働くこと、これだけが生き甲斐である。【その参】
一日目が終了した。
私は生と一緒に働いて一日を終えた。
実感はない。でも楽しかったのは事実だ。店長にも助かったと褒められたし、嬉しかった。
でも気がかりなことが二つある。
一つは学園長が言っていた修行ということ。あの仕事の中で身に着けるスキルがあるのだろうか。
私は分からない。何をたくらんでいるのか。その意図が。
もう一つは生について。生はずっと考えている気がする。難しい顔をして何を考えていたのかな。
私は窓から夜の空を眺めながらそう思った。
『心配?』
私の脳裏に声が響き渡る。これは影の声だ。
「そりゃあ・・・ね」
好きだからねとは言えない。いくら同じ身体とは言えども言えないよね。
『なるほど。好きだからか』
「ちょっ」
『私はお前だぞ。考えていることくらい分かる』
実態は見えはしないがどこかニヤニヤしているのだけは何となく伝わった気がする。
「悪趣味・・・」
私はボソッとそう呟いた。
『結構。なんと言われようと私は私。何とも思わないさ』
「くっ・・・で?私の考えが分かるのなら貴方はどう思う?」
『何がだ?』
「今回の件。修行という名の労働について」
『ああ、それか。私はこれでもあの学園長の意図は理解しているつもりだ。いや、もといい見えているようなものだからな。彼の考えが』
「どういう意味・・・?」
『お前は鈍いな。だが、気づけないのならそこまでだ。だが、明日の仕事でおそらくは理解することだろう』
私の考えは影に筒抜けなのに影の考えは私には流れてこない、か。
どうにも都合のいい能力なことね・・・。だけど、これは私自身の問題。影に頼る訳にはいかないか。
『生もきっと考え答えを見つけているだろう。生は優秀な人間だからね』
「・・・・否定はしないわ」
『お前も少しは生を見習うことだね』
「大きなおせわよ」
そして夜も明けて次の日になった。
バイトは放課後なため朝は比較的いつもと変わらない日常を俺は過ごしていた。
命が朝食を作りに来て、俺はそれを待つだけ。
ただ、この状況でいつもと違うことが一つだけあった。
「・・・・・」
俺の左目からはバチバチと雷のようなオーラが光出ている。
そう、俺は昨日のよるからずっと極致の状態を維持しているのだった。二十パーセントという少ない力だが、まずはここから慣らしていこうと俺は考え使用している。
「ねえリア」
「どうしたんです東雲?」
命はリアを手招きしてボソボソっとリアに向かって喋る。
「あーあれは兄様なりの特訓だそうですよ。兄様は頭脳明晰、圧倒的力を誇りますが、なにせあの状態だけ不得意みたいで・・・その克服だそうです」
「あれが生の答え・・・」
「そういえば東雲も同じ修行出されていたんでしたっけ?でも東雲の場合 未来視しかないわけですし・・・」
そう命の逸材能力は一つだけ。ゆえに何を強化するかは一目瞭然だった。
「で、でも未来を見るだけの力にこれ以上の強化なんて」
「極めれば何か変わるかもですよ」
「や、でも私の力は使うと身体的に変化出ちゃうからなぁ」
抑えれて目の色が変わるだけ。抑えければ髪色まで変化してしまう。
「兄様だって目から雷でてますよ」
「確かに・・・」
命は生の方をみる。
「どうかしたか命?」
ふと生と目が合ってしまった。
「えっ、いや・・・その....目の雷が・・・」
「ん?ああ・・・そうだな。気になるか」
そう言って生は目を閉じてふぅと大きく息を吐く。
「・・・・・・」
スゥゥと深呼吸を繰り返し目を開いた。
「これでいいか?」
生の瞳からはバチバチという音は消え雷のようなオーラも無くなっていた。
「少しだけ慣れたのかな。極致の状態。不思議とオーラを消せる範囲まで持ってこれたようだ。まだ二十パーセントだけだけどな」
「そ、それでも凄い・・・生はやっぱり凄い・・・」
命は感心していた。
そう。生はいつもと変わらない姿に戻った。だけど喋る口調はどこか落ち着いていて目も少しだけキリッとするようになったりと変化が起きている。
極致の状態をコントロールし始めている。溢れ出る力を抑えているのだ。
(私も見習わないとなぁ)
できるのだろうか。と命は心の中で思ってしまう。
生のように力の変化を抑えること。だけどそれが成すことできれば相手に力を使っていることを悟られずに済む。
そんなことを考えていると──スギっと私の心が苦しめられるような痛みが走った。
「っ・・・」
「命?」
「えっ、あっ。気にしないで。少しだけ考え事してただけだから」
なんだろうか。このモヤっとした気持ち。
生が強くなることは私にとっても本望。なのになんで・・・・
──どうしてこんなにも苦しいの。




