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陽の咲く国〈7〉

一行、長い螺旋階段を上り詰め、その先に列なる燭台に目を奪われる。


「一体、何処までヒメカは行っちまったんだよ!」

バース、飽きる形相を滲ませ、唇を噛みしめる。


「アルマ、あの、燭台に《宝》を置いて」

エルマの促しに、アルマは、躊躇いを含ませる眼差しを剥ける。


「《宝》はどうなるのですか?」

「〈今の時〉に帰る為の道標として、役目をしてくれるの。辛いのは判るけど、アルマ、これもすべては《闇》に蝕まれた【国】に―――」


アルマは、頬につたう涙を掌で拭いあげ、静かに頷くと、その一つずつに、固体を押し込めていく。


16の燭台、それより灯あらわれ、その道を瞬時に照らし出す。


「色合いがまだらだけど、道はしっかりと照らされてますね?」

「“無垢な光”ですもの。色んな〈希望〉を輝かせてるのよ」

「まさに、子供達の〈夢〉ですね?」

エルマは、タクトのその言葉に笑みを湛える。


「足止めしてる暇はない。行くぞ!」


バース、駿足となり、その先頭を突き進み始める。



「バースさん!あの先に何か有ります」

「やっと、ご対面だ。おまえ達〈闘い〉のロックを解除させろっ!」


「了解!」と、陽光隊、一斉に手首に巻き付かせる装置を操作して、其々の“光”を輝かせる。


――――ヒメカ、其処から動くなっ!


バースの叫び、その場所に木霊して、一行の足音、響き渡る。


「私が此処に訪れると、よく、分かりましたね?」

ヒメカは、一行に背中を向けたまま、か細く言う。


「チヨノが《闇》より《宝》を守って……私達を導いた!」アルマは、バースの側に歩み寄り、その身体を支えられながら、言う。


「……チヨノが……《闇》をくい止めいたと、言うの? 」


「自身も《闇》に必死で抵抗して……その中から、私達に願いを託したのだ」


「私は……何てことを、チヨノにさせてしまったの………」


「母さんのせいじゃない!もとはといえば〈団体〉が勝手に【国】に入り込んで、何もかも引っ掻き廻したからだ!僕達は、決めたんだ。人を欺き、その生き方も、めちゃくちゃにさせられてまで〈団体〉に豊かな暮らしを求める何て、要らないと! 」


「タクト、それに皆さん。私が【国】に赴いた理由を、まだ、お話ししていませんでしたね?」


「話したところで、俺達の意志は変わらない!それに、ヒメカ。おまえは、今、何をしようとしてるのだ! 」


バースはアルマと共に、タクトの前方に駆け寄り、更に身を構える。


―――私は【国】に陽の……は……な……を―――。


「母さん?」

タクトは、ヒメカの、振り絞るような声に、驚愕し、其処へと駆けて、その身体を支えていく。


「母さん、どうしたの?ねえ、母さんたら!」

腕の中で脱力するヒメカを揺すぶらせながら、タクトは、必死で呼び掛ける。


「タクト、私にヒメカを」と、アルマもまた、駆け寄り“薄紅の光”を輪にさせ、被せていく。


「……かなり、衰弱している。今まで《闇》を振り払い続けた結果、身体そのものまで、その影響を受けていた……。ただ、自身だけでは、ここまでには到らない!おまえは【国】そのものにまで“力”を使っていたのだな?」


「……亡者の魂を……《闇》に変えたのは太古の【国】の〈時〉……私は【其処】を納めていた《血》を受け継ぐ者――。その悲しみを、何としてでも……癒してあげようと―――」


「《闇》は暗黒の中で活動が活発になる……。ヒメカ、これ以上【国】に止まっていては、危険だ!直ちに、ホスピタルに入って、治療を施すのだ」


「アルマ……さん。それは、受け入れることはできません。私が、私でなければ―――」


――僕に《血》があるなら、その役目、引き受ける!


その声に、ヒメカ、そして一行は一斉に振り向いていく。


「タクト……あなたは、まだ、未熟なの。それだけは……私は託すことは、出来ない」


――何の為に俺達がいるんだよ?


「ルーク?」と、ヒメカは身体を震わせ、困惑の眼差しを剥ける。


「私も、同じくだ。おまえには、まだ、役割がある。私もまた、いずれ、その役目を担うことになると思う……」


「アルマさん……。あなたがおっしゃってる意味、何となく判りました……」


ヒメカ、柔らかな眼差しをタクトに向けて、更にその頬に掌を乗せていく。


「私は〈繋ぎ〉が二人いる……。それは、とても素晴らしい《宝》だった。また、あなた達をこうして、抱き締めてあげる……。そんな、思考もずっと、被せていた」


「……ありがとう。僕、みんなと【国】を変えて見せる。だから、今度は、母さんが、僕の帰りを待っててね」


タクトの言葉にヒメカは頷き、そして、瞼を閉じていく。


「母さん!」

「落ち着くのだ!まずは、ここからヒメカを搬送しなければ――」


そんなら、おどんが やるばいた!


「ハケンラットさんが?」と、タクトは、怪訝な眼差しを剥ける。

「大アネさん。あた、ぴらぁあと、さっきのごつ、あっば出してほしかばいた」


「ごめんなさい。私もそう、したいけど―――」

エルマは、破片となった土笛を、一同に差し出す。


「あなた達を呼んだら、突然、こうなってしまった。創るには、この音色も連動しないといけないの」


「時間はかかるが、転送装置なら、どうだ?」

「ニケメズロ、あた、何でそっばだまってたんね!」

「おまえが、きかなかった だけだ!ただ、長距離と、なると、何度か転送を止めないと、装置がオーバーヒート起こすから、気をつけろよ」


「おまえら、何を勝手に事を進めようとさせてる!」

バースの激昂に、双方は身体を硬直させる。



「この通信機 を使いなさい。清風隊と合流して、ヒメカの搬送に協力してもらうの」


「大丈夫なのか?【此処】はセキュリティが施されてると、ヒメカは言ってたぞ」

「あら?言ってなかったかしら」

「……根回ししてたのか?」

バースは顎を突きだして、エルマを 見る。


「ハケンラットさん、母さんをお願いします」

「任せてはいよ」


皆さん、本当に申し訳有りません。どうか、ご無事でいてください。


「そぎゃん、かたかこと言わんでよか。あたは、身体ば治すのば考えとけばよかと!」


ハケンラットは腰を下ろしたまま、ヒメカを抱え、装置を作動させる。



―――グリンリバで、あたたちば待っとくばいた――!


双方“光”を被り、一行の前より舞い上がり、そして、消えていく。


安堵の息をつく間も無く陽光隊、前方に一斉に振り向いていく。


「ヒメカがいなくなったから〈奴等〉がふんぞり返り出した」

「全部、ぶっ潰すと、なれば厄介だぞ」

バースとアルマは、目を合わせながらそう、言う。


「タッカさんは、防御を。ロウスさんは、バースさんにあなたの“力”を注ぎ込んでください!」


「二人とも、さっさと、タクトの指示で動け!」


其々より“力”発動され、バース、タクトを見る。

「バースさんは、中心を、他のみんなは左右二手になって、挟むように攻撃してください!アルマさんと、エルマさんは、僕達の援護をお願いします」


「いいぞ、タクト!」


――行くぞ!



バースの叫びと共に、一行、人の形をする《闇》に駿足する。

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