気になること
俺は記憶を失った命を救うべく色々と思考を巡らせて考えていた。
美月に話を聞いた限りだと逸材の力を消滅させるあるいは記憶を無理やり引き起こさせるの二択らしい。前者は現実的、後者は非現実的。そんな可能性だけが命を救う手立てとなっていた。
(・・・とは言っても方法がなさすぎるな)
美月と話を終えて俺は学園に戻ってきている。席に座って考えているが、一向に策など出てきやしない。
中々思いつきもしないので俺は命の方を見てみる。
いつもどおり変わらずクラスの一部に溶け込んている。俺以外と話しているときはどこも変わらない普通の命だ。だが、俺の記憶だけ消えているため俺に関することは全て無かったことになっている。
「よお境川ァ」
俺の目の前に御神槌が立っていた。
「どうかしたか?」
「なぁに少しばかり気になってな。・・・どうだ?彼奴を戻せる方法は思いついたか?」
「・・・できればあって欲しいものだよ」
「なしか」
御神槌はやれやれと肩を竦める。
「なあ御神槌。逸材の代償ってなんだろうな」
「代償?そりゃ・・・」
御神槌は何かを言いかけようとしたが、何かに気がついてそれを言うのをやめた。
「いや、分からないな。代償ってことは言葉だけならそのものの代価だ。使用するにあたっての条件ってものだろう」
「だよな」
「もしかして彼奴が記憶を失っているのもその代償って感じか?」
「その通りだ」
「ったく・・・面倒なことだな」
「なにか心当たりあるのか?」
俺がそう言うと御神槌の表情は少しだけ暗くなったように見えた。
「・・・・・いや、知らねえよ」
まるで過去になにかを見てきたような──そんな感じを思わせる口調だった。
だが、俺にそれを問い詰める権利はない。恐らくだが無の部屋にいたとき似たようなことを目の当たりにしているのだろう。
俺はあそこにいたときは感情を閉ざして誰にも興味を示していなかったからそんなことにも気づいていなかったのだ。
「まあ、とにかくだ。こちらとしてもなにかいい案があれば連絡はするぜ」
そう言って御神槌は教室を出ていった。
もうすぐで授業始まるってのにな。
だが、御神槌と話していて少しだけ俺は気になることを思い出した。
それは命の記憶──俺に関する記憶が消えているのなら「リア」の存在はどうなるのだろうか。命は日頃から俺の家に通いつめているものだ。今はその記憶がないとなるのならリアのことを知らないということになるのか。それとも別の形で記憶が改ざんされているのか。
それを確認できるのは放課後・・・バイトが終わったあとだ。
「気になること多すぎるだろ」
かつてここまで命について考えることがあっただろうか。俺は自分を忘れられた苦しみと戦いながらも救う方法を考えるのだった。




