一番の得意
「アメリカの為・・・ですか」
「イエス。私はただ単に生に会いに来たわけじゃない。アメリカ代表としてこの場に立っている」
雰囲気がすっかりと真面目モードになったルナは凛とした声でそう答える。
美月が感じ取ったのは雰囲気だけではない。実力もだ。
さっきの攻撃──上へと逃げたはずが、まるで伊吹の扱う『跳弾』を行った・・・。それだけではない。
"口調"、攻撃といい口調といい、彼女はすべてを模倣するがごとく他人に化けている。
(雰囲気だけ似せるならまだしも・・・攻撃パターンまで織り込んでくるんなんてね)
「あら?少しだけ焦っているのかしら?」
何かを見透かしたようにルナはにやりと笑う。
「・・・ちょうど"時間"も来た。見せてあげるわよ」
「時間?」
ルナがそう言うとスゥゥと瞳を閉じて深呼吸を始める。
ヒュゥゥゥと風の音だけが響き渡り辺りは無音となる。
(彼女は・・・何をする気・・・!)
とにかくやらせては駄目だ。美月の直感がそう叫ぶ。
「くっ──紫電!!!」
ブゥゥンと紫色のオーラを纏い、ルナに突進する。
ギュオオオオオオオ!!!!!
「喰らいなさい!!」
隙だらけのルナに美月の渾身の一撃、しかし・・・
ドォォオオオオオオオオオンッ!!!!!
紫電の一撃をルナは片手で受け止める。
受け止められた際に美月はハッと気づいた。
「嘘・・・・!」
ルナの身体は黄色い光のオーラが纏われている。
そう、それはまるで『紫電』と同じくして・・・・。
「あら?言ってなかったかしら」
美月の拳を受け止めながらルナはそう言う。
「私の逸材は他人の行動、言動、思考──全てを真似する『模倣』」
「ッ!!!」
「出会い、そしてこの瞳で見たものは大抵真似することがでいる。逸材者を除外してね・・・」
「なら、なんで・・・」
「多少の時間があれば逸材者でも模倣は可能。ただし、使う時間は限られているけどね」
一般の動きよりも個性かつアグレッシブな動きの多い逸材者の真似はルナとは言えども大きな負担となり、簡単には行えない。
瞳で見て自分なりにアレンジを加え始めてそれに近い動きができるようになる。
「この紫電?だったかしら?これだってそうよ。私の光のオーラを貴方のように纏っているだけにすぎない」
「.....」
簡単には言うがそう容易くできるわけではない。ルナが普段まとうオーラと紫電のオーラはあまりにも違いがある。
それをいとも容易くルナは調整したのだ。
「くっ!!」
美月はもう片方の腕でルナに掴まれている腕をバンッと叩く。
そしてその隙に一歩だけ大きく後退した。
「あら?いい動きね。参考にするわ」
(・・・・!!)
ルナに見せる動きは着実に吸収されてしまう。
このままでは勝ち目はない。
「ひとつだけ教えてあげる」
「何かしら?」
「私の模倣、逸材者の動きはあまり吸収してない・・・でも」
ルナの口調はゆっくりと恐ろしいことを告げる。
この言葉を聞いたとき、誰しもが絶望するだろう。彼を知っているならなおさらだった。
「──生・・・。彼の動きだけはちょっと特殊よ。一番得意かも♪」
アメリカで培われたルナの力は一番手ごわい人物をマスターしていたのだったからだ。




