ソラノハジマリ〈3〉
隊員一同“光”の輪を被り、堅坑口を深く進んでいく。
カツカツ、カンカン。と、つるはしが固い岩盤を叩く音が響き渡る。
――まだ〈石炭〉を掘り進む《炭坑夫》て、いう者がいるのか?
――炭坑そのものは、丁度、1600年前に、閉山されている。
――その、後は?
――更に深い岩盤を、学者が調査した。其処に《闇》が封印されていた。
――それ、を開けたのか?
――いや、空っぽだった。
「さっきの〈音〉は奴等の魂が鳴らしていた」
岩肌を踏みしめる感触を覚えつつ、バースはニヤリと歯をロウスに見せる。
「―――。バース、俺はその手は信じない質だと、以前に言ったはずだ」
「初耳だ」
「炭坑て、灯がないと、真っ暗ですよね?」
タクト、怪訝な面持ちで、バースに訊ねる。
「―――。アルマを指名した理由が判った」
だから、私は知らないと、さっきも言ったはずだ。
薄紅の粒《闇》を照らし、彼等に“光”をあたえる。
「何、震えてるのだ?」
「この、穴を入り込んだ瞬間、何故か感情が剥けてしまって、どうすることも、できない」
とても、哀しい。何かに、すがり付くような〈思念〉が、この場所に、充満してる。
―――怖い。
「アルマ?」
バース、手を伸ばし、アルマを包む。
―――バース、助けて―――――。
バース、記憶を検索し、アルマの思い出に、入り込む。
パンっと、膨れる固体が弾け飛ぶ感覚。うっすらと霧の視界に、目を凝らす。
――――アルマ――――ッ!!!
―――怖い、怖い………。バース、バース、バース―――――。
―――大丈夫だ!傷は浅い。しっかりしろっ!
頼む、こいつを消さないでくれ―――――――!
白昼夢、錯覚。
「嫌なもんを何で、こんな時に、おもいだすんだよ?」
バース?
「ついでに〈あの時〉のおまえがくっついて来やがった。か?」
〈あの時〉とは…………なん、のこと?
「言い方ややこしいが、五年後のおまえの〈過去〉だよ」
あなた、誰?
「五年後の〈俺〉だ」
―――――――――!!!
「バース、嫌っ!」
―――行かないで―――――。
その、言葉を吐くと同時に、アルマ、頬を濡らしバースの腕の中で、脱力する。
薄紅の粒、更に大量に散りばめられる。
瞬き、失せることなく、ひたすら闇の空間に漂いとめず。
「――あんたも、人の親だろう?よくも、くだらないもので、こいつの〈体質〉を 利用したな!」
―――必要なのだ。この、空間にさ迷う【国】の民の魂を〈ソラ〉に導く為にだ。
「【国】で罪を犯した〈民〉の流刑所が、この、遺跡だった。そいつらの〈思念〉は堅坑する、場所より深いここへと、溜め込まれた」
―――【国】に対する望郷を懐いてた。それも、事実だ。
〈逆恨み〉の連中の願いを叶える為に、あんたは、あれこれと、利用したのかよ?
「言葉では、すべてが貴様にとっては、都合がいい解釈になるばかりだ」
「【国】は何だよ!【それ】があったから〈今〉が輝けてるんだ」
「其処までして、私を否定するのか!」
「あんたが、変わっただけだ!」
――――アルマ、起きろ!
バース、身体を橙色に輝かせ、その“光”アルマに含ませる。
「―――。また、助けられてしまったみたいだ」
「約束、したはずだ」
そんな、顔をするな 。
もう、あんな思いはしたくない。
判ったから、その腕を解せ………。
アルマ、バースより放たれ、立ち上がり、直立姿勢となる。
「私に何をさせたいのだ?」
――あなたの目的を、ここにいる者たちに開示するのだ。
「おまえは〈母親〉が未だに帰れぬ、理由を知りたいとも、おもわないのか!」
「《闇》の“力”を借りてまで、母上は帰郷は絶対しない!」
私が、道標になる!その前に――――!
「この《鍵》で、その《闇》を、吹き飛ばすっ!」
――――アルマ、止すのだ。母を連れ戻す為の道が……………―――――。
―――――父上!
アルマ、右手に《鍵》の“光”の形させ、その者にめがけ、貫かせていった。