幻林間〈5〉
――タクトお兄ちゃんは?
こぞって、チビッ子連中が訊きに来る。
連れる、子供達は16名。学童期はコータを筆頭に11名。5名が、幼児期である。
こいつらは、親を恋しがる素振りを見せない。躾られたのか、訓練を承けたのかは、定かではない。
〈親代わり〉とも、言える、子供達への接し方。
――タクト、おまえの〈美点〉だ。
気になるなら、見に来ればいいだろう?
「意外と、忙しいのだよ」
『タクト抜きでの、子供達の世話に、か?』
言葉に棘があるぞ。
気のせいだ、バース。
「女子の風呂はそっちで頼む」
『――未就学児はどうするのだ?』
スミマセン、宜しくお願いします。
『ロウスへの治療法はなんとか、見つける事が出来た。後2日程で全快する筈だ』
高熱の原因は、何だったのだ?
根絶してた〈病原菌〉だ。
「――――。俺達も、感染してる可能性はあるのか?」
『安心しろ。例え、感染していても、発病迄には至らない。免疫として、身体が受ける。ただし――』
ロウスのように“力”が殆どない者にとっては〈毒〉だ。“力”には〈細菌〉或いは〈微生物〉に対する《抵抗力》も、備えている。
『だが、油断は出来ない。身体的に未発達な子供達に、ロウスのような症状が出ないとは、言えぬ』
「〈隔離〉しか、ないのだな?」
『自然の空気を吸わせる。それだけでも《抵抗力》は付く』
「ご苦労だ。衛生車両以外、子供達の立ち入り禁止と、全車両の消毒を施すのだ」
バース、アルマとの通信を終了させ「はぁ!あっぶねぇ」と、険相しつつ、息を大きく吐く。
――カイ、おぬしは何処でそんなことを覚えたのだ?
子供の入浴の世話の最中、アルマは険相する。
ふかふか――。
…………。肩まで浸かって、10数えたらさっさと上がれ!
「バース、話とは、何だ?」
子供達が寝静まるテントの外。月明かりの下で 、タッカは、バースにそう、訊く。
「頼み事だ」
―――タッカ、タクトを鍛えあげてくれ―――。
夜風、双方の頬をかすめ、空に反る。




