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幻林間〈13〉

「世話になったな」

バース、タクトを背負い、男にそう、言う。


「何も、焦るように戻ることはないだろう?」

「いや、そうはいかない。何仕出かすか分からないのばかり、残して来てるからな」


「処でその、少年の歳はどれ程なのだ?」

「やたら、タクトの事気になってるみたいだな?ちっこいけど、16だ」


そうか……。


男の掌がタクトの頭部に乗り、そして、掻き分けられていく。


「おっさん、俺達に付いていっても構わないのだぞ?」

「いや、そうはいかない。私が此処を離れたら、この、自然を管理する者がいなくなる」


男は、腰に装着するポシェットより、掌の大きさの個体を、バースに差し出す。


「これから行く先での参考にするとよい」


いいのか?何だか、極秘っぽいものが、納まってるのではないのか?


いいのだ。おまえ達みたいに勇猛果敢な者の手によって〈この大地〉に新たな歴史を刻ませて貰えるのならばな!


「そう、言われると、調子に乗るぞ!」

バース、ニヤリと歯を見せ、笑みを湛える。


また、おまえ達みたいな客が、訪れるかもしれない。身体が丈夫なうちに、此処は、もたせてやる。無論、再び、おまえ達が寄ると、いう事になった場合でもな………。


「そのときは、また、世話になる。元気でな!」


待て、青年。


何だよ?やっぱり付いていくか!


―――目の前の灯を自ら消すな………。


「了解」と、バースは、言うと、身体を翻し、来た道を辿るように、駆け出していった。



キャンプ地に到着すると、テントの前にアルマが憔悴の面持ちで、佇んでいた。


「何で、此処に居るんだよ!」

「馬鹿野郎!他の連中がドカドカ列車に入り込んで、何事かと問い詰めたら―――」


タクトとタイマンを連れて、おまえは、どこぞこに行ったなんて、ことではないのかー!


「ちょいと、調査に行っただけだ。誰が、何をおまえに大袈裟に言いやがった?」


夜が明けても戻って来なかったら―――なんて、事態も想定していた!


バース、呆気な形相を剥ける。


「急いで戻って来て正解だった」


アルマ、おまえは、列車に戻れ!


嫌だ!


頼む、俺を困らせないでくれ!


それは、今、おまえが背中に引っ付けてるタクトだって、同じではないか!


「言い方冷たいな?」


つべこべ言うな!タクトをその辺に転がしといて、さっさと休めっ!


よせっ!タイマン、タクトをテントの中に避難させろ!


させるかーっ!


「隊長。アルマさん 、飛び蹴りしてきたぞ」


この、役立たず!こうなったら――。



バース、森の方角へと翻し、そのまま逃走をは駆り出す。

その後方、アルマ叫びながら、追い付いてくる。


「な、何で俺が………?て、言うか、タクト、何で起きないのぉ!」


落ちかけるタクトを背負い直し、更に森の奥へと突き進む。


「はぁ、限界だ。ん?」


“あの光”確かあの時―――――。


足元、木の根に絡みつけ「ん、ぎゃあっ!」と、叫びながら、バース、顔面から落葉が重なる地面に転倒する。


「観念したな!」

「違う。ただ、転んだだけだ」

「タクトをおぶったままだから、そんな目に合うのだ。とにかく、奴を降ろせ」


ノーッだっ!


「何だと?」

「俺が、タクトをほっぽると、おまえ、何仕出かすかわからんからだーっ!」


アルマ、ため息。


「何を子供みたいに、駄々を捏ねている………」


アルマ、バースより、タクトを腕で挟み、地面へと、横にさせる。


「此を鼻に詰めろ」と、アルマ、ポケットティッシュをバースに差し出す。


「何で、こうなっちまったんだよ?」

「凄い、間抜け顔してやがる」

アルマ、鼻で笑うと、バース、顎を突きだし、歯を剥ける。


“あの光”の近くだから、この周辺は随分と、明るいな?バース。


ああ、迷わなくて助かるぞアルマ。


「――――。おまえの答えは、出たのか?」

「よく、察したな?」

「態度が露骨なのだ。で、どうなんだ?」


バース、頬に息を溜め、含む言葉と共に吐き出す。


―――タクトとは、断ち切ることは、出来ない。



「同感だ」

アルマ、そう、呟くと、タクトを抱え、更に背中に乗せる。


「おい、こいつ、意外と重いのだぞ」

「おまえは、こいつを担ぎっぱなしで、足腰かなり、ガッタガタの筈だ」


「仕方ない、俺が、押さえとく」と、バースは、アルマの背後にまわる。


「―――。丸っきり、運動会の競技の、フォルムではないか!」

「こうしないと、おまえ、絶対堪えきれず放り出す!」


「少しばかり駆け出すぞ」


木々の隙間からこぼれる月明かり、バース達が行く道、淡く穏やかに照らす。


――処で“あの光”は結局、何だかは調べなくてよかったのか?


――あれか?そりゃ、あれに、決まってるだろ!


――勿体ぶらずに、さっさと言えっ!





――――灯、だよ。大地を照らす為、消すことは出来ないのさ―――――


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