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幻林間〈9〉

「すでに40分経過してますよ」

タクト、山頂の岩場に腰掛け、口に焦りを含ませ言う。


「マシュが何度も滑落しかけたのが、ロスの原因だ」


一同、うつ伏せになり、呼吸を激しくするマシュに注目する。


「タクトより軟弱振りを見せてどうするのだ?」と、ニケメズロはマシュの上半身を背後から掴もうとする。


――手を出すな!

タッカ、瞬時に罵声。


「時間がない!ただちに下山するぞ」


――待て、タッカ。この、景色違和感を覚えないか?


ニケメズロの言葉に、タッカは、山頂より、風景を確認する


「ニケメズロ、撮影機はあるか?」

「ああ、こいつだ」


シャッターを切る音、と、吹く風が交わり、空高く舞う。



まるで消滅したような、地形に其処にいる一行は、息を呑む。


――何が起きたのでしょうか?


――抉られるように陥没してるのは、何が考えられる?


――……。命が犠牲なった事態の後……でしょうか?


「その通りだよ、タクト」

タッカ、鋭い眼差しをタクトに向け、言葉、威圧感を含ませる。


僕らは、更にこの先を駆けるのですよ。そんな中を子供達を守りぬけるのでしょうか?


おまえが挫ければ、子供達の未来はない!


―――。だから、僕にバースさんは、冷たくなった?


それだけではない!バースはおまえ自身に強くなって欲しいと願った。それを俺は引き受けた!


つまり、あなたが僕を鍛え上げると?


ああ!


双方、来た山肌に剥き出す岩場に着地する。


「俺は、バースとは違う。此処で、その返答を示すのだ!」



――――臨むところですっ!――――


タクト、険相して、飛翔する。空中で身体を前方より旋回させ、下降すると、次の岩場に着地する。


1つ、ふたつ、みっつ。双方、息を吐かず状態でその行動を繰り返す。


「見えてきたぞ!」


山のふもとに小路表れ、其処にめがけ、地に足を着ける。



おいていくなぁーあ!


「……。情けない声を出すな――」


仰ぐ視線の先、マシュ、身体を震わせ、一行を見下ろす姿。


「あと、少しですよ?もうちょっと踏ん張ってもらえませんか」


俺は“闘いの力”は、なーいっ!


「どういうことですか?」

タクト、タッカに訊く。

「使うことがなかっただけだ。列車の運転技士として、軍に入った〈停戦〉になって、兵士を運ぶなんて、なかったのも、一原因だ」


「――。あの人、それでも〈軍人〉として、在籍してるのでしょ?」


とにかく、降りてこいっ!


うーっ。


唸っても時間の無駄だ。さっさと飛んでこーいっ、引きこもりキノコッ!


ニケメズロ。今、なんて、言ったぁあっ!


「おまえの名前、キノコっぽいじゃないか!」


「マシュ。マッシュルーム………」


あーっ?タクトまでかーっ!あったまにきた。待ってろ!今すぐ――――」


――おまえたちを――――!


「あっ!」と、一行、マシュの行動に呆気に囚われる。


ほぼ、直滑降のマシュに「ニケメズロッ!奴の真下にエアーマットを敷け」と、タッカは、叫ぶ。


ニケメズロ、掌に納まる筒を腰に装着する銃とともに取りだし、地面に向けて、発射させる。


マシュ、身体を上下に揺らし、マットに沈む。


「……。完全に、タイムリミットです」


一同、落胆。


連帯責任は、避けられないぞ?マシュ


どんな、ペナルティが課せられるのでしょうかね?マシュさん。


隊長のことだから、相当過酷なものを提示するはずだ、マシュ。


「………。結局俺のせいだろ?」


気のせいだ、マシュ。



――マシュハ、バースにマッシュぐに詫びる。


タッカ、帰り道、ひたすらマシュの名を含ませ、言葉を紡いでいった。

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