拉致【その弐】
──意識が朦朧としている。
私は今朝学校に行こうと家を出た。そんなとき後ろから知らない人が現れて私は襲わてた。
もちろん抵抗はした。でも私の力は非力でとても男性を凌駕することはできなかった。その結果このように悲惨な自体を招いてしまった。
「───ぅ・・・」
「まだ意識があるみたいだな」
目の前にいる学生服を来ている男。見たことはないが私と同じくしての学園に通っている生徒であることは間違いない。
「はっ、誰も助けになんて来ないぜ。お前はここで一生俺たちの人形となるんだ」
男はそういい余裕そうに笑った。
確かに助けなんてこないだろう。私が家を出た時間は少しだけ早い時間帯。あの時間に人の姿は見えなかった。
つまり、私がここにいるということは誰も知らないのだ。だからこの男の言うことは間違っていない。
「・・・・・」
「そう絶望に満ちた顔をするなよ。面白くねえじゃないか」
男は座り込みそう言う。
「俺は境川生を個人的に恨んでいた。だからその憂さ晴らしといっちゃあれだがお前を襲った。男としてそれは少し違っていると思うが俺は満足だぜ。瀕死のお前を見つけた境川を見るのはな」
「最低の・・・性格....ね」
「何とでも言え。どう言おうが人間なんてそんなもんだ。──誰かを恨み、誰かを妬む。そうして世界を生きていくのが人間ってもんだ。誰からも愛される人なんて稀なんだよ」
男は語りだす。もう一人の男は辺りの監視に行っており今はこの制服の男と二人っきり。運がよければ逃げられるチャンスでもある。
だが、それにはこのズタボロとなった身体で逃げれる状況を作り出さなければならない。
「ッ・・・・」
力を必死にしれても身体はビクとも動かない。
「おいおいそれ以上は死ぬぜ。やめときな」
男はあくまで冷静だった。これは無情に近い空気だと命は悟った。
「・・・そういやお前まるで境川を知らないような顔をしていたな。それについて興味がある。なんだ?別れたか?」
「だから・・・そもそも付き合ってなんか....」
命がそう言いかけたとき、
──ザザッ
「っ・・・」
脳に頭痛が走った。
そこに映るのは見たことのない記憶のような映像。まるで本当に命と境川が付き合っていたかのような映像だった。
「お前──記憶障害を起こしているのか?」
「な──」
その男の言葉を聞き命は衝撃を受けたかのような表情をした。
「なるほどな。合点がいくってもんだ」
「何を言って」
「原因は知らないがストレス、または俺の知らない危険なことに巻き込まれたかだろうな。一部で噂になっているしな。境川は災いを持ってくる的なことを」
「だからなんで境川くんが・・・」
「あーめんどくせえ」
男は頭をボリボリと書きながらそう言う。
「恐らく信じないだろうがお前は境川と付き合っていたんだよ。お隣同士で幼馴染だったんだろ?」
その言葉を聞き命の脳裏に色々と言葉が浮かび上がる。
『境川くんの家はどこなの?』
『こっちの方だな』
そうだ。あの時刺した方向は反対。境川は嘘をついているということを理解した。
彼は遠慮・・・どこか私に気を使っていた。向こうは覚えていてこっちは忘れている。だから彼は私に対して距離ができてしまっている。辛かったんだ。
「・・・そんな」
私の瞳からは涙がこぼれ落ちてくる。記憶は戻らない。
しかし突きつけられたのはまごうことなき真実だろう。その真実は今の私には酷く耐え難いものだった。
「本当に忘れていたみたいだな。いやまだ思い出していないか・・・だけど忘れているのなら好都合だな」
そう言って男は命の顔をまじまじと見つめ。
「そこまで辛いのならもはや境川と会話するのすらやめることだ。それがお前の幸せであり、向こうからしても幸福だろうぜ」
完全なるトドメ。普通ならこんな言葉はまったくもって通用しないだろう。しかし、今のように精神的に参っている状態ではかなりのダメージとなり得る。
「・・・そうだ・・・ね」
命は男の言葉に釣られるがごとく納得してしまった。
──・・・一方境川
「ったく見つからないな」
今だに命の居場所を探していた。
「電話は繋がらない。まあそうだよな。・・・そうなると手がかりが少なすぎる」
さっきは一瞬声が聞こえた気がしてその方向に来てみたけど命の姿はない。
「近くにはいるはず・・・どこだ」
辺りを見渡す。そこは住宅に囲まれたところだ。だけど少し先にかなり昔に廃棄された建物が存在している。
「あそこ・・・か?」
「あ、アニキ!」
周りを見張りに行っていたもう一人の男が帰ってくる。
「どうした?」
「恐らくですがあれは境川ですよ!こっちに向かってきています」
「なんだと・・・感づいたか」
チラッと倒れている命に視線をやる。
「いや、ちょうどいいか」
ニヤリと男は不敵に笑うのだった。




