走行競争〈4〉
「計器、エンジン、システム、連動しました!」
マシュ、声を高らかに。運転室に集うバース達に向ける。
「よしっ!発車させろ」
バースの合図にマシュ、加速レバーを握りめる。
全身に、風圧を受けるような感覚を覚える。
「おいっ!急発進させるなっ」
「してません!この前もそうですが、ちょっとレバーを動かしただけで、ご覧のとおりでした」
バースは、モニターに表示される速度を確認する。
〔計測不能〕
なんだ?今、どれだけのスピードかも、検知できないと、いうことか!
――タクト。おまえは、とんでもないやつだよ――。
「目一杯、速度をあげてみろっ!」
「勘弁してください!時空の歪みに迷い込んだら、どうするのですか?」
泳いで、戻ればいいっ!
あーっ!アルマさん、隊長を摘まみ出してくださいっ!!!
「そういうわけだ。珍しく働いてるマシュの邪魔になるから、この場を撤退するぞ!」
えーっ?つまんなーいっ!
アルマに背後より、軍服の襟を掴まれ、引き摺りされながら、バースは退室していった。
隊長がいなかった時が静かだったな?タクト。
アルマさんの前では、それ、けして、口にしないでくださいね、ニケメズロさん。
俺が言ってた。なんて、アルマさんに告げ口するなよ。
「何だろう?お二人、また、喧嘩をしてるのかな」
運転室の扉の向こうより、バースとアルマの轟く声に、タクトは、耳をすませる。
何処を触ってるっ!この、ドスケベ野郎めっ!!!
アルマのケチーッ!まだ、挨拶してなかっただろうっ?
私そのものと、胸。どっちを失いたいのか?
どっちも、イヤーッ!!!!
「タクト、鼻」
「――。詰め物ください、マシュさん」
通信室に、バース達は、ロウスと共に集う。
[PM2:40]
何とかセーフだ。と、バースは安堵の面持ちを浮かばせる。
ニケメズロが、また、おめきよる!アネさんから、だごんごつさるっけん、よさんか、と、いっとったばいっ!
「あいつめ!」
アルマ、威嚇の形相で、通信室を飛び出す。
「なんのことだ?タクト」
「この前“力”を詰めるカプセルを、ニケメズロさんが作ったのですが、その時も、そう、おっしゃっていました。らしいです」
「つまり、カプセルの挿入口を作った、その反動で〈あれ〉に掛かってしまった、と?」
「ハケンラットさんには、仮病と、すぐにバレましたけどね」
ところで〈その処置〉は、どうやって、受けた?
僕が、ですか?“大人”て、何かと、嫌ですね。
都合が悪いと、自分を“小人”と、主張するつもりだな?
――――。ご自身が〈それ〉になられたら、アルマさんと、ごゆっくりどうぞ。
バース、タクトを背後から脇を腕で挟み込み、更に右足を脚に絡ませて、後方へと、反らしていく。
「バース、倉庫車両の物資と、武器の確認終わったぞ!おや?アルマはどうした」
タッカが入室して、そう、言う。
ニケメズロと、闘っている。
意味がさっぱりだぞ?バース。
「で、アルマがどうした?」
「ふむ。こっちに向かって歩く姿を見たのだかな」
しかも、見馴れない、服を着用してた。色は軍服と同じ紅色で、今にも舞をするような――。そうっ!なかなか、色っぽかったな―――!
「ロウスさん。あの、丘みたいに盛り上がっている建物。僕、図書館の歴史の本で見たことあります」
「大昔の墓だな?そういえば、この辺りは、群集になって建造されていたと、聞いたことがある」
出た!の、でしょうか?
俺は、そういう類は、信じない質だ!タクト。
でも、これだけうじゃうじゃと、建っていると、なれば―――。
出てもおかしくない。と?
汗だくですよ?ロウスさん。
[PM2:43]
刻、一刻と、時は迫っていた。