真・冥帝転生
新シリーズ、魔法少女の方は…気が向いたらねっ☆
とある世界の100年前ー
「助けてくれっ!俺の足が、足があ、あ、あああ!」
「翼がもがれた⁉︎落ちっ…!」
「あっ…!」
「くそがっ!なんなんだ!この戦況は!」
「ヒュー…ヒュー…」
「おい!くそっ喉が潰れてやがる…!これじゃ遺言も聞いてやれねえ…!」
「死んだ奴はそこらへんに放っておくか、盾にでもしたほうがいい。相手さんも必死だ、死体にも働いてもらわなきゃ、俺たち人類の勝利はないぞ。…そう思っとけ、それで少しは楽になる」
地獄
そう、まさに地獄だった。
そこらじゅうに『落ちている』ヒトだったものの成れの果てーー屍。
グチャグチャのミンチとなり、放置され、仲間や敵の足場となり、時には盾にされるーーそんな死に方がまだ幸せな死に方といえるこの戦場を、この惨状を言い表す言葉を、人類軍士官の一人、オオトリ=ショウはこれ以外に知らなかったし、知りたくもなかった。
人が人らしい死に方ができなくなっていったいどれくらいの年月が過ぎたのだろう…。
そんなことを思いながら、仲間の死を悲しむものに声をかける。
悲しんでいる暇などないと、戦えと。
それを自分にも言い聞かせつつ、ショウは戦況を冷静に分析する。
相手は魔王軍、数は不明だが、少なくともこの戦いに一億程度は参戦しているだろう。
人魔戦争ー
何者かによって人魔戦争が仕組まれたのではないかという説が出て、それが神だといわれるほどに希望の無くなってしまっているこの世界で、1000年もの間続いている戦争だ。
オオトリ=ショウも少年の頃は戦場で英雄となる事を夢見ていた。
だが、今の惨状はどうだ?『英雄』なら自分も含めてこの戦場に10人ほどもいる、今魔王と対峙している『大英雄』クロード=アルフォードだっている。
しかし、それでも止まらない。止まらないのだ、この戦争はー
「くそったれ…!」
これで言うのは何度目になるか、もはや分からない言葉を吐く。
どうしたらいい?どうすればいい?そんな言葉で頭が埋まりかけていた頃ー
「なんだ…⁉︎あの、光は…!」
それは、起きた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーここは、どこ?
目を覚まし、そう思考する。
自分は、確かにあの病院のベッドの上で死んだはずだ、兄達に悲しまれながら。
そう山土帝は思案する。
天才病ーー自分が患っていた病気の名前。
脳の機能が異常に発達する代わりに、脳に強い負荷がかかり、早くに死んでしまうという病気。
原因も治療法も不明なこの病気だったが、個人差はあるものの人によっては、パソコン並みの処理能力を発揮するため患者はその能力を生かして少ない人生を謳歌しようとするものが多い。
そして自分は、その天才病患者の中でも極めて特異な存在だった。
なにせ、スーパーコンピューター並、いや、それ以上とも言える処理能力、演算能力を持っていたのだ。
よくアニメとかで幼い外見のキャラが凄い能力を持っていたりするが、自分はまさにそうだった。
母親の胎内にいた頃から言葉を解し、三歳で数式をマスターし、六歳でハーバード大学卒業者並の学力を手に入れていた。
そんな自分にとって世界とはとてもつまらないもので、だからそんな自分が創作の世界に興味を持つのは当然とも言えた。
一度、一番上の兄さまに自分の書いた小説を読んでみてもらったことがあった。
それは自分の自信作だったのだがーー
「これはつまらない作品だ、帝。お前は人間として成熟てないからな…。ま、俺もそうだけど、これなら俺の方がマトモなものを書けるね」
衝撃だった。
なにせ今まで挫折どころかわからないことなどなかったのだ、それからというもの、自分は初めてできた、『わからないこと』を徹底的に勉強した。
そうして自分はいわゆるオタクというやつになってしまった。
このことで「責任を取ってくれ」と、よく一番上の兄さまをからかったりしたものだ。
私の想像が及ばない世界は、とても魅力的で、その世界に浸っている時間は、兄さま達二人と遊んでいる時間の次に楽しかった。
でも、楽しい時間は長くは続かないもの、十四歳を迎えたある日、私は突如吐血、その三日後にこの世を去った…はずである。
これは、もしかしていわゆる転生の間という所だろうか?それとも、死後の世界?
そんなことを考えているとーー
「娘よ…」
遥か上から、超巨大な蛇が降りてきた。
「ここは、どこですか?あなたは、だれ?」
「我が名はウロボロス、そしてここは、転生の間。生者の世界と死者の世界の狭間にある所だ、娘よ。」
「転生の間…と言うことは…」
「そうだ。娘よ、おぬしには転生をしてもらう。あの奇病を患っておりながら、強い生命力と、意思を持っていたおぬしには、その義務がある。転生システムにも空きがないのだよ。おぬしのような強い魂には、どこかの世界に転生してもらわねばな」
「…わかった、ただ、条件がある」
「ほう?申してみよ、おぬしの器に見合ったものを与えてやろう」
「まず、天才病ではなくしてほしい」
「よかろう、しかし、そなたはなんでも理解できなくなるぞ?まあ、それでも高い知性を持つことは確かだがな」
「かまわない。次に、強い体と能力がほしい。」
「よかろう、そなたの魂の器に見合ったものを与えよう…。願いは、これだけか?」
「…ああ、ひと思いにやってくれ」
「よかろう、さあ、我を受け入れよーー」
こうして私ーー山土帝は転生した。
冥界を統べるべき者。冥帝、ミカドとして。
「ふー、やっとすんだか。まったく、転生させんのも疲れるわい。丸呑みにすんじゃぞ?今回は怯えられなかったから良かったが、もしあんな幼子に怯えられでもしたら…」
「お疲れ様です、ウロボロス様。次の予定は…ん?なんです?はい、こちらウロボロス様秘書の…はい⁉︎はい…はい、わかりました、はい、ありがとうございます」
「何があった…?」
「魂の容量が足りぬようです。世界の方の、許容値を超えていると…」
「なにっ⁉︎くっ…規定値まで下げるには⁉︎」
「四つだそうです、しかも、生者、死者、悪魔、神、それぞれが治める世界で分けなければいけないらしいです」
「マジで⁉︎」
その後、世界を四つ生み出すという激務を終えたウロボロスの抜け殻が天界で発見されたという…。
本作はわりと残酷的な描写が多くなる予定です。