チョコレートと子ネコと憂鬱
1
放課後、おれが学校からバスじゃなく徒歩で帰ったのには特別な理由などなかった。つまりはただの気まぐれだったわけで、まさかその道の途中でこんなものに出会うだなんて予想もしていなかった。
捨てネコを見つけてしまったのだ。
学校から駅へ向かうには、公園のそばを通る必要がある。おれは駅を目標に歩いていたのだから、当然その道を通っていた。二月だというのに春のようなあたたかい空気がおれを包んでくれていたので、ひとりで歩いていてもさびしくはなかった。散歩しているような気分でたのしかった。そう、たのしかったのだ。だが、南風が吹いて葉のない桜の枝を揺らしたとき、おれはいやな予感がした。ただしくいうなら、予感ではなくて予想なのだが。
汚れた子ネコが、道路を横切ろうとして身がまえていた。向こうには車が見える。その車は子ネコに気づいていないようで、子ネコをよけるようすも減速するようすもなかった。どう考えてもデンジャーだ。このままでは子ネコは車にひかれてメンチカツの材料になってしまう。
メンチカツは食べたいが、子ネコが死んでしまう姿は見たくはない。だから助けようと思う。
いきなり走りだして子ネコをつかむことをまっさきに考えたが、子ネコが逃げだしてしまえば子ネコはそのまま車にひかれてしまうだろう。だから歩いてそろりそろりと子ネコに近づいていった。
子ネコがすこしでも動いたら、たとえコケてでも捕まえなければならない。緊張して、鼓動が高まる。見開いた瞳は乾き、呼吸は乱れ、あつくもないのに汗が湧く。足元に桶でも置けば流れる滝のごとき汗であたたかい風呂ができたかも知れない。それだけの量の汗だった。
そして、あと三歩で手が届く範囲まで近づいたときだった。子ネコの足が動くのを、かすかだがたしかに感じた。まさに歩き出そうとしている。
そう思ったあと、おれは気づけば両足でしっかりと踏み切っていた。両手はすこしでもとおくまで届くようにピンと伸ばして、ついでに足もつよく踏み切った余韻でピンと伸びて、地面と平行な直線になったおれは、けっしてウ○トラマンごっこをしていたわけではない。
そんな苦労のかいあってか、子ネコは無事におれの両手の平に包まれてくれた。これでもう車にひかれることはない。そのかわり、
「イテェっ!!」
おれは着地までは考えていなかった。おれは人間には不必要なテクニック、胴体着陸を余儀なくされ、とどのつまりは腹をおもいっきり打ってしまったというわけだ。当然、いたみを感じないわけがない。その場でしばらく悶絶する。
そして、おれの手からスルリと抜けた子ネコはというと、キョトンとした顔でおれを見つめてきた。何が起きたのか、おそらくは理解できていないのだろう。
「にゃあ」
子ネコは寝転がっているおれに、体を擦り寄らせた。普通ネコは足に擦り寄るものだが、今回はおれが寝転がっているため顔に、だ。顔が汚れる。
「なんだ、人なつっこいな。……飼いネコか?」
立ち上がりながら子ネコの首を見てみたが、首輪がついてなかった。となると、エサをもらっている野良か、捨てネコのどちらかだろう。できれば前者であってほしいものだが、どうなのかはわからない。ネコのみぞ知るところってやつだ。
「またあぶない渡り方しないように、おれが向こうまで運んでやるよ」
子ネコの両脇腹をつかんで、左右を見て道路を渡る。公園に近づくかたちだ。
歩道に乗って子ネコを放してやると、子ネコは一目散に公園の中に入っていった。そのあとを追うと、子ネコは公園の中央に置かれてあったダンボールの中に駆け込んだ。子ネコの家なのかも知れない。すると、この子ネコは捨てネコであるということになる。
「そうかおまえ、捨てられたのか。弁当の残りでもやりたいところだけど、あいにくと今日は全部食っちまったんだ。わるいな」
子ネコ相手に本気で謝っていると、
「にゃあ」
と、ひとことだけ鳴いたのだった。『気にしてないよ』とでも言われた気分になって、おれは子ネコに別れを告げて公園をあとにした。太陽はまだしばらく沈みそうになかった。
「そうだ、名前でもつけてやらないとな」
しばらく歩いてからひとりごちたのだが、すれ違った女子高生に変な顔をされてしまった。子ネコに擦り寄られた顔が汚れているのかと思ったのだが、わざわざ自分を写メってみても汚れていなかった。どうやら独り言が聞こえてしまったらしい。そしてあの子ネコは汚れていたのではなく、自毛が焦げ茶色なのだと気づいた。
あまいものはきらいだ。だから、チョコレートはあまり好きじゃない。
だが、栄養失調で死んでしまうかと思うほど腹が減っているのなら話は別だ。
目の前の地面に、ポツンと板チョコレートが一枚置かれていた。この際、誰のものかとかその辺は考えないことにした。栄養がほしい。その欲望を抑え切れない。
ウルトラマ○のような跳躍で板チョコレートに突っ込んだ。着地のことは考えなかった。この腹が膨れるなら、なんでもよかった。きらいなあまいものでも、誰のものでも、うまく着地できなくても、どうでもいい。
しかし、世の中はそんなにやさしくはないようで、なんと板チョコレートはユ○ゲラーも裸足で逃げ出すような空中浮遊を始めておれから遠ざかっていったのだ。
「おのれ、チョコのくせに生意気な!」
おれはおれのもとを離れていった板チョコレートに向けて、全速力で駆け出した。ちなみに今のおれの座右の銘は『来るもの拒まず、去るもの追おう』だったりする。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
いつだったか、人間は叫ぶと全力を発揮できると聞いたことがある。そのことを意識して叫んだわけではないのだが、事実おれはかつてないくらいの速さで走れたような気がする。しかしそれでもチョコレートには追いつけない。チョコレートは曲がり角の向こうに消えてしまった。見失うわけにはいかない。
「負けるものかああああ!!」
コーナーでもスピードを落とさずに走ったおれは、いつのまにか板チョコレートが昨日の子ネコに変わっていたことに気がついた。
「なるほど、確かに色は一緒だ」
子ネコはとても愛らしい表情でおれを見つめて、
「にゃあ」
ひとことだけ鳴いて、駆け出した。もちろんおれは追う。
「遊ぼうってことか? しょうがないな……」
どれだけ走ったのかはわからないが、その瞬間は突如訪れた。
おれは足元の注意を怠っていたようだ。おれの足は地面を捕えられず、道のわきにある崖に向かって落下運動を始めていた。間一髪でふちに捕まるが、ながくは持たないだろう。気づけば下にはマグマが煮えたぎっている。子ネコの姿は見えない。
走馬灯が見えた。おれがチョコレートと子ネコを追いかける姿しか再生されない走馬灯だった。それはないだろう、と憂鬱になる。
そして走馬灯が終了を告げると同時に、おれの手は崖のふちから滑っておれの命も終了を告げようとしていた――。
「イテェっ!!」
体の節々が痛むとおれは自分が夢の中にいたことに気がついた。おれは床に寝転んでいる。状況を理解しようと周りを見回すと、すこしずつ記憶がよみがえってきた。今は授業中だ。
授業中にうたた寝して、寝相がわるくて席から落ちたのだと推測できた。ちなみにちょうどプリントの問題を解いていたクラスの面々は沈黙していた。おれの叫び声はよく響いたことだろう。そう思うと自然と顔が朱く染まっていってしまう。そして、
「…………」
プリントを解くクラスの面々を監視していた『先生』という役職に属している中年の男がおれを睨んでいた。ちなみにこの教師の名前をおれは覚えていない。
「八木橋……」
そうだ、あいつは数学担当の、前橋? いや、前池? 前島? どれも違う気がしてきた。とにかく『前なんとか』だ。なぜ、人の名前というのは覚えにくいのだろうか。重要性がすくないからかも知れない。人間は意味のあることのほうが覚えやすいからだ。おれはその考えを
「八木橋、健郎! すぐに返事をしなさい!!」
「はい、すみませんでした!」
ありがたい特別課題を前なんとかからいただいたおれは昼休み、一貞に愚痴っていた。
「つまんない授業をするからねむくなるんだ。もっとおもしろおかしい授業にしてくれりゃねむくならないのにな」
実にくだらない内容の会話だが、一貞はさすがおれの親友たる人物。頷きながらまじめに聞いてくれる。
「僕もそう思うな。……だけどさすがに授業中に寝言はないんじゃない?」
「なっ……言ってたのか!?」
「うん。なんかごにょごにょ言ってた」
できれば信じたくないできごとだ。きっとチョコがどうこうとか言っていたにちがいない。恥ずかしさのあまり、この学校の屋上から落ちてしまいたくなった。とりあえず逝けるぐらいの高さはあるはずだ。まあ、本当に逝くつもりはないが。
そんなことよりも、おれは一貞に言っておかなければならないことがあった。あの夢を見て、おれは決心したのだ。
「一貞」
「何?」
おおきく息を吸い込んで、言う。
「子ネコを飼えないか?」
そう、おれはあの子ネコをもらってくれる人を探してやることにしたのだ。おれはマンションに住んでいるから動物を飼えないので、ほかに探すしかないし。
「ごめん、僕、ネコアレルギーだから。本当は飼いたいんだけどね。ネコ」
ガックリと肩を落としていると、一貞が口を開いた。
「とりあえず僕の周りの人にも聞いてみるよ。どんなネコ? 名前は?」
一貞はおれの力になってくれるというわけだ。
やっぱり親友というものはすばらしい。こいつにならおれの『健郎コレクション』の一部を譲り渡してもいい。ちなみに『健郎コレクション』とは、男のロマンがつまった夢の宝石箱であり、具体的にいうとイヌやネコやネズミなどのファンシーなぬいぐるみのコレクションだ。つい最近、かわいいフクロウのぬいぐるみがおさめられた。
「ありがとう、一貞。お礼は何がいい? イヌか? ネコか? カエルは勘弁してくれ。あれはお気に入りなんだ」
「なんの話? その前に質問に答えてよ」
「質問?」
「子ネコの名前は? どんなネコ?」
名前か。そういえば決めていなかった。
どんな名前がいいかと迷っていると、さっきの夢のことを思い出した。あの子ネコの色からひとつの単語が浮かぶ。
「チョコ。茶色い体をしてるから、チョコだ」
2
チョコを見つけてから、はやくも四日が過ぎていた。
おれと一貞で毎日知り合いを当たってみたが、結局チョコをもらってくれる人は見つからなかった。現在はとりあえずおれが公園でエサを与えている。それでわかったのだが、チョコはかなりのグルメだ。人の食べ残しはもちろん、生の魚すら食わない。ネコ缶を買ってやらなければ食べてくれないのだ。遊び半分でチョコレートも試してみたが、ダメだった。
「にゃあ」
チョコがダンボールハウスから飛び出てきておれに擦り寄った。顔を覚えてくれたらしい。かわいいやつだ。
「まったく……。チョコはこんなにかわいいのに、誰が捨てたんだ?」
独り言をブチブチとつぶやいていると、チョコがおれの横を通り抜けて、公園のベンチに飛び乗ってひなたぼっこを始めた。おれはダンボールハウスの中にネコ缶を置いておくと、チョコの方へと歩み始めた。太陽は世界をたそがれの色に染めていた。西日で前が見えない。
「おれも隣に座っていいか?」
子ネコ相手に本気で問いかけながら、おれはチョコの隣に腰かけた。すぐにチョコが膝の上に乗ってくる。そこで眠ってもらっちゃあ困るんだが。
「参ったな。動けやしねえ」
しかしチョコをどかすとか不粋なマネはしない。ひとまず、ヒマなので辺りを見渡してみることにする。
緑色の大地、金色の太陽、そして、赤い空。世界は今日もうつくしい。
明日もこんな景色が見れますように。
真上を見上げて、今はまだ見えないあの月に、願いをかけてみた。太陽じゃなくて月なのは、月にはかわいいウサギがいるからだったりする。太陽にはかわいい生物がいない。
そして、空に向けていた目線をチョコに戻そうとすると、
「…………」
なんと、おれの通っている高校の制服を着た女子が目の前でおれを見つめていた。しかも、見覚えがある。クラスメイトだったはずだ。
「八木橋くん、だよね? なにしてんの?」
学校帰りにわざわざ歩いているやつはめずらしいが、どうやら彼女もそうだったらしい。公園におれの姿を見つけて近づいてきたのだろう。
「ひなたぼっこ」
「ジジくさっ」
なんとでも言うがいい。それよりも気になるのは、
「名前、なんだっけ。……確か、矢倉、だったか?」
「ハズレ。矢口でしたー」
そう言われれば、そうだ。取っかかりさえあれば思い出せる。
「下の名前は加奈香、だったよな」
すこし特殊な名前だったから、よく覚えている。
「正解。……で、そのネコ、八木橋くんの?」
矢口がチョコを指さして問うた。
「ビミョー」
「ビミョーってなんだよ」
とりあえず話すくらいなら害はないと思ったので、チョコのことを話すことにした。
「こいつ、チョコっていうんだけど、捨てネコなんだ。飼い主を探してんだけど、見つかるまではおれが世話することにした。だから、おれのかと言われるとビミョー」
「おいしそうな名前……」
矢口はなんだかボーッとチョコを見つめていやがった。放っておいたらチョコを食ってしまいそうなほどの危険な目だ。おれの座右の銘を『食われる前にやれ』に変更した。
「おい、聞いてたか?」
「あ、うんうん。聞いてた聞いてた」
本当かどうかはうたがわしいところだが、話を進めることにした。
「それで、矢口はチョコを飼えないか?」
「あー……ゴメン。すでにイヌが二匹いるからいじめられちゃうかも」
「そうか。残念だ」
いじめられるようなところにチョコを渡すわけにはいかない。当たり前だ。
「でも、一緒にチョコの世話するぐらいならできるかも」
「……いっしょに?」
英語で言えば、トゥギャザー?
あれから、すこしややこしいことになった。
おれと違って、矢口には料理部(人数がすくないので正式には同好会なのだが)があるので、一応チョコの世話は交代制にすることになった。それでもおれは毎日チョコに会いに行ったのだが。
しかも、公園までの帰り道を矢口と歩くようになり、その姿をほかのクラスメイトに見られて妙な勘ぐりを受けることになった。とくに、一貞から。
チョコを見つけてから一週間が過ぎたある日であり、矢口に一緒に帰ろうと言われていた日であり、同時に、本当ならおれの当番ではない日のことだ。
「健郎。ゲームセンターにライオンのかわいいぬいぐるみがあったんだけど、帰りに一緒に行かない?」
一貞から、とてつもなく魅力的な単語が発せられたので、思わず脊髄反射で頷きそうになった。だが、次に頭をよぎったのは、茶色い子ネコ。さらに次は、その子ネコと遊んでいる女子高生。いくら今日は参加自由とはいえ、勝手に帰るわけにはいかない。せめて何か断っておくべきだ。
「わるい、一貞。すこし待っててくれ」
おれは一貞から一旦離れて、教室のだいぶとおくの方にいた矢口に話しかけた。
「矢口。わるいけど、今日はチョコを任せていいか? ちょっと寄りたい場所が……」
「うん、わかった。まあ、たまには休暇もとりたまえ」
そういいながら、矢口はおれの肩にポンと手を置いた。おどけているのがわかる。『気にするな』と、暗に伝えているのだろう。それなら矢口に任せていいだろう。そもそも、ほかにチョコを任せられるやつがいないし。
「それじゃあ、頼んだ。……チョコにもおれが謝ってたと伝えてくれ」
「イエス、サー」
矢口に別れを告げて一貞のもとへ戻ると、一貞はなにやらニヤニヤしていた。
「何、笑ってんだ?」
「いや、仲がいいなと思ってさ」
『誰と』なのかはあえて聞かないことにした。まあ、予想はつくが。
「それより、さっさとゲーセン行かないか? どんなライオンだ? UFOキャッチャーか?」
UFOキャッチャーだった。
ライオンの両脇腹をひっかいただけで帰ってきたUFOに
「おまえには宇宙人を名乗る資格などねえ!」と叫んでから、なくなった百円玉を補充するために千円札を両替機に突っ込もうとしたときだった。
「あ、そうだ」
一貞が急に口を開いた。千円札が機械に吸い込まれていくのを見つめながら耳をかたむける。
「子ネコをもらってくれる人が見つかったよ」
千円札はうまく機械に読み取られなかったらしく、ジーッという人工音とともに帰ってきた。もう一度、千円札を差し込む。
「誰だ?」
おれの口が勝手に動いた。千円札はまた帰ってくる。おかえり。
「隣に住んでる高郷さんって人。大学生。ひとり暮らしでさみしいんだって。子ネコの話をしたら、うれしそうにしてたよ」
千円札のシワをのばして、また機械に入れる。いってらっしゃい。
「どうする? 一度、会ってみる?」
やっと千円札が機械に認知された。百円玉に両替されて出てくる。
「ああ。今度、案内してくれ」
百円玉をサイフに入れた。一気に重くなったが、ライオンのぬいぐるみなんかもうほしくなかった。両替などしなければよかった。
「今日、このまま寄っていく? ネコに愛着がわいたら、つらくなるだろうし」
とりあえず頷いて一貞のうしろを歩き始める。その家に着くまでのあいだ、おれは一言も話さなかった。
もうおそい、などとは言えなかった。
高郷さんとやらに会って、てきとうな会話をした次の日、高郷さんと何を話して、何をしたのかも記憶になかった。覚えているのは、大学生のくせに一軒家に住んでいるというリッチなところと、何かまずいあまいものを食ったことだけだ。何故か食わずにはいられなかった。
そして今はまた、ダンボールを抱えて矢口と一緒に高郷さんの家に向かって歩いている。一貞はネコアレルギーなので欠員。
「もう、お別れなんだな」
ダンボールに向かって本気で話しかける。
「にゃあ」
ダンボールからの返事は、『また会える?』と尋ねてきているように聞こえた。
「たまには遊びに行こう?」
横を歩く矢口が慰めてくれた。多分チョコといたおれの姿を知っているので、一貞よりはおれの心が読めたのだろう。
「そうだな」
ダンボールの中には、ちいさな手製のぬいぐるみを同居させておいた。茶色い生地でつくられた、子ネコのぬいぐるみだ。今ごろは遊びの対象にされて、さっそくキズができているかも知れない。
そんなことを考えていると、あっという間に高郷さんの家までたどり着いた。隣には『坂井』の表札。一貞の家だ。
ピンポーン。
高郷さんの家のチャイムを鳴らすと、ダンボールもまた鳴いた。
「にゃあ」
ダンホールは『なんの音?』と言いたかったのだと思った。
高郷さんの家の玄関が開き、男が出てきた。何か挨拶をされる。何か挨拶を返す。何かお礼を言われる。そして、
「それじゃあ、チョコをお願いします」
何かを言って、ダンボールを男に手わたした。何回もお礼を言われる。うざったい。
「にゃあ」
『さようなら』
「ああ、ここでお別れだ」
あたらしい親友ができたようでたのしかった。
「にゃあ」
『今まで、ありがとう』
「おまえがいてくれて、よかったよ」
そう、たのしかったのだ。
「にゃあ」
『それなら、なんで?』
「なんでだろうな」
そう、それはもう、過去のことなのだ。
「にゃあ」
『なんで泣いてるの?』
3
チョコがいなくなった次の日の放課後、自分の部屋で窓の外をボンヤリと眺めていた。辺りはすっかり暗くなっている。太陽が沈んだのだ。
暗闇に沈んだ大地、黒い空、そして太陽も月も見えない。世界は色をなくしてしまった。
「会えないわけじゃない。なのに……」
何故今日は高郷さんの家に行かなかったのか。行けばチョコにも会えただろうに。
「…………」
気がつくと六時を回っていた。いつもの日課をする時間だ。
手袋をはめて、部屋のクローゼットを開けて中に入る。普通なら衣類がしまってあるはずのそこには、ひとつの箱が保管されている。できるだけきれいなタオルを右手に、左手で箱のふたを開けた。出てくるのは、多数のぬいぐるみたち。これぞ『健郎コレクション』だ。いつもなら脳みその血管が切れるのではないかと心配するほど興奮する瞬間である。
しかし、今日はそんな気分ではなかった。これは大問題だ。
いつもの通りにぬいぐるみたちをタオルで拭いていく。至福の快楽感は、やってこない。
イヌも、ネズミも、フクロウもカエルもライオンもゾウも、おれの心を癒してはくれない。
そして、
「ネコ……」
白ネコのぬいぐるみを手袋越しにつかんだ。強い風が、窓をガタガタと揺らしているのに怒りを覚えた。
『健郎コレクション』の中から、ネコだけをすべて抜き出した。全部で四つのネコを窓から放り投げた。ネコたちに泥がついて茶色に染まる。洗っても落ちそうにない。こんなものはあるべきじゃない。
テッテケテケテケテッテッテ♪
そのとき、ケータイが軽快なメロディーを鳴らし始めた。その音楽はアニメ『カメとサボテン』のメインテーマ曲だ。『カメとサボテン』はかわいいカメと言葉を話すサボテンの友情物語なのだが、今はどうでもいい。
力任せにケータイを開いて、電話がかかってきていることを確認する。一貞からだ。
「もしもし」
『ああ、健郎。大変なんだ!』
誰が聞いてもわかるほど、一貞は慌てていた。理由を尋ねてみる。
「何が大変なんだ?」
『チョコが……』
「……チョコが?」
胸騒ぎとは、このことかも知れない。しかもそれは的中してしまったのだ。
『チョコが、いなくなった!』
その言葉を聞くや否や、おれは雨の降りだした空の下へと駆け出ていった。
走りながら一貞に聞いたところ、チョコは高郷さんの家でずっとかなしげに鳴きながら誰かを探すかのように歩き回っていたらしい。おれにとってあいつがおおきな存在であったと同時に、あいつにとってのおれもまた必要不可欠だったのだ。そして今日の昼すぎ、高郷さんの家から姿を消したのだという。ダンボールに入れて連れていったのだ。道などわからないに違いない。
「矢口にも連絡しておいてくれ!」
走りながら電話の向こうに叫ぶ。
『電話番号、わかんない!』
電話の向こうのやつは、おれがあまり音を聞き取れる状況でないのを知っているため、叫び返してくれる。
「おれも知らねえよ!」
『連絡網で調べてみ……』
そのさきは聞こえなかった。落ちていたバナナの皮を踏んできれいなズッコケを披露してしまったからだ。今どきこれはないだろう。誰だよ、捨てたの。
『……もし、もしもし!?』
「わるい、ケータイを落とした!」
コケたことは伏せておく。
『とりあえずウチに来て! そこですこし落ち着こう!』
「わかった! 矢口への連絡はよろしくな!」
雨はつよくなるばかりだ。急がないと。
一貞の家に着くと、タオルと着替えとあたたかいコーヒーを出してもらった。コーヒーはブラックで、飲むと頭が冴えてきた。いささかあつくなりすぎていたようだ。
高郷さんは今もチョコを探しているらしい。矢口は一貞の家で待っているとすぐにやって来た。
「チョコがどこにいるか、見当はつく?」
一貞の問いに、
「「あの公園!!」」
矢口とハモりつつも答える。
「どの公園?」
この際、これ以上の問いは無視することにする。それよりも重要なのは、
「矢口、おれはあの公園に行ってみる」
「わたしも行く」
矢口と頷き合って、一貞の家の玄関を開けようとしたとき、
「待って、健郎。カサは……」
「おれはいらない。矢口は?」
「わたしは持ってる」
それなら大丈夫だと、扉を破り飛ばすかのような勢いでさらにつよさを増した雨の中に出た。すると、うしろから服をつかまれた。
「風邪、引くから」
矢口がカサを差し出していた。一貞からもらってきたのか、二本持っている。
「……わかった」
矢口からカサを受け取って差す。
「八木橋くん、なんでそこまでチョコのために必死なの?」
「…………」
チョコは、かわいいから。
それだけじゃなかった。
「……昔、この辺に引っ越してくる前、ネコを飼ってたんだ。おれが小学四年生になったころだったから、もう六年前か。そのネコ、白いネコだったからミルクって名前だったんだけど、よくおれに懐いてたんだ。おれもミルクのことが大好きだった。……だけどある日突然、いなくなったんだ」
「いなくなった?」
「ああ。……だいぶ年寄りだったから、おれに死ぬところを見せたくなかったのかも知れない。おれはすごく悲しんださ」
「…………」
「……それで、ミルクを探して一ヶ月。小学生にとっちゃ長い時間だ。一ヶ月探しても見つからなくて、それで諦めたんだ。……そのあとすぐに、今のマンションへの引っ越しが決まったんだ。もうミルクとは会えなくなるんだって、引っ越しの日もまた泣いたものだ」
ミルクとチョコ。同じ目に遭わせてたまるか。
「今度は、諦めない」
話を終えると、ちょうど川のとなりの道に来ていた。コンクリートの崖の下に汚れた川がある。公園に行くには橋を渡る必要がある。橋の上にはチョコレートと同じ色の動くものがあった。よく見ると風にはためくただの布きれだった。子ネコに見えたのは、そうであってほしいという気持ちゆえか。
その布きれを横目に橋を渡ろうとすると、
「八木橋くん、アレってもしかして……」
矢口が驚いた声を出した。振り返って見ると、矢口は布きれを指さしている。
「ただの布じゃないか」
強い風が吹いて、布きれは川へと飛ばされていく。それでも矢口の指はあるものを指さしたまま固定されているかのように動かない。布きれを指さしていたわけではなかったのだ。
「…………」
矢口は何かを指さしたその姿勢で言葉をなくしたかのように口を閉ざして固まっていた。顔は青ざめていく。
視線を矢口から矢口が指さした方向へと移す。流れる川の中にチョコレートと同じ色の、動かないものが見えた。子ネコに見えなかったのは、そうであってほしくないという気持ちゆえか。しかしよく見れば見るほど、おれが愛したあの子ネコだった。
チョコがこの世からいなくなった。公園へと向かう途中で崖から落ちて、川に飲まれた。
チョコが追いかけていたのは、誰だったのか。
チョコが死んだのは、誰のせいだったのか。
そう、おれのせいだ。
学校など行く気はなかったが、習慣というのはおそろしいもので、いつもと同じ朝五時半に起きてしまった。しかたなくやる気の起きないまま『健郎コレクション』を磨いてから学校へ来てしまった。
「おはよう、健郎」
一貞が話しかけてきた。昨日のことは伝えておいたはずなのだが、それにしてはやけにあかるい口調だ。まさか、チョコが死んでよかったなどと思っているのか?
「おはよ、八木橋くん」
矢口が立て続けに話しかけてきた。一貞と同じく、あかるい口調だ。チョコが死んでつらいのはおれだけじゃないと思ったのだが、どうやら違うようだ。
ひとり、席に座って前なんとかが来るのを待っていた。これほど前なんとかが待ちどおしい日はかつてない。喜べ、前なんとか。
だが、待ちどおしいものがあるときほど時間はゆっくりと流れるもので、そのあいだに一貞にまた話しかけられてしまった。できればひとりでいたいのに。
「健郎、昨日ゲームセンターで白いネコのぬいぐるみを見つけたんだけど……」
ネコ?
一貞の考えがまったくわからなかった。今、このおれにネコの話をするほどにぶいやつだとは思わなかった。
気づいたら、一貞を睨んでいた。基本的に平和主義である一貞は、この手の感情は苦手なはずだ。いらだちや、憎しみとかいった、負の感情のことだ。
一貞は閉口して、おれに謝りながら去っていった。
やっと、前なんとかが教室にやって来た。
昼休み。弁当を食って、食後の運動をするための時間。母親が作った弁当は泥が材料なのかと疑うほどまずかった。とくに、玉子焼き。あますぎる。
弁当を半分も食わずにカバンにしまうと、矢口が近づいて来た。
「八木橋くん」
「なんだ?」
返事をするのもわずらわしい。
「今日、バレンタインでしょ? だから、これあげる」
矢口がおれの手に無理やり何かの包みを握らせた。
周りを見ることもなかったので気づかなかったが、なるほど、女子同士で友チョコを渡しているのが見える。それに、今日は二月十四日だ。
だが、だからなんだというのか。
「あまいものはきらいだ」
だから、チョコはあまり好きじゃない。
「八木橋くん?」
席を立つと、渡された包みを持って教室を出て行った。おれがいないといつものサッカーのメンバーが足りなくなるのだが、そんなことはもう、どうでもいい。
太陽は雲に隠れていた。
4
おもい鉄の扉を、全身を使って開けた。
本来なら立ち入り禁止のはずの屋上へと、出る。
「……さむいな」
つめたい風がおれに襲いかかってくるのだが、今のおれの座右の銘は『健郎は風の子』だ。風に負けてなどいられない。おれは進む。
昼休みはあと十分ほど残っている。実に長い。
グラウンドから見つからないようにそっちとは逆の方向に進む。下の遠方に高速道路が走っている方向だ。こまかく言うと、北々西。
柵にしがみついて、遠くを走る高速道路を見下す。
「お、あの車、チョコレートの色みてえ」
ふいに、チョコの姿が浮かんできた。あいつのために買ってやったネコ缶。まだ残ってるんだ。もったいないから、誰か食ってくれよ。
「あの車は、牛乳みたいだ」
ミルクは七年間、おれと一緒だったらしい。まだおれが立ってもいないころから、あいつはいたんだ。
チョコはたったの、八日間。
「昼休みもあと五分か」
おれがあいつを拾わなければ、あいつは高郷さんの家を飛び出して川に落ちることもなかった。おれが全ての元凶だ。高郷さんも、一貞も、そして矢口も巻き込んで、その結果がこれだ。
「償いってわけじゃない」
柵に片足をかけた。
「ただ、あいつに会いに行くんだ」
柵を乗り越えて、その向こうにあったちいさな足場に両足を乗せる。
そのとき、いまだに手に握っていた包みに気がついた。ずっと握っていたことは知っていたが、初めて『認識』した。
「昼休みはあと三分。……食ってからでもおそくない」
包みを開いて、中のものをつまむ。チョコレートのクッキーだ。まずいのはわかっていても、食べてみたかった。一口食べたら終わりにしよう。
「……あまい。まずい」
いまさらになって思ったのだが、なぜ矢口はこのクッキーを渡したのか。本人に聞いてもいいが、昼休みはもう残りみじかい。聞く必要もないだろう。
ネコのぬいぐるみ。なぜ一貞がそんなことを言ったのか。本人に聞いてもいいが、昼休みはもう残りみじかい。聞く必要もないだろう。
なぜなら、おれはもう、死ぬからだ。
「もう、昼休みが終わる……」
学校の下を走る車に向けて飛ぼうと足に力を込めた、そのとき、
「八木橋くん!」
チャイムと同時に鉄の扉が開いた。
「矢口!? なんでここに?」
そこにいたのは、見間違えるはずもない、子ネコを一緒に育ててくれた、矢口加奈香だった。
「探したんだから……」
見れば、矢口の肩は息切れのために上下している。
「矢口……」
矢口が一歩一歩、おれに近づいてくる。
「クッキー、食べた?」
逆光なので、矢口の表情は見えない。
「あまいものはきらいだ。……だけど、食べた」
「どうだった? 結構自信はあるんだけど」
ウソをつくかどうするか、迷った。なんとなく正直に答えておきたかった。
「言っただろ? あまいものはきらいだって」
「……そっか」
おれは、矢口に顔を見られないように振り返った。きっと変な顔をしている。
「もう一口食ってみたら、うまいかもな」
「そうかもね。やってみてよ」
クッキーの包みを開けて、その中のひとつを口に運ぶ。
「……やっぱり、あまいな」
矢口の顔は見えないのだが、矢口がかなしそうな顔をしてるのは予想がついた。
「……でも、うまい」
もちろん、ウソだ。『ウソも方便』ってやつだ。
「……無理しないで」
「ああ、わかった」
なぜだか、下の車の流れが急に遠のいた気がした。多分、つまらない授業を受けてうたた寝する気持ちになったからだと思う。矢口のおかげだ。
「矢口が来てくれてよかった」
「うん」
たかが一匹の子ネコのために、命を懸けたことを後悔した。
「思いとどまれてよかった」
「うん」
そりゃまあ、チョコのことを忘れるわけじゃないさ。そこはミルクと同じ。
「ふっ切れてよかった」
「うん」
空を見上げると、雲の切れ間から太陽がこんにちは。おれたちはあのスポットライトの下で生きてきた。そして、生きていくのだ。
「授業、行こう?」
「このままサボりてえ」
「ほらほら、そんなこと言ってないで。そこ、あぶないし」
「そうだな。……ちょっと待っててくれ」
足を柵にかけようとしたとき、
「あっ」
クッキーの包みが手から滑り落ちた。まずいが大切なクッキーだ。
つい、手を伸ばしてそれを取ろうとする。
「八木橋くん!!」
自分がバランスを崩しているのに気がついたのは、矢口の叫びを聞いてからだ。
気づいたら、おれは闇の中にいた。地獄なのか? それとも別のどこか?
地獄ならば、おれは死んだことになる。
「にゃあ」
チョコの声が聞こえた気がした。これはどう聞いてもチョコの声だ。
「にゃあ」
「ひさしぶりだな」
闇の中でもはっきりと浮かぶ焦げ茶色。
「にゃあ」
チョコがおれの足元にまとわりついてくる。くすぐったい。
「ずっと、おまえに会いたかったんだ。おまえがおれの全てだったんだ」
「にゃあ」
「だけど、いつまでも頼ってなんていられないんだ」
「にゃあ」
チョコの鳴き声が何を訴えているのかわからない。当たり前だ。ネコの言葉をニンゲンの言葉に置き換えられるはずもない。わかっていたんだ。
全部、おれの、甘えた空想だ。
「一番あまくてまずかったのは、おれだったんだ」
「にゃあ」
でも、もう大丈夫。チョコの声は何を言っているのかがわからない。
「頼り過ぎることなく、甘え過ぎることなく、ひとりで立たないといけないんだ」
「にゃあ」
「わるいな、チョコ。別れの時間だ」
チョコに背を向けて歩き出した。
『いつまでも、見守ってるよ。だから――』
光に還る瞬間に聞こえた声は、誰のものだったのか。
答えはきっと、おれにはわからない。
「八木橋くん!!」
矢口が叫び声が聞こえた。気がついたらバランスを崩していた。右手にはナイスキャッチでつかんだクッキーの包み。左手には反射でつかんだらしい矢口の手。
「…………」
何も言わず、矢口と見つめ合う。
落ちそうになった瞬間、おれがいた闇の空間はなんだったのか。ただの白昼夢だったのか?
「矢口、助かった」
「まったく、もう……」
矢口はちょっと怒った顔。
「今度は落とさないで」
「……がんばる」
もう一度、柵によじ登る。その途中で矢口に聞いてみた。
「もし……」
「うん?」
「もし今、チョコがおれたちに何か言うとしたら、なんて言うと思う?」
今度は考える矢口の顔。注意して見ると矢口はずいぶんと表情が豊富だ。
「『前に進んで』じゃない?」
柵の上から帰ってきたおれは、スポットライトのような太陽に向かって、一言。
明日は違う景色が見られますように。
「授業、数学かぁ。わたし、前川きらい」
「あ」
そうか、『前川』か。
時は進んで、一ヶ月。今日は三月十四日、ホワイトデーだ。
「矢口、これやるよ」
すこしばかり緊張しているので、口調が雑になる。矢口にそのことを指摘された。
「市販でわるいが、チョコと、こっちは手づくりの、チョコだ」
ちなみに、市販なのはチョコレートで、手づくりなのはぬいぐるみだ。チョコレートと同じ色のネコのぬいぐるみ。
矢口にお礼を言われるのだが、お礼を言いたいのはおれの方だ。
「一ヶ月前のクッキーに負けないようにつくったんだ」
そりゃ、クッキーとぬいぐるみでは土俵が違うのはわかっている。だけど、負けたくなかったんだ。
「できるだけの『気持ち』を込めてみた。だから、その面ではあのクッキーには負けたくない。……どうだ?」
矢口はすこし、驚いた顔。おれの言葉をどう受け取ったのだろうか。
「何? 健郎がつくったの?」
一貞が横槍を入れてきた。そんなことよりも、矢口の返事が気になる。
「それより、ゲームセンターに虎柄のネコのぬいぐるみが……」
「かわいいやつか!?」
矢口の返事も気になるが、ぬいぐるみも気になってきた。
「うん、帰りに行こう」
「おう!」
そこでようやく矢口が口を開いた。
「健郎くんって、本当にかわいいもの好きなんだね」
結局、待っていた返事は帰ってこなかった。
まあ、いいさ。また聞けば済むことだ。
どうも、夜影です。この作品は夜影が初めて、書いて納得できた作品です。本当はこれ以前にも二、三の作品が存在しますが、デビュー作として扱っておきます。何故なら、初めて他人に発表したのがこの作品でしたから。
原作に比べ、微妙に修正が入っております。
「これってどうなのさ?」という表現がいくつかありましたので。
ちなみに、書かれたのはずいぶん前。バレンタインデーまでに小説を一本書こうとして、間に合わなくて、一週間遅れで発表したというヘタレ話付き。
所々で表現がアホな作品ですが、夜影にとって思い入れの深い作品ですので、初心を忘れないよう、頑張っていきたいと思います。
作品完成 2007.02.21
作品掲載 2008.08.18