表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/86

隠密助走〈後編〉

「バース、資料室は厳重なセキュリティが施される。それを、何事なく侵入できたのか?」


「おまえ、よく、軍内部の事情、知っていたな?」


アルマ、険相。


「噂、だ」

「――。閲覧できるのは、上層部のみ。俺の素性を知っているヤツがわざと招いた。其しか、考えられない!」


《罠》ですか?


そうとも受け取れるが、先ずはロウスの名が其処に記されていたかのか、だ。タクト。


「【育成プロジェクト】何て、いかにも怪しさが含んでる。そして、ロウスと、きてる。此処までくれば、嫌でもこう、考えらる」

バース、息を吸い込み、目尻上げる。



――ロウスは利用されている。



驚愕。



〈軍〉が其処まで調べる意図は?


〈団体〉の情報を聞き出す。そして、利用する!


ロウスさんが、その、親族だなんて何処で知ったのでしょうか?


〈軍〉の何者かが〈団体〉と繋がっているのさ。


そっちが手っ取り早いのではないのか?


〈団体〉に〈軍〉の情報が漏れるのも恐れていた。

揺すりをかけるのに、うってつけのターゲットとして、ロウスを選んだ。




静寂。



「アルマ、あいつの“力”は何か知っているだろう?」


「“照準”相手の動きを感知して、その行動先に“力”を落とす、だ」


「他にも“力”は持っていた。あいつとは、同期で〈軍〉に、入った。俺の“力”も上抜く程のを、な」


――それが、ひとつしか残ってなかった。気づいたのは、隊の結成時だ―――。


「ロウスさん、どんなお気持ちで、この任務を遂行されていたのでしょうか、ね?」


「話が、見えない」

アルマは、前髪を掻き分け、息を大きく吐く。


「判らないのか?ロウスは〈軍〉に拷問を掛けられたのだ!しかも、倫理、道徳的に反している方法を、な」

「其処まで至る経緯が、全くもって、理解できない!」

アルマ、感情を含ませ、言葉を吐く。


「アルマさん、何だかお疲れ気味ですね?」

「ああ、そうだ。タクト」


バース、険相。


「資料室、か。タクト、転送装置を見せて欲しい」

「はい」

タクト、アルマの促しに応じて、それを、差し出す。


「やはり、そうだ。記録にこんなマークが付いている」


「リターン?それじゃあ、この装置を持っていた人は――」

タクト、装置の画面を覗き込み、バースに視線を向ける。


「俺達の行動を知っている奴だ。恐らく、そいつが〈あの時〉にも、関わっている!」


「バースの拾い癖を知っている人物だ」

「おいっ!俺がいかにも盗人みたいな言い方だな?アルマ」

「ほぼ、近いではないか?おまえが、難関の非常事態に真っ先に飛び出すと、いう、使命感の塊の奴だとも判ってのことだ」


お二人とも、心当たりありますか?


考えたくないが、あの方しかいない。バースが煮え湯を飲まされたと、いつも、愚痴っていたあの方――。



「ハゲ茶瓶か?」

バースの形相、怒り、膨らませる。



―――奴が《罠》を仕掛けた犯人だと、いうのか?だったら、今すぐ、行って確かめてくる――!



「アルマッ!その、装置よこせっ」


「断る!」

アルマ、すかさず、それを、腕の中に押し込める。



よこせ、よ!


嫌!


バース、アルマの腕を掴み、解そうと握力を注ぐ。


「バースさん、乱暴ですよ!ああ!アルマさん」




―――やめて、バース!


頬を這う涙とともに、薄紅の光の粒、アルマより放たれる。



すすり泣き。


アルマ、崩れるように、床へとその身体を落とす。



バース、憔悴して、アルマの肩に手を乗せる。

「タクト。すまないが、部屋、出てくれ――」



アルマさん、僕に転送装置を渡してくれ ますか?


タクト、バースを押し退け、アルマの濡れる頬に指先を這わせる。


「泣かないで。僕、行きますね」

するりと、その手を離し、タクト、アルマの乱れ髪に手串する。


退室。


アルマ、咽び。なお、止まらず。


バース、深くアルマを手繰り寄せ、頬を挟む。


抱擁、口づけ。




行かないで、行かないで、行かないで―――。


行かないから、もう、泣くな。





双方、重ねあい、更にその身体、結ばせる。


――バース。


アルマの吐息、バースに注がれ、幻想広がる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ