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明生穏光

「タイマン、この気象状況で、何か特定することが出来たか?」

アルマ、タクトと共に、通信室に入り、タイマンにそう、促す。


「只今、確認中です。処で、隊長の様子はどうなのですか?」


「睡眠を取らせた!徹夜続きでは冷静な判断能力が鈍って当然だ」


――あれから、この地に関する資料を解読されていた。その作業が逆に隊長自身を追い詰めさせていた……のでしょうか?


――何の為に、あいつの相棒を務めていたのだ !タクト、この、豪雪を車窓からでいいから、目視で、其れらしきモノを発見するぞ!


――はい、アルマさん!



タクト、通路の車窓より、豪雪をひたすら、凝視する。


「んー……。あれ?」


アルマさん、見えますか?


「どれ」と、アルマ、タクトが指差す方角を確認する。


「列車に向けての振り方に加え、よく、目を凝らすと、積雪がない場所がある!」

「考えられるのは?」


………最悪な事態だ。頼む、バースを呼んでこい。




通信室に、重苦しい空気が深く沈む。


レーダーに、罠の反応が、列車の北東より10ヵ所確認………。


タイマンの報告と同時に、バース、険相し「畜生!」と、叫び、なおかつ、両拳で前方のテーブルを叩きつける。



バース!おまえが真っ先に取り乱してどうするのだ!


俺のせいだ!俺が………しくじったんだよ!


背中を丸め、肩を震わせるバースに、アルマ、後方より、その身体を両腕で挟む。


「罠の正体はご存知なのですか?」

タクト、恐る恐る、バースへと歩みより、そう、訊ねる。


「フローズントラップ〈戦〉で使用されていた仕掛けが、この地に設置されていた………」


罠のセンサーに物体等が感知されると、装置から大気中の水分を雪に変換させる。つまり、自然を利用した、武器だ。


「車体は既に、半分、埋め尽くされている………」


室内に集う隊員一同、誰一人、口を開く者無し。



――――!


バース、ぱっと、顔を上げ、通信室を飛び出す。


バース、何事だ!


吹雪が止むのが聞こえた!


アルマも、バースの側に付き、車窓からの風景を凝視する。


「………どういうことだ?」

「おまえが目を丸くさせて、私に何を訊くのだ!」


しんと、鎮まる、外の雪景色。空より、穏やかに、陽の光、降り注ぐ。


――隊長!通信機に、正体不明の着信があるぞ!


バース、タイマンの呼ぶ声に我に返り「俺が応答する」と、通信機のマイク、握りしめる。


「そちらの正体を証せ!俺はある軍の隊の責任者、ルーク=バースだ」


『まずは、積もる雪が溶けるのを待っててください。仕掛けられた罠も、設備等を含め、私達の部隊で、壊滅させます!』


「俺は、あんたが何者かと、訊いてるんだ!」


『焦りは禁物です。明日の夜明けには列車も、走らせることができます。どうか、それまで、ご辛抱をされてください』


――[暁の柱]を目指してください。其処で、是非、お会い致しましょう………。


「おい!何だよ。ちっ、通信を切りやがった」

舌打ちするバースの側で、アルマ、その腕に手を乗せ、更に涙声を含ませる。


――バース……今の声、聞き覚えが……ある。


「アルマ?」と、バース、アルマに穏やかな眼差しを向ける。


――確か、なんだな?


――ああ、いつも、胸の内でその声が刻まれていた。


バース、頬を濡らすアルマの手を引き、通信室を出る。


「あの?」と、タクト、双方を追いかけるものの、タッカ、その腕を阻止する。


そっと、しといてやれ………。

タッカ、首を静かに横に振ると、タクト「はい……」と、返事する。



陽の光、更に眩しさを含ませる。



――一方その頃――



――アルマの個室でバース、その止まることがない涙を掌で拭いつつ、柔らかな髪をひたすら、手串し続けていた―――。

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