陽の咲く国〈6〉
陽光隊、集い、此まで辿った道程を語り合う。
「此処で、全てが終わりではない。その先はまだ、続いている。まずはヒメカ……タクトの母親の足取りを追う。それから【此処】を蝕むものの正体を暴く!」
バースは、隊員のひとりひとりの目を見つめながら、高らかに言う。
「バース〈団体〉の実態は、いつ、掴むのだ?」
タッカが怪訝な形相で訊く。
「慌てるな!優先順位はこっちなんだ。そんなもん〈軍〉に押しつけて良いくらいなのだぞ」
「だんな、おどん、あたたちとちごうて〈闘い〉は得意じゃなかばいた」
ハケンラットは、恐る恐る、そう、言う。
「ニケメズロ“力”を詰めるカプセルは持ってきてるか?」
バースに訊かれ、ニケメズロは、身体を硬直させる。
「……一応、ありますけど……」
そう、言って、背負うリュックサックより、それを取り出し、バースに見せる。
「繰り返し、容器は使用出来ないので……」
「使い捨てか……。だが、ないよりはマシだ!」
バースは、指名した隊員にカプセルに“力”を注入する指示をする。そして、それらをハケンラットに手渡していく。
「よかとね?おどんがこぎゃんと、もっとっても……」
ハケンラットは、マシュを横目で追いながら、バースに訊く。
「たいちょおう!僕は、居残りなんですかぁあ?」
「バカタレ!おまえにしかない“力”を俺は宛にしてるのだ」
僕にしかない?
ああ、窮地に追い込まれたら、絶対“発動”する!
じゃ、今、其れを見せて貰いたい……。
て、バンド。だからといって、何を腕捲りしてるんだよぉおっ!!!
「俺は、何をすればいいのだ?」
ロウス、眼差しを虚ろにさせ、バースに剥ける。
「俺らの援護をしろ……」
「長いこと、使うことはなかった。それでもか?」
「〈的〉は外れない」
……〈戦術〉は、どのようにしますか?
「タクト、おまえが指揮しろ……」
バースの言葉に一同、一斉にタクトに注目する。
「何だ?おまえ達。タクトでは不都合なのか」
いや…… 。
「タッカ。おまえが、こいつの根性を一番、理解していなかった。今までどれだけ、俺達とひっついてて、それでも……怖じ気づいたことはあったか?」
タッカは口を閉ざし、バースより視線をそらす。
「己に溺れ過ぎる……。それは、場合によっては〈弱点〉になる。況してや【此処】では、恐らく、俺達が経験した〈戦〉とはかけ離れた事態に遭遇する可能性は、十分にある!」
〈未知の無限〉バースは、タクトにそう、悟った……。
「……さすがだ。伊達にタクトに接してた訳じゃないな?アルマ」
「妬いてるのか?バース」
バースは、笑みを湛え、タクトに歩み寄り
「まぁ、とにかくだ!こいつに特にへこへことすることは、しなくていいから、任せて見せよう!」
と、言いながら、タクトの頭髪を掌でくしゃりと、掻き回していった。
「……バースさん、いいのですか?凄く、重要な役割を僕なんかに……」
「【此処】では、おまえにしか、成し遂げられないものが待ち受けてる。それは、何だか判ってるだろう?」
タクト、バースの言葉に、想いを含ませる眼差しを剥ける。
「みんなの〈未来〉を守ること……」
「どえらく、派手にぶっかましたな?」
「……ぽんっと、頭に浮かんだのは、その言葉です」
タクトくん、ある意味で〈オトコマエ〉になっちゃったね!
「おいおい……ザンル。感動の仕方が間違ってるぞ!」
「もうっ、大将だって、嬉しいでしょう?タクトくんは、みんなで育てたみたいなものなの!」
「そうだった……な」と、バースは呟くと、エルマに振り向いていく。
「『藍より青し』……。大昔にそんな、言葉が流行ってたかしら?」
エルマ、穏やかに、その言葉を吐息とともに、吹かせていく。




