再起不能じゃない
「あら、負けるのは貴方よ・・・皇さん」
ルナから発せられたのは自信に満ち溢れた声。
確かにルナの逸材能力は驚異だ。他人の動きを真似すると言うのはかなりの厄介。紫翠がもし自分の動きを真似されたら敵わないだろう。
だが、それはルナが紫翠の動きを「模倣」できたらの話。知っての通りルナの模倣はできることをやっているだけでできないことはできない。一般人の動き程度なら難なくこなすだろう。だが、逸材者は別だ。完璧には再現できないが許容範囲でなら再現できる。その際に色々と動きなどが劣化してしまい結果的に満足な戦いなどはできない。例えるなら伊吹のもつ「超広殺傷範囲」の力。伊吹はどこに銃弾が飛んで行くかが読める能力がある。おまけに超遠くからも放てる狙撃範囲をも持ち合わせている。それをルナが模倣するとなると範囲はグッと縮まり制度だって落ちてしまう。
「強気な発言だな。アメリカの才女よ・・・無茶と無謀では意味合いが異なることを知らないのか?」
「そんなのやってみなきゃ分からないわ」
「お前の力は評価している。だが、真似事で俺を喰らうことはできやしない」
その言葉は証明されている。ルナが誰かの真似をしたとしてもその人物が勝てないとなっているとルナでも勝てない。ましてや神無木が境川より厄介と言ったことはルナに対しても相当の印象となっただろう。
「・・・確かにそうね。真似事で貴方に勝てるとは思っていない。でも真似事だからこそできることがある」
「愚かな」
「――みせてあげる」
ルナがそう言った刹那、
パッと紫翠の視界からルナが消えた。
「ッ・・・これは」
「こっちよ!!」
「ッ」
ルナが突然使った技は「境川」が使った「視線誘導」だった。
「二度は効かない!」
カッと目に力を強く入れ移動したルナの方を見る。
そしてビュンッと拳を振りかざした。
ドゴーーーーン!!!!!
二人の拳はぶつかり合い激しい物音が立つ。だがあくまでルナは模倣・・・力では敵わず大きく後ろに吹き飛ばされる。
「きゃあ!」
「・・・境川の真似事とはくだらぬ。それにお前も弱っているだろう。そんな状態で何ができると言うのだ」
紫翠にはもう視線誘導は通用しない。一度体験しているからこそ効果が薄れている。
(・・・嘘でしょ。彼は相当な化け物)
既に神無木と戦い負傷をしているルナの実力では敵わない。しかしルナは今の一撃をくらって分かっていた。紫翠の力量が。
「確かに私ではs実力不足だったみたいね。でもね・・・時間切れよ」
ガクッと地面に膝をついたがルナは後方を見てニヤリと笑う。
「ッ・・・しまーー」
ルナの後方に潜む者、紫翠はそれを忘れていた。
「「――遅いぜ」」
ダァァァァァアアンん!!!
その音が大きく響き渡る。そして紫翠が反応した時には既に遅く、
パァン・・・と胸の辺りを貫いた。
「がっは・・・」
口から大きな血を吐き出し地面に倒れる。
「やったの・・・」
神無木は恐る恐るルナに問いかける。
「多分・・・ね」
地面に倒れている紫翠を見ながら小さい声でそう言う。
確かに胸を貫いたが彼は消えていない。
そう、この戦いで負けたものは消えゲート前に送還される。ここにたどり着く間に他の国の代表選手たちを倒した時がそうだった。
おそらく神無木はそれを知らない。
(消えない・・・まだ戦えるって言うの・・・)
チラッと紫翠の後ろにいるジャンヌをみる。
その時ルナはゾッとした。
見た感じジャンヌには戦う力はない。優れた指示を出す立場だと感じてたからだ。
だから紫翠が倒れた今、焦りを見せてもおかしく無いと思ってた。
しかし、ジャンヌは焦るどころか不敵な笑みでこちらをみてたのだ。
「美月!!彼は消えてない、逃げるわ・・・」
ルナがそう叫んだ瞬間だった。
ゾッとする圧力がこの辺りを包み込んだ。
心臓を貫かれて倒れていたはずの紫翠がググッと立ち上がったのだ。
「彼はまだ再起不能じゃない。まだ生きているわ!!」
「ッ・・・消えてない・・・そうか」
神無木も思い出した。ルナに会う前に何人かと戦いそれを倒した時にゲートに送還された人のことを。
「――逃すものか」
起き上がった紫翠は先ほどよりも鋭い何かを感じ取らせた。




