 命が声をかけてくる。


 「どうした?」


 「私今日ちょっと買い物あるから先に帰っててくれる?」


 「買い物くらいなら付き合うけど・・・」


 「ううん。いいの今日はそんない買わないし」


 そう言って命は長い髪をパタパタさせながら走り帰っていった。


 

 「いいねえ・・・」

 

 「んだ、棗気持ちわりいな」


 「命ちゃん、お前と付き合い始めたからこう・・・なんというか女らしさが上がったよなぁ」


 「どういうことだよ」


 「分からんお前は一生そのままでいることだな!」


 良くわからないことを言い残し、棗は帰っていった。


 俺も帰るか・・・と思ったがもう少しだけ教室にいようかな。

 








 ──スーパーに一人で買い物に来た命。


 「今日は何作ろうかなぁ・・・」


 どうせ生はご飯作らないだろうし、今日も私が作りに行ったあげよう。

 大好きな人にご飯を食べてもらう。そのことだけで心が跳ね上がる。


 「あら、東雲命」


 呼ばれた気がして、声の方向を振り向くと、そこには御神槌と楠がいた。


 「境川はどうしたァ?」

 

 「生なら多分先に家に帰ってると思います・・・・」


 生がいなかったらこの二人が急に怖く見えてきて私は思わず敬語になってしまった。


 「御神槌、貴方彼女に威圧かかってますよ。・・・まったく」


 「おっとすまねえな」


 ご丁寧に謝ってくる御神槌。結構いい人っぽい・・・。


 「二人はどうしてここにいるんですか?」


 「御神槌が腹減ったとうるさくて・・・」


 「俺のせいってか!?」


 「当たり前です。でなければこのようなところに寄り道するはずがあるわけないじゃないですか」


 この二人の会話を聞いてる限り、


 「二人は仲がとてもいいんですね」


 そう思ってしまった。


 「悪くはない・・・」


 「え、ええ。なんだかんだで御神槌は出会って長いですからね」


 この二人は悪い人じゃない。昨日は命令で私たちを襲いに来ただけ・・・。

 じゃなければこんなに話していて楽しい人たちとは思わないはずだから。


 御神槌と楠と楽しく話しながら買い物をしていたときだった。

 事件は起きた。



 「──ゴルァァ!金だせえ!!!!」



 レジの方から怒鳴り声が聞こえた。


 「動くんじゃねえ!!こいつを撃つぞッ」


 レジの方に足を運ぶと、店員が男に捕まっていた。

 

 「強盗かよ」


 御神槌が一歩前に出ようとしたが、


 「待ちなさい。御神槌!!彼奴は銃を持っている。迂闊に動いたらあの店員が死にますよ」


 冷静な楠に止められた。


 「ちぃ・・・」



 「なぁに見てるんだてめえら、さっさと金をもってこい」


 男はどんどんエスカレートしていっている。


 そして周りから男の仲間であろう人たちが、このスーパーにいる客を捉えだした。


 「きゃ」


 当然私たちもそれに捕まってしまう。

 

 「抑えない・・・御神槌」

 

 「くそったれが・・・」


 反抗することは出来るのだが、人質がいるせいで御神槌は動くことが出来なかった。


 

 「静かにしろお前ら!」


 ガン、


 っと御神槌は頭を蹴られる。


 楠は顔をビンタされた。


 「・・・・・」


 

 「今度うるさくしたら殺すからな」


 

 ガラス越しに見えるのは警察だ。でも私たちが捉えられている以上、警察も動くことはできない。

 私はただ、助けを待つことしかできなかった。










 ──教室・・・


 「んあ。寝ていたか」


 数時間だが、俺は寝ていたようだ。


 「ふあああ、帰らねえと命が怒っちまうな」


 机にかけられたカバンを取り、教室のドアを開けた。


 そしたらドアを開けた先に生徒会長と女の人がいた。


 「あれ?生徒会長何してるんですか」


 

 気になったので声をかけてみる。


 

 「ん?境川・・・まだ学園に残っていたのか」


 俺に気が付くなりそう言ってくる。


 「彼が境川くんですか?会長」


 「そうだ」



 「会長、誰ですこっちの女性は?」


 会長の隣にいる女の人、見たことないが、先輩のようだな。


 「ああ、彼女は──」


 「生徒会書記の"愛桜(あいさか) 三夏(みか)"です。よろしくね境川くん」


 「・・・どうもです」


 愛桜という人は生徒会の一人みたいだ。


 「会長、それではどうしますか?」


 「なにしてるんですか?」


 気になったのでもう一度聞いてみる。


 「ちょっとものが足りなくてな。買い足しに行こうと思っていただけだ」


 「だけどもう時間が遅いので明日にしようかと思っていたんですが」


 「ダメだ。今日中に買いに行ってくる。お前は帰っていていいぞ愛桜」


 「会長を一人にはできません。万が一何かあったら・・・!」


 なるほど、それでここで揉めていたわけだ。

 愛桜先輩は会長に対して相当過保護なんだな。



 「なら、俺が会長と行ってきますよ」


 「・・・なるほど、それはいい提案だ。それでいいか愛桜」


 「会長がよろしいなら・・・いいですが」


 「なら、決まりだ。境川、悪いが近くのスーパーまで付き合ってもらうぞ」


 そう言って俺は会長と一緒に近くのスーパーまで物を買いに行くことになった。




 空はすっかりと夕焼けだ。早めに帰らないとまずいが、まあこれくらいの寄り道はあってもいいだろう。

 そう思いながら道にでるとそこにはやけに人だかりがあった。


 「む・・・これは・・・」


 会長も気づいたらしく、近くまで来ると警察もいた。


 「何が起きてるんだ・・・・?」


 スーパーの前に警察がわんさかいる。それを囲うように野次馬たちがいる。


 「どうやら強盗でも入ってみたいだな。これでは物を買うことができんな・・・別のところに行くか」


 会長がそういった時、俺は店の中にいる人物に目がいった。


 「命・・・・?」


 「ん?」


 会長が振り向いた。


 俺は放課後に言われた命言葉を思い出す。

 そうだ、あいつは買い物に行くと言っていた・・・。


 「会長、どうやらこの中に命がいます」


 「なんと・・・それは厄介だな」


 会長も別のところに行くことはなく、俺と一緒に店の外から中の様子を確認する。

 

 「確かにあれは・・・東雲だな」


 「ッ!」


 俺は目の視力と聴覚の力を使い、店の中の様子を探った。

  

 「(ざっと、5人程度か・・・でも銃を持っているな)」


 「(ん・・・?御神槌と楠もいるな)」


 あの二人がいてなぜ騒ぎが収まらないか考えたけど、人質がいるから迂闊に動けないようだな。


 「境川、どうするのだ?」


 「──決まってるじゃないですか」



 俺は何があったも命を守ると誓った。


 「助けに行きます・・・!」

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