幻林間〈8〉―タッカ―
バース――。あいつとは幾度となく、張り合ってた。
〈闘い〉なら、俺の方が、いくらでも、策略は浮かべたし〈女〉については、落とし方だって お手の物だった。
それを尽く、奴が覆していった。
〈陽光隊〉として、俺を護衛任務に引き込んだ。
相手は子供。現地に護送させるだけなら、俺の役割はないに等しかった。
結成時に対面したタクトに、正直にいえば、愕然としたものだ。
〈軍人〉には向かない、性質。風が少しでも吹けば、転がっていく。案の定、今回の任務では、足を引っ張るようなことばかりをやらかしていった。
―――俺に、こいつを仕込めと、奴が頼んだ。
奴の考え方が、丸っきり 掴めない――――。
待ってくれーっ!
山頂を彼等が目指すの中、マシュの叫びが木霊する。
「日頃のツケが来てるのだ。自力でなんとかしろっ!」
うわっ!
タッカ、足を掛ける岩を押し、体勢を崩す。
掌に掴む感触覚え、顔をあげる。
「この、バカ!人の世話する暇があるなら、前を進んで行け」
〈戦〉ではそんな、余裕なんてない。と、あなただったら、言いそうですね?
足場に停まるタクト、額に汗を滴らせ、タッカを引き揚げる。
「誰の受け売りだ?」
タッカ、姿勢をただし、タクトよりその手を振り払う。
「味方の中にも《敵》は、いる。僕は今、その事を確かめている最中です」
「其れが、俺だと、言うのだな?」
――さあ、どうでしょうかね?
挑発しやがった。あの〈目〉は、見覚えがある。
――たかが子供と、侮るな!
タクトに異議を咬ました時、バースは、そう、返答した。
タクトに誰かが被ると、錯覚を起こすのは、やはり、バースの存在がある。
今の、あいつはおそらく、真似事だろう。だが〈軍人〉としての〈実戦〉の経験は、ない。
いいのか?バース。俺はこいつを俺なりの仕込み方をする。そうなれば―――。
―――いつの日か、タクトはおまえと、何かの形で対峙する――――。
先に山頂に着くタクト。直立不動の姿勢をして、広がる風景を見下ろす。
タッカ、その後ろ姿を、ひたすら凝視していった。




