チハココカラ〈2〉
〈闘い〉その“力”は普段は使えないように《鍵》を掛けている。
任務中に使用したのは、知ってる限り、タクトだけだ。
まだ、だ。
あいつは〈実戦〉の経験がない。
させるつもりは、なかった。
元々、あいつを招いたのは、そんな目的じゃない。
――〈あいつ〉と、会わせたかった。護衛任務に便乗させて。
あと、一歩で、その手がかりが掴めそうだったのに、まさかのアクシデント。
事が穏便になかなか進めない。
苛つく。
どうして、こう、俺の周りは騒がしい事ばかりだろう?
――師匠よ。悪いが、俺の主張を通させて貰うぞ!
「一応訊く。アンタは《宝》を何の目的で利用するのだ!」
「〈阻止〉する為だ」
【サンレッド】は境界線。越すには《鍵》がいる。
〈あの時〉封じられた。
〈奴〉は、暗号のような言葉を残した。
―――《16》何を意味するのか、と、際悩まれたものだ―――。
「それを探らせる為に《罠》をわざと仕掛けた。護衛任務のどさくさ紛れに、アンタは実行した」
「ついでに、其処にいるロウスが何者かと、も明らかになっただろう?」
「偉そうに言うな!危うく、こいつに濡れ衣をおっかぶせるところだったんだ」
おまえ、ひと、よすぎる。
虫の声より小さい言葉。
振り向く先に、肩を震わす、ロウス。
「あんな、旨い飯作れるあんたが悪党紛いの事出来るわけないっ!」
「俺、は、居ていいのか?」
「いま、おまえの事ほじくる暇なんて、ない。それだけだ」
おまえらしい、な。
ロウス、眼鏡を外し、目頭を押さえる。
――残るは《血》幸運にも目の前にいる――。
その者、声色を低く、なおかつ、不気味に笑みを湛える。
直感。
その者の視線の先をバースは瞬時に追う。
「タッカッ!タクトに“力”をかぶせろっ」
タッカ、動かず。バースに憔悴の眼差し向ける。
「どうしたっ!さっさとしろ」
「すまないっ!あっちの方が上手だ。睨まれただけで、この、有り様だ」
身体、激しく、震わす。更に額に大量の汗滴らせる。それは、タッカ。
―――タクトッ!目を開けるのだっ!!!
アルマの叫び、天まで貫き、なお、大地を轟かせる。
―――ア、ルマ、さん。僕はいいから、バースさんの側に、い、て――――――。
嫌――――――!!!!!!!!
バースも、また、タクトに飛びつくように、その、身体を手繰り寄せる。
―――――逝くなっ!
―――バース、さん?
―――――――タクト――――――ッ!
絶叫するバースの腕の中、タクトの顔、青く冷める。
その、左脚の腱に、闇夜を思わせる、黒い粒子を放つ、矢が、羽を空に向け、斜めを含ませ、突き刺していた。