ソラノハジマリ〈1〉
「アニキ」
「どうした?バンド」
「《あれ》から、こんなもんが送られてきた」
くすんだ、模造紙の封書を開くと、其処から黒煙が吹き出し、文字と形を変えていく。
――センダ坑遺跡に向かえ。連れてくるのは―――。
バース、険相し、更に拳 を振り上げ〈煙〉を掻き消す。
「ふざけるな!ハゲ茶瓶め」
手に残る空の封書を片手で握りしめ、列車の通路に叩き付ける。
「どうする?アニキ」
「出来るわけ、ないだろ!」
俺一人で決着つけてやるっ!
「 いい加減に、してください!」
タクト、其処をどけっ!
連れてくるのは一人だけ、何て、書いてませんでしたよ!
「僕も、ついて行きます!」
「おまえ、自分でもろ、やつの仕打ち喰らって何を寝ぼけた事をぶっかますのか!」
「だから、です。それに、また、バースさんがいなくなったら――」
――誰が、アルマさんのこと、守るのですか?
「………そっちかよ?」
「〈あれ〉がアルマさんを、指した理由が分かりません」
バンド、おまえも付いてこい。俺とタクトでアルマを守る。おまえは――――。
――何かあったら、目にして、耳に入れた全てを、連中に伝えろっ!
―――俺、その役目は出来ない。
バンド、息を大きく吐くと、バースを凝視する。
全員で〈其処〉に行く。だったら、文句何て、言えないだろう?
「好きにしろっ!」
バース、翻し、そのまま通路を駆けていく。
タクトと、バンド。同時にため息を、大きくさせる。
「随分、荒れてるな」
「焦ってるとも、言います。ね?」
まだ【国】に辿り着く為の手がかりも、結局は掴めてない。だったよな?
ずっと〈僕〉と〈子供〉が《鍵》そのものだと、確信されていましたからね。
「朝飯、食っとくぞ」
「そうですね」
双方頷き、食堂車へと、靴を鳴らす。
バースは、うっすらと陽が昇る、東の山のふもとを、風が吹き込む草原の隙間から見つめていた。
「探したぞ。黙って、一人、列車を降りて、どうしたのだ?」
背中を丸めて腰をおろす、バースに、草葉を踏みしめながら、アルマが歩み寄ってきた。
「わざわざ、来るな」
「心配して、何が悪い?」
ざわり、ざわり。風が草原を掻き分ける。
「俺、タクトと、同類か?」
「世話が妬けるのは、おまえだ。バース」
沈黙。
「此処で踏み止まってても【国】は目指せない。まずは〈あの方〉の《闇》を振り払う。其処に重点を向けたら、どうだ?」
バース、朝陽を浴びて瞳、澄み切る。
「〈陽光隊〉その名の由来を、ぶちかましてやるぞ!」
心得た!
アルマ、草原の香りを口に含ませ、風にその言葉を乗せる。