冥帝冥界に降り立つ
おまたせしてすまぬ…すまぬ…
「……ヒノモトの国で異常な界力反応だと…?」
「ええ、『冥界門』から突然吹き出してきたわ。幸い、被害者はいないけど…」
「わかってる、調査隊を送れってことだろう?……規模はどれくらいだ?」
「データ上では、百年前の人魔戦争の際に冥界門が現れた時と同じくらいよ。もっとも、データ上ではあるけれど、これだけでも事の重大さがわかるでしょう?」
「なんだと…!?」
世界統制機構戦闘局局長であるオオトリ=カグラは驚愕していた。
今日は久々に何もない日だったから、ナンパにでも出かけようかと思っていた時に、知り合いの魔法師である美女、ムクウ=マナから魔術通信がかかってきたのだ。
最初はデートのお誘いか?などと思っていたのだが…。
デートのお誘いどころか、異常事態発生を知らせる通信だったのである。
冥界門とは、百年前の人魔戦争の際に、戦場に突如として現れ、その時すでに死体となっていた戦士たち数千万人の魂を吸収した何者かの手によって、戦場に突如として出現したものだ。
現在では冥界門はヒノモトの国と世界統制機構の共同管理となっており、冥界門に関する資料は都市図書館の奥地に潜入でもしなければ手に入らないものとなっており、冥界門を開く方法は誰も知らないはずである、一部の者たち以外は。
「まさか、冥界門が開かれようとしてるってのか?」
「今のところその兆候はないけど、可能性の一つとして視野には入れておいたほうがいいわ、それぐらいの界力の大きさだったもの」
「なんてこった…また仕事が増えるのかよ」
「ご愁傷さま」
こうして、『十英雄』の一人オオトリ=ショウの子孫であるオオトリ=カグラは冥界門の調査に乗り出すことになった。
「ところで、俺は戦闘局局長だよな?なんで調査局じゃなくて俺に通信を入れてきたんだ?」
「めんどくさかったのよ、単純に。しつこく『質問』してくるのよ?あいつら。それとも、あなたの声が聞きたかったの…とでも言えば良い?」
「ああ」
「なっ…!バ、バカ!」
「あ、通信切れた………やっぱ可愛いな、あいつ」
「ここが冥界か…知らない空だ…」
転生したミカドは、冥界の地に降り立っていた。
この世界に来た時、何か変な感覚がしたが、体に異常はないようだ。むしろ、力をもらった時よりも強くなっている気がする。
とはいえ、いくら強大な力を持っているといっても今は右も左もわからぬ身、今ここが冥界だという事しかわからない。
そもそもなぜここが冥界だとわかるのかも不明であるのだが……それは気にしない事にした、あのウロボロスと名乗った存在がサービスしてくれたと考えるべきだろう。
そんなことを思いながら、ミカドは自身の状態を確認するために行動を開始する。
幸いにも近くに池がある……なんてことはない。
歩いても歩いても池どころか村一つ見つからなかった。なにせここは冥界、かなり荒廃しているのだ。
肉体的な疲労はなかったが、精神的にはさすがに疲れる。一時間ほど歩いたところで少し休む事にした。
とはいえなにもただ休むだけではない、自分の力を確認するためにいろいろと試してみる。
「まずは…鏡を作り出す事ができるかだな、作り出せるなら今の姿を確認可能だし…………どうやってやればいいんだ?そもそもできるのか?……えーと、鏡よ出ろ!」
とりあえず念じてみたが、何も起こらなかった、どうやら何かを作り出すような能力ではないようだ。
ならばと次はそこらへんの石を拾って少し力を入れてみる。すると、石は『消滅』した。
「…どうやら、私の力はいわゆる破壊系みたいだな…試しに、あの山を破壊してみるか、『消えろ』!…なんちゃって」
消滅した。
山が、である。
その後、ちょっとした冗談で山を消滅させてしまったことを後悔しながら、空を飛べることに気づいて無邪気に空を飛ぶ少女の姿があったという……。
脊髄バースト!!