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逸材の生命  作者: 郁祈
第六章 偽りの因果編
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働くこと、これだけが生き甲斐である。【その壱】

 「いらっしゃいませー」


 ニッコリと命は笑顔でそう言った。


 「・・・・」


 「ほら、しょう!しっかりして」


 ああ、どうしてこうなったのやら。

 命の笑顔が常に見れるのなら満足なのだが、俺としてはゆっくりしてたい・・・。

 

 ちなみにここはとある喫茶店。そこに俺と命は「バイト」という形で現在働いているのだった。




 ──およそ数時間前。


 「あっ境川くんに東雲ちゃん」


 学園長が俺と命がいる教室を訪ねきた。


 「なんですか。休み時間に」


 「ほら二人共こんど大会に参加するじゃん。でも君たち二人はまだ力を使いこなせてないように見えるから特訓しようかなって」


 「特訓・・・?」


 俺は少しだけ嫌そうな顔をする。


 「確かに二人共強いけど、それだけじゃこれから出会う人たちには勝てないと思うんだ。だから簡単な修行ってことで」


 「私は構いませんけど・・・何をするんですか?」


 命がそう尋ねると学園長は


 「これだよ!!」


 そう言って一枚のチラシを見せてきた。

 そこには求人求むとかいてあるチラシだった。


 「喫茶店・・・?これが修行なんですか??」


 俺と命は顔を合わせて首をかしげる。


 「学園長....まさかとは思いますけど俺たちをいいように使おうだなんて思ってないよな」


 俺は睨むと学園長は目を背けて


 「そ、ソンナコトナイヨー」


 「・・・・・やれやれ」


 「や、で、でも!!きっと役に立つから!!ね!?お願い!」


 珍しくも学園長は食い下がらずにお願いをしてくる。


 「生はどうする?私はやってもいいけど」


 「・・・期間によるな」


 「今日と明日だけだよ」


 「・・・仕方ないか」


 俺はそう言うと学園長はありがとうと言って教室を出て行った。


 「喫茶店のバイトが修行になるとは思わないんだけどな・・・」


 「あはは・・・が、頑張ろうね 生!!」






 ってな訳なんだよな。頼まれたからこうして喫茶店に来てみたはいいものの・・・。


 「なんというか。色々暇な気がする」


 呼ばれれば注文をとり、それを伝え、出来上がった品を客のもとに持っていく。ただそれの繰り返し。最初はよくわからなかったけど、周りを見て覚えた。

 命はバリバリと動いており、それにここの男性客の視線を集める者になっていた。

 まあ実態可愛いしな。


 「どうしたの境川くん?」


 後ろから声がかかる。


 「あっ・・・店長」


 この喫茶店の店長だった。店長はキッチン担当なためあまり表には出てこない。


 「いえ、なんでこの店は求人を出していたのだろうと考えていたんです。見た感じあまり忙しそうにも見えませんけど」


 「あーその件。この店が忙しくなるのはこれからなんだよ」


 「これから・・・?」


 時刻は昼過ぎ。普通ならあまり人はこない時間帯だと思うんだけどな。

 

 「まっ、頑張りなね」


 店長はポンと俺の肩を叩きキッチンに戻っていってしまった。


 (混むのはこれから・・・か)


 そして少し時間が立った瞬間だった。

 カランカランカランと何回も入口の音が鳴る。


 「さあ、境川くん、東雲さん。準備はいいかな」


 「えっ・・・」


 命は入口付近をみてギョッとする。

 そこにはこれまでにないくらいの人がわんさか溢れ出るかのように立っているのだった。


 「店長、これは?」


 俺は冷静に聞く。


 「この店はね。社会人の常連さんが多いから退社時間になると結構混むの」


 「あー上オフィスですもんね」


 命がそう言う。


 「てなわけ二人共!接客ヨロシクね」


 


 「いらっしゃいませー。何名ですか?」


 命はすっかりと働く様が適合している。見た目が可愛いということもあり、態々命を注文に呼ぶくらいの人気になっていた。

 俺はというと


 「すみませーん」


 「・・・・」


 あまりいい態度とも言えないのに一部の女性に好かれていた。

 返事もしないこんな暗い性格を明らかにだしている俺でも接客が一応できているのだ。

 むしろこの態度で接する方が女性の対応が楽だった。


 

 「生って女の人にモテルワネ....」


 「どういう意味だ命」


 「そのままの意味だよーー!!」


 ムスーっと顔を膨らませて命はそう言う。


 「お前だって男性客に人気じゃないか」


 俺がそう言うと命は


 「い、いやでも私は生以外の男には興味なななないしィ」


 テレた感じそう言った。


 「まあ何よりだ。命、これが修行になっているか?」


 「ううん。ただ単に接客しているだけだよね。逸材能力の出番もないよ」


 「だよな」


 俺と命は二人で軽く笑った。

 なんでここで働いているんだろうと想い笑った。


 そしてなんもなく忙しい時間も終え一日目のバイトが終了するのだった。


 

 帰宅途中、


 「ねえ生・・・今回のバイトって私たちの逸材能力についての修行だよね」


 「ああ。そうだが?」


 「生の逸材は"生命の逸材"でしょ?このバイトと結びつくところあるの?」


 生命の逸材──それが俺の逸材の名称だ。決めたのは俺ではなく師匠である美月が勝手に命名したものだ。

 由来は俺と命のあだ名からとったものだそうだ。

 まあ実際能力は不明なんだけど、公にできているのはアメリカの逸材者であるアリスと同じくしての極限の逸材ってところだ。


 「実際結びつくところはないかな。だが、何かしらの意味はあるかもしれない」


 「なんだろうなぁー私は思いつかないや。未来が見えたからって言ってもあのバイトには活かせそうにないし。ギャンブルとかならできそうだよね!」


 ムフーとやる気満々だったが、


 「似合わないからやめてくれ」


 命のギャンブル姿なんて想像するだけで怖いわ。


 「ちょっとそれどういう意味よー!」


 「まんまの意味ですよ」


 やれやれと思い俺と命は足を進める。

 大会に参加するとなった。だけどそれは一体何が目的なのか。ただ単に学園のPRの為とは思えない。

 メンバーがメンバーだ。あれほどの逸材者を集めたのだ。きっと他に何かしらの企みがあってもおかしくはない。

 俺を是が非でもメンバーに入れたがったのだ。


 (それが分かるのは大会が始まってからか・・・)


 とりあえずは明日のバイトを乗り越えるかなと俺は思った。

 




 そしてやってくるバイト二日目。

 俺と命はこの二日目で相当な後悔を生んだだろう。

【キャラ説明】

境川生さかいがわ しょう

性別:男

能力:「???」→「生命の逸材」

説明:様々な力を持つ逸材能力。その力は未知数

容姿:黒髪

学校:恋桜学園 1年

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