チハココカラ〈3〉
――しくじった。
〈あの時〉と、同じく、しくじった。
俺、惨め。
タクト、俺が悪かった。おまえの夢潰すマネを結果的に、は、やっちまった。
――〈ヒメカ〉タクトには、あんたが必要だ。
声、聞いてるなら、来てやれよ。
ちっとぐらい、抱っこしてやれ。
「ちくしょう!」
バース”橙の光”を輝かせ、その者へと、駆けていく。
風圧を受け、身体後方に反るものの、瞬時に体勢整えて、更に突き進む。
「あいつがアンタに何をしたんだよ!」
「《血》を絶やす!それが《鍵》だと――」
―――〈闇〉が 告げた。
その者、バースに向けて、掌より黒色の“力”解き放つ。
―――――シ、ショ………ウ――――?
黒煙混じりの光景、バースの視野、遮る。
―――カ、ラ、ダニ、ナニヲ、スル、ノ、ダ、ヨ!
全身に、反物が締め付けられる、感触を覚える、バース。ひたすら、抵抗をする。
闇。その、空間に、星の瞬きに似た“粒”ひとつ。
温もり、なお、春の陽射し。
―――立ち上がって――――。
―――アンタ、誰ダよ?
―――あなたの“光”は何事にも恐れは抱かない。
―――全身、がんじからめ状態だ。
―――天と地を繋ぎ、風を吹かせる。それが、あなたの、使命。
―――俺に、指図するのか?
―――“陽の光”を使って――。
―――そいつで、この、真っ黒な視界、吹き飛ぶのか?
―――【ヒノサククニ】に伊吹を取り戻して――。
静寂。
――――バース!!!
その声に、バースの瞼、大きく開く。
閃光。
闇の視野、瞬時に眩しく。其処より、バース、直立不動の姿勢をとり、姿を現す。
「何を腑抜けになってた!おまえが、しゃんとしなければ、連中どもが、路頭に迷うだろうっ 」
目の前に、アルマ。その眼、涙で、濡らす。
「それは、大変失礼しました」
俺、何してた?
《闇》を喰らって気絶してただけだ!
タクト《そいつ》にやられた?
「ぐったぐたは、いいっ!いつもの頑丈さをさっさと、取り戻せっ!」
アルマの鋭い眼差しの先を追う。
「第二ラウンド開始のゴング無しか」
「ひとまず、リタイアしろっ!」
《あいつ》が必死で《闇》を阻止してくれた。
「《あいつ》なんて、言葉がわるいわね?」
「では《あんた》」
「きりがないわ。一度、列車に戻りましょう!」
鈴の音、つむじ風に乗り、奏でられる。
「みなさん、早く、一ヶ所に集まって!」
――タクト!
バース、微動しないタクトの身体を、アルマと抱き抱え、その声のもとに駆けつける。
“光”の帯、一同に巻きつき、地面より浮き上がる。
羽ばたく鳥の如く、その身体、更に天へと舞い“粒”を撒き散らし、消えていく。
「その方を急いで、列車の中へ!」
西の空、朱色。踏みしめる草、雨露で濡れ、その滴を足元に含ませる。
アルマ。あの、何処かの国の民族衣装っぽいを着込んだ《やつ》誰なんだ?
―――。事を引っ掻き回すのが特技だ。
どっちにしろ、顔見知りと、いう訳だな?
まずは、タクトを救ってやるのだ。それから《あれ》を問い詰めてやるっ!
救護室。タクト、ベッドの中で目を覚ます。
「気がつかれた見たいですね?ご気分はいかがですか」
僕〈花畑〉に、いるのですか?
ご安心してください。そのような場所では、ありませんよ。
「タクトを助けてくれたのは、感謝する。だが――」
我々の、業務妨害を起こした。その事に於ては、追求をさせてもらう!
「――。バース、私は、タクトの様子を見とく」
「ああ、任せろ。アルマ」
バースは女性を連れて、食堂車に向かった。
「タッカが目撃した。怪奇現象を、いや、列車を減速させたのが、あんただった」
無言。
「黙秘、か?それならば、言い方を変える」
―――あんた、何者なんだ?――――
バース、威圧的に、その言葉を口にする。