幻林間〈10〉
「随分と、遅かったではないか」
キャンプ地に戻るタクト一行。其処では、昼食に舌鼓打つ子供達がいた。
列を成し、バースを前に、彼等は沈黙を続ける。
「言い訳ぐらいしろ!」
バース、眼差しを鋭くさせ、そう、問い詰める。
「時間を守れなかった俺達がいけなかったのだ。ただ、これだけはおまえに渡しとく」
バース、タッカより黒い長方形の個体を受け取り、其を凝視する。
「物騒なものでも写ってるのか?」
「おまえの目にどう、映るかは定かではない。どれ、ペナルティを指示しろ」
そんなもの、ねぇよ!
「は?」
ミッションはおまえ達を試す口実だ。
「……。その件で、話しをしたい」
タッカ、バースの右腕を掴み、森林の近くへと、移動する。
「試したとは何だ?」
「仲間意識だよ。特に、タッカ、おまえは俺達の中で〈軍人〉として、近い性質をしているからな」
タッカ、険相して「俺が、冷血な野郎とでも言いたいのか?」と、バースの胸ぐらを掴む。
「俺が、タクトを鍛えてくれと頼んだ理由も、気づいた筈だ」
「――。本人も、承知した」
あいつは、おまえにも〈あの目〉を剥けるのか?
ああ、特に、最近は頻繁だ。
「あれたげひっついといて、反抗するのか?」
「金魚のフンか?タクトは」
バース、身体を翻す。
「―――。バース、おまえがタクトを鍛えてあげられない、本当の理由を言えっ!」
「子供達をほったらかしで、いつまで長話に付き合わせるのだ!」
「誤魔化すな!」
――おまえ達の望み通りに、俺はタクトから離れるっ――!
頭上の樹木の枝、吹く風に揺すぶられ、その葉を撒き散らし、タッカの足元へと舞い降り続けていった。




