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逸材の生命  作者: 郁祈
第六章 偽りの因果編
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生命の逸材者【その弐】

 体育館に集まった逸材者。

 ──崩壊の逸材者「御神槌忍みかづちしのぶ

 

 ──狙撃の逸材者「伊吹龍いぶきりゅう


 ──魔王の逸材者「織田樹おだいつき


 ──未来の逸材者「東雲命しののめみこと


 ──時間の逸材者「リア・ルノアベル」


 ──師匠である「神無木美月かんなぎみづき


 そして俺、境川生。


 これほどの人材が揃うことはまず滅多にない。いや、むしろこれが最初で最後なのかもしれない。俺はその機会にこの場にいる全員と闘うということになったのだ。


 「さあ、やろうぜ」


 御神槌は誰よりもやる気に満ち溢れている。


 「やれやれ・・・なぜこんなことに」


 「不服か伊吹」


 「うっせ、言っておくがテメーには負けないからな!」


 「構わん。私の目的は境川生ただひとり」


 伊吹と樹は仲良く会話をしている。


 「まさか兄様とこうも早く闘うとは思ってなかったです。刀の使いかた以来ですね」


 「生たちと闘うことは絶対にないと思っていた・・・でも、私は学園の為に闘う。だから生も一緒に来て欲しいから闘う!!」


 嬉しそうなリアに覚悟を決めた命。家族である二人も今は敵なんだよな。


 「弟子の面倒をみるのは師の努め。あの時は不意で負けたけど今度はどうかしらね」


 美月もやる気満々のようだった。


 「──これよりバトルロイヤルを始めるよ!ルールは簡単。殺すのは禁止、相手をダウンさせるか"参った"と言わせる。この二択。では・・・・始め!!」


 学園長がそう叫ぶと全員が散り散りに動き始めた。

 俺はまずは様子見で壁の方にダンっと後退する。


 「境川!!覚悟ーーーー!!」


 刀を構えて樹が突進してくる。

 ブン──抜刀をし一撃を喰らわせに来るが・・・


 キンッ、


 樹の刀は俺に当たる前に弾かれた。


 「貴様・・・ッ」


 隣から樹の攻撃を妨害した人物は美月だった。


 「へえ、貴方意外と強そうね。これは楽しめそうかしら」


 「女か・・・私は女でも容赦はしないぞ」


 「結構。強気な男は好きな方よ」


 「たわけ。断罪してくれる」


 「おー怖いわね。それじゃ・・・!」


 グッと手に力を入れて美月は紫色のオーラをまとい始めた。


 「紫電──」


 「喰らえええ!!」


 ドォォォォォン!!!!!!二つの影は衝突をし俺は置いてけぼりになっていた。


 (しかし・・・樹と美月が闘うとはな。ある意味どっちが勝つか分からないもんだ)


 樹の強さは知っている。俺が苦戦をしいた相手だ。だが、美月だって負けていない。紫電をいきなり使ったということは樹をそれなりに警戒しているということになる。だから美月も樹の強さは理解しているというわけだ。


 「さて、他はどうなってるかね」


 辺りを見渡す。そして俺はリアと伊吹の闘いの方に目がいった。



 「やあ!!」


 「フンッ」


 ブンブンと刀を振り回すリア。しかし伊吹はそれを軽々と回避して逃げ回っている。


 「逃げないで闘えです!!」


 「逃げるのも策の一つだ。余計な弾数を使うわけには行くまい」


 そう言って伊吹は攻撃をしない。伊吹の得意とする攻撃は直で狙うのではなく跳弾で敵を穿つ超高度テクニックだ。

 しかも予測ができないので回避も難しい。忘れた頃にやってくるのが伊吹の攻撃だ。長期戦に向いているかもしれないな。


 「ちょこまかと・・・面倒ですね・・・!」


 「フン、追いつくことはできんな」


 伊吹は余裕そうに後ろを確認しつつ華麗な回避を見せつけリアを翻弄していく。


 「──なら俺も混ぜてくれよ」


 ドンッ──突然リアと伊吹の間に割って入ってきたのは御神槌だった。

 形的に丁度リアの刀を受け止める形になり、御神槌は現れた。


 「テメエは・・・!」


 「・・・・ッ」


 「お前たちと闘うのは久しぶりだな。緋鍵高校以来か?」


 「あの時の貴様はどこか狂気を感じた。だが、今は違うようだな」


 「御神槌・・・忍・・・」


 リアは少しだけ目を震えさせて御神槌の名前を呼ぶ。

 

 「おっと、怖がる必要はないぜ ルノアベル。今の俺はお前をとっ捕まえようなんて思ってないからな。今はこのおもしれえ状況を楽しむだけだ」


 「フン、相変わらずの男だ」


 伊吹は作戦変更とばかりにチャキッっと銃を構える。


 「まずはお前からだな御神槌!!」


 「覚悟するです!」


 「はっ、ほざけーー!!」


 三人は一気に衝突をし、ドォォッォンと大きな音が鳴り響いた。




 「ったく。あいつらは恐ろしいな」


 樹は美月と御神槌はリアと伊吹を相手している。

 結果的に俺は現在誰とも交戦していない。サバイバルは基本的隠密に行動することだって手段の一つなのだ。迂闊に動き体力を減らしてしまっては愚か者になってしまう。

 だがしかしこの体育館には生憎隠れるところがない。ゆえに誰かが闘っていない限り狙われるのは必然なのだ。


 タッ──


 だからだろうか。俺の目の前には考えもしない人物が立っていた。


 「・・・生.....」


 両手を胸の辺りに当ててこちらを見ているのはもちろん命だった。


 「意外だったな。お前がこの場に立つなんて・・・学園のためとは言えども驚いたよ」


 「私は・・・別に....」


 「なあ命。俺は樹が言うように逃げているのかもしれない。なにせ今回の件は人と人の殺し合いではない。だから俺が加入したって構わないはず・・・だけど俺は目立つのを恐れこの件を受けることはできなかった。だけどどうしてだろうな。俺はなんでこんな賭けをしたんだろうか」


 迷いはない。参加しないとこの場を飛び出せば済んだこと。

 それでも俺はそれをせずに態々会長や学園長にチャンスを与える機会を作った。それは自分自身が負けないと思っているからか?違う、このほどの逸材が揃っている以上俺でも太刀打ちできるかなんて分からない。

 ああ、そうだ。きっと俺はこれを望んでいたのかもな。


 「・・・この場は戦場だ。これ以上話すことはないか命」


 そう言って俺は姿勢を低くして戦闘態勢に入る。


 「しょ、生・・・私は・・・!」


 「お前の性格は知っているさ。俺と闘いたくはないだろ??だが俺はお前と闘いたい。そして・・・勝つ」


 未来を見通す力。命とはあまり闘うことはなかったからこの場で実力をもう一度みる。

 そして・・・俺自身の力もそろそろ自覚しないといけない頃合だしな。


 「・・・・わかったわ」


 命は少しだけ考えて目をスッと閉じる。


 「──生が闘うというのなら私も覚悟を決める。私は生と一緒に闘いたい。だから!ここで勝って生と一緒に参加する」


 ボッと髪と目の色が変化する。


 「言っておくけど俺は手加減はしないぞ。この場で負けることは俺自身よろしくないからな」


 「あら?そんな余裕があるのかしらね生♪」


 影となった命は少しだけ性格が変化して好戦的な反応を見せる。

 







 ガッキーーーーーン


 樹と美月は激しい攻防戦を繰り広げている。


 ドン!ドゴドゴドゴ・・・ドォォォォン

 どちらも一歩も譲らない。


 「ちぃ、貴様やるな・・・」


 「貴方もいい筋をしているわ・・・あら?」


 美月はふと中央の方に目をやる。


 「いきなり大本命がぶつかるのね」


 「・・・?」


 樹もその方向をみる。


 「境川・・・あの女とやるのか」


 「あら?知っているの」


 「やつは未来視・・・生憎だが生半可な逸材者では太刀打ちできないだろう。攻撃を読まれて即ダウンだ」


 「未来視・・・それはまた凄い逸材者ね」


 「どうやらあの二人の闘いは他の連中も驚きのようだな」


 そう言って樹はもうひとつの交戦している方を指差す。


 




 御神槌立ちの方


 「兄様・・・それと東雲・・・・」


 「おいおいおいありゃなんの冗談だよ」


 「おそらくは冗談ではない。だが、境川に勝てるのか?」


 「東雲は強いです。力が全てじゃない。それを表しているかのような・・・そんな人物です」


 「俺ァ相性は悪いな。アイツとは」


 御神槌とリアは命のことを知っているためそんな反応を示すが、伊吹は対して分かっていないので命と境川の闘いに目を奪われていた。


 「こりゃちょっと休戦かな」


 そういって御神槌はスクッと体制を戻して普通に立って境川立ちの方を見た。

 リアも刀をしまい、伊吹も銃をしまってそれぞれ同じ方向を見つめた。







 「──いくぜ」


 「ええ、いつでも」


 ダッ、先に仕掛けたのは境川の方。

 超スピードからの一撃をお見舞いしようとしたが、


 「未来は見えているわ」


 そう言って命は境川の拳が届く手前でスッと避け攻撃をかわした。


 「ッ、オラっ」


 だが境川もそれでを終わらず、よけられた直後に片足をクルッと回転させて命のお腹をめがけて蹴り放つ。


 「だから、無駄なことよ」


 蹴りをジャンプでかわしそのまま命は境川に飛び乗った。

 上から乗られ境川はそのままダンと地面に叩きつけられる。


 「しま──」


 「フフ・・・いくら生でも動けないわよね。私は非力なの。だからこうすればいいのよ」


 そう言って境川の腕をガッチリと抑える。


 (まずい・・・このままだと・・・)


 どうにか脱出しようとするが動けずに俺は何もできない。


 (・・・・負けるわけにはいかない.....くそ・・・・が)


 ──ドッ....バチバチバチ・・・・


 「きゃ・・!」


 突然の爆発に命は吹き飛ばされる。

 

 「ふぅ....」


 俺はスッと立ち上がって一息入れる。


 「一体なにが・・・」


 「ただの衝撃波だよ」


 そう言って命を見る。


 「──ただし、"極限"の・・・な」


 命掴まれてピンチな状況下。それは俺にとって覚醒の一手となった。

 フルパワーの極限の極致。それが俺の今の状態だ。


 「さあ、行くぞ・・・命」 

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