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明鏡青雲〈1〉

――何だろう?暖かいうえに、眩しいな。


タクト、立ち姿で黄金色に輝く空間を目視する。


――みんな、何処にいるの?


瞬時に不安を含む形相をさせ、右往左往と、身体を揺すぶらせる。


「何をまごまごしてるの?早くしないと《扉》がきえちゃうわよ!」


タクト、聞き覚えがあるその声と、振り向く。


「エルマさん……だけ、ですか?」

「まずは、あなたのやるべき事を優先させてあげるわ」

エルマ、タクトの鼻を指先で挟み、右に捻り廻す。


「何て事をするのですか!」

「あなたが、しゃんと、してないからよ!」


前置きは、ともかく、僕のやるべきことて、何ですか?


「此処まで来て、寝ぼけたことを言うのではないっ!」


「え………あっ!」

タクト、思考を掻き回し、呆気となる形相をエルマに示す。


「アルマは心配要らないわ。あっちには、バースが付いてるもの【国】に入り込んでいるから、そのうち、ちゃんと、合流できるわ」


でも、子供達は?


ちょっと、アクシデントが発生しちゃった……。


さらりと、言わないでください!


消えたとも、連れ去られたとも、残念ながら、明確にできないの。ただ、此処で言えるのは――。


「私でも理解できない“力”があの時感知された――」


「――あなたでさえ、判らない事があるなら……だったら、僕、それを探りあてる事をします!」


「あのね、タクト。ちょっと、それは、待ってて欲しいな!」


「いえ、やると言ったらやります!あの《扉》を潜り抜けてみたら、絶対に子供達の手掛かりが掴める……気がするので!」


タクトの剣幕に圧されるエルマ、毛先を摘まみ、息を大きく吐く。


「負けたわ。あなたを少しだけ、宛にする。でも、判っているわよね?」


タクトは、頷き、前方に虹色に輝く《扉》を瞳を澄みきらせ、見つめる。


「あの《扉》はあなたにしか、開ける事ができない……。その先は、あなたの目と耳で確かめてね」


「〈あの時〉僕の“光”が此処まで辿り着き、そして、それを――」


あなたのお母さまが受け止めてくれた。二人の“光”が《扉》を型どらせたの――。


「エルマさん、母さんと何度が会ってるのですよね?どんな様子かは、お話し出来ますか?」


エルマ、瞳を曇らせ、首を横に振る。


「……判りました。そして、僕の事を導いてくれて、ありがとうございます」


――行ってらっしゃい。


――はい……。エルマさん【国】で必ず、また、お会いしましょう!



タクトは《扉》へとまっすぐに駆け出し、ノブに手を掛け、押し込んでいく。


ひとつ、眩しさを覚えるものの、怯まず、更にその奥へと、潜らせ《扉》静かに閉じる。



エルマ、蜃気楼の如く消える《扉》を見つめ、安堵の面持ち滲ませる。


――ヒメカ、あなたの息子が【国】に新たな息吹を《陽》と《風》と共にこの空に翔ばしてくれるわ……。



言葉、聡明、胸の内に刻ませる。それは、エルマ。

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