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風は紡ぐ

――何だ?やたらと真っ白だな。


足元、綿毛の感触。


――俺、何をしてたっけ?


思考、ひたすら掻き分ける。


――げっ!アルマ、泣いてるのか?


空間に、嗚咽が響き渡る。


――あーっ!それ以上は勘弁してくれ。


今、そっちに行くから、あれ、飛ばさないでくれっ!


視野、薄紅の光。


―――バース……バース!


「判ったから、泣くな」


大馬鹿野郎!


仰向けで、バース、嗚咽するアルマを包み込み、柔らかな髪を手串する。


俺、どうなってた?


危うく〈花畑〉にいくところだったのは、覚えてないか?


「あれ、その、入り口だったのか」


その服とってくれ。


待って、もう少し、このままで――。


バース、アルマの素肌の感触を、全身で確め、更に深く結び合う。



ため息。それは、バース。


「バース、おまえは自身の“力”を浴びて、倒れた」


「〈卵〉を取り出したときにだった。まさか、そんなモノとは、ザンルも知らなくて、当たり前だ」


“力”に対して防御反応をさせる。生き物の中には、そうやって外敵から身を守るのも、いる。


「どれ、起きるぞ」

アルマの頬に唇を乗せ、するりと、ベッドより降りると、軍服に袖を通し、ベルトを締める。


「〈扉〉をくぐり抜けたら、異なった世界か?」

アルマ、肌を露にしたまま、バースの背中より、両腕を挟める。


「おまえが、俺に訊いてどうする?」


「だから、私は知らないと、この前から言ってる!」




〈軍〉の任務より、骨が折れそうなのは、確かだ。


先はあるが、其処まで辿り着くに、このような事態は必ず発生するだろう。




「バース、外を見てみろ」


バース、アルマの視線の先を目で追う。


「《闇》が消えていってる?」



唖然。



――――。


アルマ、何を深刻な顔をしてる?


いや、何でもない。ただ《闇》を振り払う“光”が――――。


―――懐かしさを含んでる。



「その“光”の持ち主、俺達が来るが判ったのだろう」



―――母上――――。


大地に“光”穏やかに注ぎ込み、潤う。


風が空に、絹糸のしなやか混ぜ、雲を紡いでいった。

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