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逸材の生命  作者: 郁祈
第六章 偽りの因果編
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逸材の代償

 苦しい。

 苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい。

 

 私の身体に突然として現れた痛み。理由は分からない。でも生を見ていると私の心はどこか苦しい痛みを追うようになっていた。

 生が強くなることに反対なのか。違う。私自身、生が強くなることに反対などすることはない。いつだって生を想い生きている私にそんな情は存在しない。

 ならなんだ?この痛みは??


 (どうしたんだろう・・・・私は・・・)


 結局痛みの原因もわからず私は学園に来ていた。

 席につき一人で窓から外を眺めて考えている。


 (生のことは好き・・・大好き。でも生の成長は私を苦しくする・・・・)


 顔には出さないようにしているが今も心は痛い。胸がキュッと締め付けられるような痛みだ。

 学園に来る間もこの痛みは収まらなかった。だから私は生を適当な理由をつけて先に学園に来た。生は心配そうな顔をしていたが、今、生に余計な心配をかけさせるわけにはいかない。ましてや極地の状態の生は鋭い。あまり一緒にいると悟られてしまうし極地の状態に変化が起きてしまうかもしれない。

 だから私はこうして今一人でいるのだ。


 「あら東雲さん・・・早いわね。・・・・東雲さん?」


 「えっ」


 ふと私に話しかけてきた人物。それはくすのきさんだ。

 緋鍵に行く前は別々のクラスだったけど学園の修理が終わり戻ってきた時に新しクラス分けで同じになった。だからこうして接する機会は増えている。

 

 「珍しいわね。こんな時間に来るなんて」


 いつもより早い時間。それについて楠さんは少しだけ驚いていた。


 「ちょっと早起きしちゃって」


 「それにしては、境川くんの姿が見えないようだけど?」


 「うっ・・・そ、そっちこそ御神槌さんはどうしたの?」


 「御神槌?ああ、彼ならまだ来てないわね。もうすぐ来ると思うけど」


 「そうなんだー」


 「それで?何かあったの?」


 話を誤魔化せたかと思ったら全く誤魔化せていなかった。


 「な、なにもない!本当に!!」


 「・・・・」


 私は慌てて否定したけどこれじゃますます怪しまれるだけだ。

 どうにかして誤魔化そうとしたとき。


 ──スギッ


 「っ・・・・」


 激しい痛みだ。朝よりもずっと痛い・・・そんな痛みが私を再び襲った。


 「東雲さん!?」


 「だ、大丈夫・・・本当に・・・大丈夫だから」


 「とりあえず境川くんに電話・・・」


 生に電話?心配はかけたく・・・・


 ──ズキ.......ピキ.....


 「が・・・」


 バタン


 「東雲さん・・・?東雲さん!!!」


 消えゆく意識の中、私は楠さんの叫ぶ声が聞こえた。

 でも反応することもできず私は倒れた。





 『──未来、そんなものを見通す力になんの代価もないと思ったか?』


 誰?


 『この世に無償の物など存在しない。"逸材"とは"奇跡"──奇跡とはまぐれだからこそ。乱用すること、それすなわち己の破滅なり』


 この痛みは能力の代償ってことなの・・・?じゃあ私は死ぬ・・・・?

 未来を見通す力の代償、それが命だというのなら私は死して当然なのかもしれない。


 『だが、お前を愛しお前を必要とする者はまだ存在している』


 必要とされ・・・。


 『命は奪わぬ。だが、汝が目覚めし時、何かを失っているのは確かだ。それだけは重々把握しておくんだな』


 代償・・・・。




 キーンコーンカーンコーン

 学園のチャイムの音だった。


 「ッ!!」


 ガバッと私は起き上がる。


 「ここは・・・・保健室・・・?」


 私は倒れた。それはすぐに分かった。保険室にいる。時計を見るとまだ1時限目が終わったばかりの時刻。

 倒れてからそんなに経っていない。でも1時限目が終わったということは生にこのことはバレてしまったのか。


 「生・・・?」


 私は何を言っているのだ。

 何かがおかしい。なんで・・・なんで・・・・


 ガラガラガラ!!

 激しい勢いでドアが開く。


 「命・・・起きてたのか」


 「全く境川くんは・・・東雲さんが寝てたらどうする気だったのよ」


 「ハッ──どうやら無事なようだな」


 そう言ってドアを開けて入ってくる。


 「心配したぞ命」


 「感謝なら御神槌にすることね。倒れた貴方を運んだのは彼よ」


 「あ、ありがと・・・」


 「境川は肝心な時に鈍いわね。もう少しだけ彼女を見てあげれるようになりなさいよ」


 「・・・・そうだな」


 「ねえ、楠さん」


 「どうしたの?」


 「生って・・・誰・・・?」


 私が発した言葉に東雲さんは瞳を大きく開けて驚いた。

 御神槌さんも同時に目を強ばらせている。

 そして知らない男の人は冷静に私を見つめていた。


 「東雲さん・・・貴方なにをいって・・・」


 「冗談だろ?お前・・・境川のことを忘れるなんて・・・」


 「・・・・・」


 「ゴメンさない。本当に分からないの」

 

 「そんな・・・奪われたというの・・・」


 思い出せない。二人のいう。「生」という人物が。

 私は何かを失ってしまったのかもしれない。

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