兆し
提案・・・それは伊吹と樹では予想はおろか考えすら至らないものだった。
だが、もはや御神槌の提案を受け入れる以外に術はない。絶たれている。
紫翠から的、狙いを変え他の選手を葬るのもありだが、こうして紫翠と交戦している間にほとんどの選手が脱落していた。
「だが、できるのか?」
「分からない。だが、これがどのみち最後だ」
そういい樹はバッと手に持っている刀を伊吹に投げ渡す。
「・・・・。確かに皇のやつに効いて入る。だが、威力が足りない。それを補うのがこの場において圧倒的な人材はお前だけだ・・・・」
その人物は御神槌だ。御神槌の提案は織田樹の最後の刀を使い、伊吹の正確な照準を駆使し、空気を高速弾丸のように放てる御神槌自身で放ち攻撃するというトリプル連携技だった。
しかし、この方法にはリスクがある。伊吹の言い放った位置に御神槌が合わせないといけないことだ。伊吹の逸材は「狙撃」、彼だからこそこの遠く離れた位置で紫翠を射抜くことができた。しかし一般射程しか持ち合わせていない御神槌となるとこの技は高等テクニックに変化する。
「――それでもやらないと・・・ここで奴を止めないと」
「いや、待ってくれ三人とも」
この場にいない人物の声が聞こえ三人はバッと後ろを振り向く。
そこにいたのは境川だった。
「境川・・・」
「いつのまに・・・」
「どうした?こっちに来て」
「お前たちの意見は聞いたよ。だが、待ってくれ。奴は・・・紫翠はオレが倒す」
ボロボロになった境川が三人にそう言った。
それに真っ先に反応をみせたのは樹だった。
「二度も敗北をし、なお戦い続けるか。諦めが悪いってもんだな・・・」
ハッと笑い境川を焚きつけたが、
「――オレが倒すんだ」
「ッ・・・」
いつの間にか境川が振り向いた伊吹たちの後方にいた。
ビルの屋上から紫翠を睨みつける。
――遠くからの視線、それに気づいたのか・・・それともたまたまなのか、紫翠は弾丸の放たれた方向に顔を上げる。
「・・・・紫翠?」
ルナと美月に攻撃しようとしていた紫翠が動きを止めたことにジャンヌは何かを感じ取った様子だ。
「・・・見つけたぞ。やはり生きていたか境川」
「「生・・・!?」」
紫翠の言葉にルナと美月が声を揃えて周りを見渡す。
しかし、いるのは遠く離れたところなので周辺には誰もいなかった。
「ずいぶん遠くにいる者だな。臆したか?なら、先にこの者たちを始末しておくよ。ゆっくりくるんだーー」
そう言いかけた瞬間だった。
――バギィッッ!!!!!!!!!!!!!!!
次の瞬間、フッと笑みを浮かべ再びルナたちの方をみた紫翠の体が大きくふき飛んだ。
紫翠の体を飛ばしたのはひとつの拳。ついさっきまでなかった拳がこの場に突如出現した。
いや、拳だけではない。
移動して来たのだ。
遠く離れた位置、その場所から・・・・
「ッ・・・・なん・・・だ・・・と」
紫翠は受け身をとりスッと立ち上がる。
そう、殴ったのは紛れもなく境川だった。




