遥かなる鮮明〈後編〉
一夜が明け、紅い列車、朝陽を浴びながら、駆け出していく。
「距離、60㎞程の先に建造物らしき物、発見!」
タイマン、モニター画面に映る、望遠の映像を 確認しながら、そう、報告する。
「アルマ」と、バース、アルマの手を握りしめ、更に眼差し、穏やかに向ける。
「[暁の柱]そこに……」
「ああ、待っているのだよ。あいつが、な」
――列車は徐行を始め、そして、停車する――。
光を含む、鮮やかな鉱石。太古の武人を思わせる大理石の彫刻。そして、天を目指すかの如く建つ紅い柱。
プラットホームに、似せた木製の足場に、足を着かせる。それは、バースと、アルマ。
「あの、壁まで走るぞ!」
バース、アルマの手を引き、目指す先へと、駆けていき、背中を其所に着け、更にアルマに伏せるように、促す。
その、隙間から顔を覗かせ、アルマと、眼差し合わせ、静かに頷く。
「間違い、ないな?」
バースの問い掛けに、アルマも頷く。
――行ってこい―――。
アルマ、ゆっくりと立ち上がり、ひとつ、足元縺れさせ、歩幅を大きく、じわりと、速く、そして、両腕振り上げ、駆け始める。
その、視線の先に紅い柱の側に佇む、深紅の軍服身に纏う女性、穏やかになおかつ柔らかに、その眼差し、アルマに向けて、両腕を拡げる。
双方、一度、顔を正面にさせ、アルマ、女性の腕の中へと潜り込む。
「よく、来たね?いつの間に、こんなに大きくなっちゃって、ちょっと、驚いたわ」
「………もう……もう、会えないかと、思っていました。よく、よく………ご無事でいられて……」
「相変わらず泣き虫ね?」
「そ……んな、こと、ありません……」
「こんなところでは、何だから、まずは、あなたの同志にご挨拶させて貰えるかしら?」
アルマ、女性に促され、静かに頷く。
―――母上………。
陽光、母娘に眩しく、なおかつ優しさ含め、燦々と降り注いでいった。




