第3話 アイドルグループの名前はユメルサ(3)
現在のような携帯電話やスマートフォンがなかったこの時代、マネージャーが常時携帯している必需品はスケジュール帳とポケットベルである。当日のスケジュールに穴を開けることのないように、常にスケジュール帳を見て把握することが不可欠であった。
さらに、運転手として担当するアイドルを収録現場へ送迎したり、アイドルの個人的な悩みに応えることもマネージャーの役割である。コンサートが開催される場合には、新幹線や飛行機にアイドルとともにマネージャーが同行するのが常であった。
もちろん、ジョーの場合も例外ではない。仕事がある日は、マンションからはつみが出てくるのを見計らってから自分の車に素早く乗せるようにしている。なぜなら、人気アイドルをエジキにしようとする週刊誌の記者が潜んでいるからである。
「今日も、ここには週刊誌の記者らしき人はいないな。それじゃあ、そろそろ行かないと。最初は、アイドル雑誌の取材が午前10時から……」
プライバシー保護の観点から、アイドルが住んでいる住所は基本的に非公表である。しかし、週刊誌記者は各種情報を駆使してアイドルの住所を割り出すことも多い。マネージャーはアイドルがスキャンダルに巻き込まれるのを恐れているので、アイドルを守るための方策を日頃から考えている。
人気アイドルを担当しているとあって、ジョーは朝から夜まではつみにつきっきりの状態が日常茶飯事である。雑誌取材からグラビア撮影、テレビの歌番組への出演はもちろんのこと、ドラマや映画の撮影、全国各地でのコンサートツアーに至るまで、はつみのいるところには常にジョーが見守っていた。
仕事は常にハードであったが、裏方ながらあこがれのアイドルといっしょに仕事ができるという喜びは他には代えられないものがあった。何よりも、自分が担当するアイドルが歌番組などで第1位になったり、年末の賞レースで受賞したりすれば、これまでの苦労が報われるのでうれしさを隠せません。
こうして、ジョーは人気アイドルとして定着したはつみのマネージャーとして陰で支える存在となった。はつみとジョーはお互いに信頼し合いながら、これからもはつみがアイドルとして輝き続けるものだと誰もが願っていた。
しかし、その願いは突然崩れ去るものになるとは、そのときのジョーはまだ気づいていなかった。




