アメリカの再来
「これで終わりだ」
紫翠の冷たい一言。マズイ・・・トドメを刺しに来る。
このゲームが始まり何人かは敗北している。どうやらゲートをくぐった際に身体に何らかの術がかかり肉体が無くなるか力尽きたら瞬時にゲート前の控え室に転送されるらしい。
つまりこの戦いで死ぬことはない。だが、こんなに早く負けるのはマズイ・・・。
「く・・・」
極致に入るしかない・・・だが、三十パーセント以上はオレの意志でできるわけではない。
目の前の絶望な状況をして半分諦めかけた時だった。
「待ちさない、紫翠」
紫翠を呼び止めたのは思わぬ人物、ジャンヌだった。
「...どうして止めるんですか?ジャンヌさん」
「彼──境川くんはまだ全力ではない。全力の彼を前にしたときこそ、貴方は"真に強くなれる"・・・違う?」
「・・・・」
どういうことだ。オレが強ければ紫翠は更に強くなれるというのか・・・?
「ですが、ジャンヌさん。もはや境川はダウン寸前。彼の力を引き出す方法なんて」
「いえ、あるわよ。私なりに彼を調べたの。・・・どうやら彼は仲間を傷つけられるのがあまり好ましくないみたいよ」
「仲間...ですが、この場には」
「いるじゃない、一人。しかもとっておきの人材が」
そう言ってジャンヌが視線を向けた先にいた人物は、
「命──」
「あら?貴方も気づいたかしら境川くん。さあ紫翠、彼女を傷つけなさい」
「女性に手を挙げるのはいささか気が引けるが、仕方あるまい」
そういい紫翠はオレの前から方向転換し、命の方に向かって歩き出す。
「ま、まて──紫翠・・・!くっ、逃げろ!!命!!!」
止めるにも足がすくんで動けないオレは全力で命に叫びかける。
俺の叫びに命はクルッと後ろに向いて走り出した。
「その程度のスピードでオレから逃げれると思うか」
紫翠はググっと足に力を入れて移動をしようとする。
その時だった。
「これはチームプレイだ」
どこからか音もなく現れた人物・・・。
「会長──」
「なんだ貴様」
バッと紫翠の前に立ちはだかり指に挟んでいた何か弾をバッと紫翠の瞳の前に投げつけた。
「悪いが私は戦闘向きではない。知略者でね」
パァァン!!!
神々しい光が一瞬でこの場で展開された。
「これはッ!!」
「逃げるぞ境川!!」
会長はオレを担いで走り出した。
命はどうやらこのことを察知していたらしくあらかじめ閃光の届かない範囲に移動しただけだったようだ。
「....見失ったか」
「閃光弾のようね。してやられたわ」
ジャンヌは足元に落ちている光が切れた閃光弾を拾い上げそう言う。
「あの男は逸材者ではない。だというのに戦いなれをしているようだった」
「この日本でも結構野蛮なことが起きていたみたいね。侮っていたわ」
「ですが、発見次第倒しましょう。今度は本気で──」
ある程度走りオレたちはビルの中に身を潜めていた。
「会長、よくオレたちの居場所が分かりましたね」
「なにやら激しい音が聞こえたもんでな。もしかしてと思ったら当たっていた」
「私は生が無事でとりあえず安心したわ」
ホッと胸をなで下ろす命。
「でも会長がここにいるってことは・・・」
「ああ、神無木は現在一人だ。彼女いわく一人でも大丈夫と言っていたからな。だが、すぐに戻るつもりだ」
「相変わらずだな美月は・・・」
我が師ながらだなと少しだけ感心してしまう。
窓から外を眺める。いろいろな人達が戦っていた。全員が逸材者ではない。それぞれ武器などをもったりして闘っている。
「ここも時間の問題だな」
「大丈夫だ。命がいるからな」
「任せて、未来の動きは把握するから」
命はいつの間にか逸材を発動し髪の毛と目の色が赤くなっていた。
「なるほど、心強い」
「やれやれ...みんな物騒ね。よって集るなんてね」
会長と別行動をしている美月は各国の一般人と闘っていた。三十人は既に倒してゲートに送り返している。
「これじゃまるで戦争ね」
ようやく周りに人がいなくなりホッとした時だ。
──ピシュンッ
「ッ!」
キンッ──
美月の顔をめがけて何かが飛んできた。間一髪で弾き飛ばしたが後一歩で危なかったところだ。
弾いたものはパァァンと散らばるように消える。
「光の弾・・・?」
「──あら?やっぱり弾いたわね」
中層のビルの上から三人の人影が現れる。
影で見えなかったが、徐々に影が剥がれ認識できるようになる。
金色の髪の毛をしておりエメラルド色の瞳、髪は三つ編みを編みこみした少女。
「Hello.貴方日本人よね?」
「──違うと言ったら?」
「フッ・・・」
少女はニヤリと笑みを浮かべ、ゆっくりとこう言った。
「答えな"美月"」
「ッ!!!」
その口調はまさに境川生そのものの口調だった。
「貴方何者!?」
「私は"ルナ・ユーフラテス"。アメリカ代表としてこの場に立たせてもらったわ」
「アメリカ・・・そう、なるほどね」
「見ていたわよ、美月さん結構お強いのね」
フワッとビルから飛び降りきれいに着地をする。
その動きは寸分の狂いもない境川の動きで。
「なぜ、貴方が生の動きができるのかしら?」
「好きだからよ」
「なっ──」
思いもしない回答で美月はボッと顔が赤くなる。
「貴方よくもそんな言葉を平然と言えたわね」
「私と生はそういう仲だからね」
「えっ──」
「あぁ~~久々に会いたいわ。生・・・今は敵でも一目みたい...ようやくチャンスが訪れたんだから」
なにやら一人で余韻に浸っているようだった。
「貴方、生と知り合いみたいだけどどういう関係で?」
「過去にこっちに来ていたことがあるのよ。そしてアメリカに生と一緒に行った関係」
「東雲さんがいながらあの子は・・・」
美月はやれやれと言わんばかりにどよーんとした空気を醸し出している。
「命とも貴方知り合いなの?へぇ、これは思わぬチャンス到来かしら」
「悪いけど生は今別行動中よ」
「嘘ぅ・・・」
おもむろにショックを受けていた。同性なのにちょっとその仕草が可愛いと思っちゃう。
「...これも運命なのかしらねえ」
フッとルナの雰囲気が変化する。
「(彼女は一体・・・)」
生の口調をしたりと色々謎めいたことが多い。美月はそれに翻弄されてた。
「まあしょうがないか。"境川"は追々探すとして、今はアンタを倒すことに集中しよう」
「(この口調...!)」
瞬間、パァン!!!
ルナの指先から光の弾が発射される。
「くっ──紫電!!」
美月は紫色のオーラをまとい宙に逃げる。
だが、
ルナの放った弾は地面に当たると消えるはずだが、消えずに上へと跳弾した。
「嘘...!」
バァァン!!と直撃はしたが、紫電がバリヤー替わりになり何とかダメージはなかった。
タッと地面に美月は着地する。
「(今の技は跳弾・・・銃を扱う伊吹くんの動きそのものじゃない)」
「避けた・・・結構やるんですね。美月さん」
「本当に貴方は何者よ」
「私?」
ルナはフフと薄く微笑みこう言った。
「私は──逸材者ですよ...」
その言葉はルナにとって最愛の人物がかつて似たことを言った言葉の受け売りだった。
その人物は逸材の最高傑作と言っていた。でもルナは違う。でも少なからず問われたらそう答えたかった。
「逸材者・・・」
「そう...そして好きな人物は境川生」
ルナはなんの辱めもなくそう言った。
「──アメリカの為に闘い、私は勝つ」




