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豪雪波乱

豪雪、止まず。バースの形相、岩の如く、硬し。


ザンル、この吹雪はおまえの“力”でも、抑えることができないのか!


大将、無理なのよ!“力”を使おうとしたら、頭が締め付けられるように、痛くてたまらないのぉ!!!


「タイマン!気象レーダーには、雪雲は映っていなかったのだよな」

「ああ、気圧は、雨や雪を降らせる値ではない!」


『これ以上の走行は無理です。隊長、指示をお願いします』

運転技師のマシュ、バースに通信機よりそう、促す。



―――ただちに、停車させろっ!


通信室に、バースの悲痛なその叫び、木霊する。


「列車を走行させる為のエネルギーは?」


「備蓄分はあるが、それを使うとなると―――」


―――この地で、チャージする場所が特定できないとなれば、走行は不可能だよ、隊長。



バース、拳を握りしめ、更に唇を噛み、通信室を飛び出し、乗降口を開く。


隊長、何をするつもりだ!


除雪するんだよ!


あんたは、馬鹿か!こんな猛吹雪の中、俺達が何人でその、作業をしても、遭難するのが目に見えてるだろう!


此処で立ち往生しているよりは、マシだ!


「落ち着け、隊長!」

タイマン全身の重みで、バースの身体を通路に押し込んでいく。



――何事だ?


――アルマさん、隊長の様子がおかしいのです!


――判った。後は、任せるのだ。




――バース!おまえは、何を焦っている?――



――――オレ、ハ、コノチニ、カゼヲ……。




―――――。




バース……さん。バースさん!―――。



――ん、タクト……ど、う、した?


「アルマさん。バースさん、目を覚ましました」



うっすらと開ける瞼の先、目頭に涙のタクトが覗く。


「何、泣きかぶってるのだよ?」


「バースがいけないのです!」


――また、独りで事を進ませようとした。今度は食い止めたのだ。


「飲むのだ、少しは身体が暖まる」

バース、無言で、ベッドより上半身を起こしあげ、アルマより湯気が立ち上る器を受け取る。


「俺が、任務開始前に、気象状況を想定せずにいたのが、原因だ。責任は、この俺にある……」


それは【サンレッド】迄の、基準でだった。況してや、今、走る地は、殆どが手探りのうえ“力”では抑えることが出来ない、事態も発生しても……何も、おかしくはない―――。


「僕、行きますよ?」

「いや、まだ、こいつの世話をしろ!」

アルマ、タクトの腕を掴み、バースの側に押し付ける。


「子供達は大丈夫です。暖房は、その車両に効かせてます」


「この状況で、よく、その気転が回せたな?」


目の前の命……。それを、優先にしただけです。


「……。しばらく、このまま、横になってていいか?」


その方が、賢明だ。おまえも、まとまった休息が、必要と、身体が警告したと、受け取れ………。


アルマ、バースの額に“薄紅の光”注ぎ込む。


「タクト……。すまないが、おまえの知恵を貸してくれるか?」


勿論ですよ。まずは、この、吹雪の正体を掴みましょう!


扉、締まり、室内に雪明かり灯る。


バースの寝息、白く静かに吐かれ、なお、繰り返される。

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