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逸材の生命  作者: 郁祈
第二章 破滅の逸材編
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逸材VS逸材

境川生の過去を知った命

彼の過去は暗く、重いものだった。だが、それを乗り越え生きてきた生

 彼は誓いがある限りは立ち止まらない・・・・。

 「破滅の・・・逸材者・・・・」


 俺の前に立ちはだかる男、御神槌(みかづち) (しのぶ)はそう呼ばれているらしい。

 由来はどう考えても奴の手から繰り出される攻撃だ。

 

 さっきはギリギリで反応することに成功したのだがもしアレを直で喰らっていたら俺の身体は消し飛んでいただろう。

 

 「(何とかして勝つ方法を考えないと・・・)」


 肉体の強化の力なら俺も可能なのだが、奴は強化なんてものを通り越している。

 多少の知識と力だけを重点に置いた逸材。なんの特徴のない俺では勝つのは難しいだろう。


 御神槌は問答無用とばかりに拳での攻撃を繰り出している。

 俺は逃げるのが精一杯で、何もすることが出来ない。


 「はっ、逃げ足だけはいっちょまえのようだな」


 そういい、御神槌は攻撃を止め、その場で動きを止めた。


 「・・・・?」


 何をするのかが分からなかったが、御神槌の周りに空気が集まっているのが一瞬見えた。


 「ッ・・・!まさか」


 こいつ、さっきまでの攻撃は適当に攻撃していたんじゃない!!

 彼奴は削っていたんだ。この周りの空気を。


 「気がついたか・・・さすがは逸材者だなァ」


 拳をグッと構え、御神槌は中腰になる。


 奴の周りには今空気が無い・・・。それは削り取ったからだ。

 だが、削り取った一点に空気が集まっている。あの拳の構え・・・


 「ッハァ!!」


 拳を真っ直ぐに放ち、空気を弾丸のように飛ばした。


 俺は交わすことが出来ず、御神槌が放った空気弾は俺の足におもいっきし当たった。


 「ぐ・・・」


 「(しょう)!!」


 「命・・・・俺は大丈夫だ・・・」


 

 「──ほぉ、足を吹き飛ばすつもりで飛ばしたんだが、思ったより頑丈な足のようだな」


 ギリギリで足の筋肉の強化が間に合ったようだ。

 だが、校舎から飛び降りても平気なこの強化をいとも容易く超えてくるこの威力・・・そしてあの作戦・・・

 間違いない。御神槌忍はまごう事なき逸材者だ。


 

 「(足の強化ですか・・・境川生もやりますね)」

 

 楠は遠くから見ている。

 御神槌の打った空気弾で勝負が決するかと思っていたが、少々侮っていたみたいですね。



 

 「くそ・・・」

 

 足が動かねえ・・・さっきの空気弾でやられたか。


 「はっ、動けねえか。これで終わりよ」


 御神槌は再びさっきと同じ構えを取る。

 空気がまた奴の拳のあたりに集まっているのが見える。


 「ッ・・・・」


 俺は閃いた。このピンチな状況下を一転させる作戦を。


 もうこれしかない。


 「く・・・」


 足がやられているため、立つのは厳しかったが、俺はなんとか堪えて、その場に立った。


 「ほぉ、立つか・・・だが、今の状態で何ができる!!喰らえッ」


 ヒュゴオオオ


 御神槌の拳の先に集められた空気はさっきよりも大きく激しい音を立てている。


 ドゴンッ・・!


 御神槌は空気を再び拳で殴り超高速の弾丸のように弾き飛ばした。


 勝負は一瞬・・・!


 

 今だ!


 俺はギリギリで体制を変えるだけで弾丸を交わした。


 「その行動は読み通りだぜェ!境川ァ」


 御神槌は俺の動きを読んでいたのか、弾丸を飛ばすと同時に、俺の方に向かって走ってきていた。


 「喰らえ、このままテメエを消してやる」


 拳を上にあげ、振りかざす気だ。

 さっき地面に穴を開けた同様俺にそれをやる気か。

 

 ──だが、"それは俺の計算内だ"


 

 「ッ!待ちなさい御神槌!!」


 

 (くすのき)が俺の作戦に気がついたのか、御神槌を声で止めようとするが、御神槌には届いていなかった。


 俺は御神槌の拳を間一髪で交わした。


 「ハッだったらこれだ」


 御神槌はクルッと一回転しそのまま足蹴りを俺に食らわして来た。


 「ぐッ・・・・」


 俺は足がやられていた為、交わすことが出来ず、足蹴りを喰らいそのまま大きく吹き飛ばされた。


 吹き飛ばされた先には丁度命がいた。



 「しょ、生・・・。大丈夫!?」


 スグに飛ばされた俺の元に駆け寄ってくる命。


 「大丈夫だ・・・この勝負、俺の勝ちだ」


 俺は勝利宣言を御神槌に向かってする。


 「何言っていやがる・・・」


 御神槌は何が起きそうとしているのか理解をしていなかったが、


 「ッ・・!」


 気がついたか・・・だがもう遅い。

 

 ビュン─さっき御神槌が放った空気弾は逆再生をしているかのように戻っていき、さっき俺がいた位置には御神槌がおり、自分の攻撃をまともに喰らった。


 

 「一体・・・どうなってるの?」


 命が理解できていなかったので俺は分かりやすく命に説明をする。


 「御神槌の振りかざす攻撃は殴ったところを消し飛ばす力がある。それは最初にみて理解していただろ?」


 それは地面だから地面が消えた。だが、それを空気中にやっていた時、空気は御神槌の削ったところに集められていた。

 それが奴の空気弾の正体。

 ──つまり、彼奴がいま殴った空気中の真っ直ぐには自分で放った空気弾が残っている。

 

 「そっか。生が攻撃をかわしたから当たったのは空気になる。しかもそのまっすぐから引き寄せられるのは普通の空気じゃない」


 命は俺の説明で理解してくれた。ホント理解力がある人は助かるぜ。


 

 自分の攻撃でやられた御神槌は俺の今の説明を聞いていて、


 「ば、馬鹿な・・・俺の攻撃を逆手に取るだと・・・・」


 俺が空気弾を交わすことは想定できていたが、その空気弾を利用してくるまでとは予想出来なかった。


 「──どうやら私たちの負けのようですね、御神槌」


 楠が御神槌のところへと歩いていく。


 「ま・・まだ俺は負けちゃいねえぜ、楠!!」


 御神槌は起き上がって楠にそういう。


 「いえ、貴方の負けです。御神槌。これ以上戦ったとしても彼は貴方の攻撃を逆手に取るでしょう」


 「・・・・」


 御神槌は楠の言うことに反論が出来なかった。自分でも理解しているみたいだ。


 

 「境川生、東雲命・・・今回は我々の負けです。貴方たちの考えは見させてもらいました」


 「いつかまだ潰しにくるのか?」


 「いえ、・・・いや近いうちまた会うでしょう。ですが、その時は力でなく、頭脳で勝負をしましょう」


 そう言って御神槌と楠は暗い夜道に消えていった。

 御神槌の奴は案外ピンピンしていたな・・・。



 「ふぅ・・どうにか潰されなかったな」


 命の方を見て俺は微笑む。


 「潰されなかったじゃないわよ。今後もあんな感じで襲われると思うと私・・・・」


 俺は不安そうにしている命の頭を撫でた。


 「な、なによ」

 

 「大丈夫、誰がこようと負けやしない」


 俺は逸材者の最高傑作。万が一があったとしてもいくらでも勝機を考えることだってできる。

 

 「とりあえず、帰ろうぜ。明日はテストなんだ」


 俺は歩くことも満足にできなかったので、命の小さい肩に掴まり帰宅することになった。


 





 

 ──命と生が公園から去った後、


 楠と御神槌は公園に残っていた。


 「なぜ、戦いを中断した。あの時の奴の状態ならもはや負ける余地はなかったはずだ」


 生の足は最初の空気弾で潰されていた。消し飛びはしなかったが、あの時なら満足に足を動かせないはずだからどうにかなったはず。


 「確かに貴方の力は強力よ、それこそ誰にも負けないくらいって言ってもいい。だけどさっきの戦いを見ていて少し疑問に思ったの」


 御神槌の逸材は辺りを消すことが出来る究極の力。

 

 しかし、同じ無の部屋の卒業者である境川には御神槌のような固定した力を感じなかった。

 彼は何かを隠している・・・。逸材の力を隠している。

 

 御神槌と戦い、肉体の強化は持っていることは知っている。だが、それが彼の力ではないはず。


 「まさか頭脳だけで御神槌とここまで戦うとは結構キレ者ね」

 

 彼をこのまま始末するのは少々惜しいところがある。楠は今回の戦いで境川の頭の良さを完璧に把握した。


 「次会うのが楽しみね」








 

 

 無事に家に帰り、俺は家の前で命と別れてきた。

 明日からはテストだ・・・早めに寝ないとなぁ。

 

 俺は家に帰り風呂に入ってそのまま布団にダイブして寝落ちした。





 ──同時刻、東雲家


 「はぁ。今日は息抜きで出かけたってのに色々あったなぁ」


 中学時代の同級生にあったり、何か新しい敵と遭遇したり。 


 そしてなにより、私は知ることができた。生の中学年代の事を。

 大方重いことなんだろうとは思っていたけど、生の過去は私が考えるより、過酷で辛いものだった。

 逸材になるということは相当な努力と犠牲を必要とする。生が話してくれたことからはそういうことだと私は個人的に理解している。


 でも知ることができたので私の気持ちは凄く高まっている。だって私の知らない生の事を知ることができたんだもん。

 

 「あーーー幸せ・・・」


 ついさっきまで私たちは始末されそうだったというのに私ったら・・・。


 でも何をしていても考えるのは(しょう)のことばっかり。頭の中ではいつも生がいる。


 「生・・・・生・・・・フフ」


 付き合い始めてからというものの、私はホントどこかおかしい。

 いや、元々こんなんだったのかもしれない。でも告白する勇気がなくて態度が少しだけ変わっていたのかも。


 今日中学の同級生にあって私がまたやられそうになったときも生が私を守ってくれた。

 

 その時のことを思い出すと胸がドキドキする。あぁ、あの時の生は本当にカッコよかった。

 隣の家に住む私の愛しい人。どんなときも私のことを第一に思ってくれるとても頼りになる人。


 私は最愛の人のことを思いながら眠りについた・・・・。




 そして迎えた朝。テスト当日の日。


 俺も命も寝坊することなく起きた。


 「おはよう命」


 「おはよう生」


 命はいつもどおり、俺の家に来て朝ごはんを作ってくれる。


 いつもは気にしていなかったがエプロンの姿の命はとても可愛い。付き合い始めてからかそういった命の動作がとても可愛く思える。


 「どうしたの生?」


 命に見とれていたなんて言えるわけがない。


 「いや、なんでもないさ」


 あの小柄の体型でエプロンか・・・いやぁ、可愛いもんだ。




 「棗くんちゃんと勉強してるかな」


 朝ごはんを食べながら命が話しかけてきた。


 「んー大丈夫だろ。あいつもなんだかんだでやるときはやるやつだからな」

 

 前回の小テストもギリギリで赤点を回避していたんだ。問題ない・・・と思う。


 

 朝ごはんを食べ終え、俺と命は学園に向かって歩きだした。


 教室に入り、チャイムが鳴る。朝のHRも終わり、ついにやってきた


 ──テスト、最初の科目は数学・・・。


 このテストで一つでも赤点があれば即退学のデスマッチだ。


 生き残るには赤点を回避するしかない。


 だから今日は皆いつもより真面目な態度をしている。


 そしてチャイムが鳴ると同時に・・・テストが始まったのだった。

なんだかんだ言ってこの話バトル多いですね(笑)

でも基本コンセプトは学園ものなのでそこまで激しい戦いはすることはないです。

頭脳戦は多そうだけど

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