もう終わりか
「よう、見つけたぜ、境川生」
目の前に立つ男、皇紫翠はそう言った。
「早すぎるぞ、お前・・・」
「オレは万全なお前と闘い、そして勝つ。お前さえ潰せば日本はおしまいだろうしな」
自信に満ち溢れた紫翠。だが、彼の目は本気だ。
「....やるしかないのか」
辺りを見渡す。ビルに囲まれたこの場所は逃げるのには最適。闘うフリをして逃げる・・・それしかない。
「辺りを見渡したか。地形を把握する・・・なるほど」
「よく観察しているな」
ここで体力は使えない。開始前半でブーストかけると後半にはすっからかんになってしまうからだ。
「──行くぞ」
一方で紫翠は全力だった。
躊躇なくオレに向かって拳を放った。
ドォオオオオオオオオオオオオオオン!!!
互の拳がぶつかり合う。
「くっ・・・・!」
紫翠の力はやはり強力なものだった。
一撃で理解した。この力は凄まじいと。
「くっそ!!」
拳を弾きすかさず紫翠の顔にめがけて肘打ちを決めようとする。
だが、紫翠はそれを片方の腕で止め、ブン!と下にオレの肘を戻しクルッと跳躍をし蹴りを繰り出した。
「なっ・・・」
想定外の動きにオレは驚く。
ガンっ・・・。紫翠の一撃はオレの脳天にヒットした。
「どうした?その程度か」
「がっっは・・・ごほっ」
「生!!」
後ろから命の声が聞こえる。
「フン、これでMr.Kを倒したというのか・・・。愚かだな。奴も年だったという訳か」
「....悪いな、命」
久しぶりに使わさせてもらうか。
オレはキッと紫翠を睨みチラッと命の方を見る。
「・・・・?」
その刹那、紫翠の視線は命に寄せられた。
命とオレの距離は割と遠い。紫翠の視線が近くにいるオレではなく、遠くの命・・・それをみた。つまり、近くにいるオレの位置は見えなくなり、消える。
「ッ!!!」
紫翠が視線誘導にかかった隙にオレは背後に素早く回る。
一瞬で背後に回り、そのまま右足で蹴りをお見舞いする。
ガンッと見事にヒットし紫翠は思いっきり吹き飛ぶ。
ザザザと地面に足を擦りつけて吹き飛んだ衝撃を紫翠は全て消した。
「バカな・・・奴が消えた...」
「案外引っかかったな。まぁ、これは賭けだったが見事に出来たみたいだな」
「これでも一応は修羅場を抜けてきたんでね。そう簡単には負けないぜ」
「──これは想定外・・・。随分と苦戦してますね紫翠」
「ジャンヌさん」
いつの間にかビルの前にジャンヌが立っていた。
「境川くんは恐らく戦いながらペースを上げていくタイプ。時間をかければかけるほど、彼の実力は増していくでしょうね」
ジャンヌは冷静にオレを分析していた。
「不意を喰らっただけです。あの程度ではこの私は超えたとは言えないでしょう」
「・・・・」
ジャンヌは少しだけ考え、
「まあ、それもそうね。貴方の逸材はどんな逸材よりも優れている。彼にだって負けないでしょうね」
「言うじゃないか」
「境川生、お前の逸材は何かは分からない。だが、どんな万物だろうとオレは喰らえん」
「なら、見せてやるよッ!!」
オレは目を一瞬閉じ意識を極限まで集中し目を開く。
バチバチと目からは稲妻がバチバチと走り、目つきは鋭くなる。
「これは──」
「....極致(Perfezione)・・・完全ではないけど自力で入れる者が存在したなんてね。驚きだわ」
まさか前半で使うことになるとは・・・三十パーセントとは言えども長くは使えない。
なら、
「一気に行くぞ!!」
オレはドンッ!とダッシュし一瞬で紫翠の前に入り込み間合いを詰めた。
「せい!はぁ!!!」
ダン!ダン!!ダン!!!凄まじい速さでオレは紫翠にコンボを入れていく。
だが、紫翠は辛うじてオレの拳を捌いていた。
「はぁあ!!」
オレは両手を擦り合わせ空気を弾丸のように放出させた。
その空気で紫翠の両手は宙に挙げられる。
「ッ──!」
「今だ──」
両手が空き隙だらけとなった腹にオレは強烈な一撃を叩き込む。
「が──」
ギュゥッゥン!!と腕を大きく降りかかり紫翠をビルに吹き飛ばす。
今度は受身など取れず紫翠はビルにめり込みそのままビルの中に吹き飛ばされた。
「はぁ・・・はぁ・・・はあ・・・」
チラッとオレはジャンヌの方をみる。
紫翠をやっつけた・・・。彼女の反応は──
「ッ・・・」
ニヤリと笑っていた。
あの笑み・・。なんだ・・・なぜ笑っていられる。
「流石ね境川くん。でも足りないわ。紫翠はそんな程度ではやられない」
ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!
ビルの中から大きな音が聞こえ窓ガラスや近くの破片が全て吹き飛んだ。
「──なるほどな・・・これが極致か。さっきまでの奴とは比べ物にならん」
服だけがボロボロになった紫翠がピンピンして出てきた。
「手から空気の衝撃波を生成する...そんな荒業を思いつくのは流石だ」
「...嘘だろ。無傷とか」
「今度はこっちの番だ!」
シュンッ──
紫翠が一瞬で消え俺の背後に現れる。
(速い・・・・だが、極致の状態なら)
シュ、と紫翠の拳を避けクルッと回転し蹴りを入れようとする・・・だが、
「"貴様の速さ"既に覚えた」
足が当たる瞬間紫翠はタンッと大きく後ろに後退する。
そしてオレの蹴りが空振りに終わった瞬間を狙い、ガッと腕に力を込めてオレの口のあたりを掴みそのままザザザっと地面を滑って見せ、ドンッとオレをビルの壁にめり込ませる。
「がっは・・・・」
「極致の状態は認めよう。だが、完全ではないようだな。オレが超えれる範囲だ」
真剣な眼差しを向けている紫翠。彼は極致に入らずに三十パーセントのオレを超えてきた。
さっきまでの紫翠とは少し違う・・・パワーアップしている。
「ッ....はぁ!!」
オレは全身に力を入れ気合砲を繰り出した。
見事に紫翠は吹き飛ばされる。
「はぁ・・・っはぁ!!」
バシュ──とオレの瞳から稲妻は消え極地の状態は解けた。
「もう終わりか」
「...くっ」
「ならこれで終わりだ・・・」




