2話:至れり尽くせりだぜ!
「まず名前じゃが、変えるか?」
ステータスの説明を始めた神様だが、いきなり妙な事を言い出した。
「え?名前を変える?」
「そうじゃ。クラドールでは基本的に皆西洋人みたいな名前での。日本人のような名前はおらん。」
成る程。塔道矢太郎なんて名前は向こうでは浮く訳か。
20年付きあってきた名前で当然愛着もあるけど、心機一転新しい生活が始まるんだし、ここは思いきって変えてみるのもいいか。
「そうだな。折角だし新しい名前でスタートするよ。」
「そうか。して、何にするかの?わしが決めてもよいが?」
「例えば?」
「そうじゃの。アレクサンダーとかランスロットとかはどうじゃ?」
「自分で決めるわ。」
「そうか?かっこいいと思うんじゃが。」
どこの英雄だよ。
確かにかっこいいけど、こちとら元は一市民だからな。
もう少し控えめにいきたいところだ。
とは言っても何にするかな。
塔道矢太郎の面影は少し残したい気もするしなー。
塔道か。道、ロード、矢太郎、矢、アロー、アロウ。
よし!
「決めたよ!アロウ・ロードにする。」
多少安直な気もするけどまぁいいや。
それにロードって何かいいよな。
「ほう。道と矢でアロウ・ロードか。安直じゃな!」
「自分でも少し思ったよ!ほっといてくれ!」
「次の年齢はそのままじゃから飛ばしてその次、レベルじゃが、1じゃな。これは魔物などを倒すことによって上がっていき、それによってこの後で説明するパラメータが上昇したり新しいスキルを覚えたりするのじゃ。」
このあたりもまんまゲームみたいだ。
「最高は100じゃがお主は上限無しにしておいたから、頑張るんじゃぞ。」
さらっととんでもないこと言ったよ!
「次の種族じゃが、クラドールには人間の他にエルフ、ドワーフ、獣人、魔族など様々な種族がおっての。お主は人間じゃが変えるか?」
さすが異世界だな。
益々ファンタジーだぜ。
てか種族も変えれんのかよ!さすが神様、何でもありか。
しかし種族は変える気にならんな。
人間万歳!
「いや人間のままでいいよ。」
「まぁそうじゃろうの。ちなみにクラドールで一番多いのが人間じゃ。その他はだいたい同じ比率になっておる。まぁ久しく見ておらんから多少は変わっておるかもしれんがの。」
「へー。そういや種族による違いってあるの?見た目以外に。」
「あるぞ。エルフは人間に比べ魔法が得意じゃ。ドワーフは腕力が優れておる。獣人は身体能力が全体的に高く、魔族はあらゆる面で人間より能力が上じゃ。これは一般的な話じゃから、個々ではそう一概にも言えんがの。」
やはり種族ごとに特製があるようだ。
人間以外のほうが面白いかもしれないけど、流石にな。
異世界に行くだけでもびっくりなのに種族まで変わるとちょっとキツイ気がする。
「成る程ね。まーいいや。人間で頑張るよ。」
「了解じゃ。次に職業じゃが、今は便宜上異世界人となっておるが、これは向こうに行ったら好きに変えれるからの。戦士やら魔法使いやら色々あるからお主の好きなようにするとよい。詳しく説明するか?」
いわゆるジョブってやつか。
職業によって得られものなんかも変わってくるのかもしれない。
説明は聞いた方がいいんだろうが、全て知って行くっていうのもなぁ。
向こうでの楽しみにとっとくとするか。
「いや、いいよ。向こうに行けば嫌でもわかるだろうし。」
「ま、確かにそうじゃの。では次はお待ちかねのスキルじゃ!すごいのをつけてやったからの。」
「おお!流石神様!楽しみだぜ!」
「よし。まず一つ目は念動力じゃ。」
念動力というとサイコキネシスか?
手を使わずにものを動かしたりできるんだよな?
「この念動力はわし特製じゃからの。基本的に何でも思いのままに動かすことができる。」
ん?なんでもって?
「じゃあ例えばくそでかい岩とか?」
「そんなのは朝飯前じゃ。10tじゃろうが100tじゃろうが余裕じゃよ。まぁ多少練習はいるがの。あ、基本的にと言ったのは例えば地面続きになっておる山などは少し難しいのじゃ。そのへんも含めて後で教えてやるわい。」
これはすげー能力をもらったみたいだな!
練習の時が待ち遠しい。
「さて、次にいくぞ。次は見抜く目。あらゆるものを解析するわし特製の目じゃ。相手のステータスや武器、防具の性能。とにかく便利な目よ。どれ、ちょっと意識してわしを見てみよ。」
俺は言われるがまま集中して神様を見た。
名前:地球神
年齢:不明
レベル:不明
種族:神
スキル:不明
HP:不明
筋力:不明
体力:不明
敏捷:不明
魅力:50
運:不明
いや、何もわかんねーよ!
神様っ名前が地球神っていうの?
しかし何故魅力だけ見えてしかも50?
俺より低くね?
「どうじゃ?不明ばかりじゃろう?なんせわしは神じゃからな!わしを見抜ける者はおらん!」
ドヤ顔で威張ってるよ。
じゃあなんで見ろって言ったんだよ!
てか魅力については触れた方がいいのか?
…触れないでおくか。
「っとまぁ冗談はこれくらいにして、今のように対象を注視することで解析ができるからの。わし特製の目じゃから恐らくクラドールで見抜けぬものはないじゃろう。」
冗談だったのか。
でも魅力は… まぁいいか。
「そしてスキルの最後はアイテム倉庫じゃ。だいたい想像はつくと思うが、物を収納することができる異空間じゃよ。しまいたい物に触れて少し念じればよい。異空間は時間が止まっておるから、食べ物などの腐る心配はない。取り出すときは同じように念じればでてくるからの。因みに生物は収納できんからの。」
「おおー、便利だな!いくらでもしまえるの?」
「うむ。容量は無限になっておる。前2つのスキルもそうじゃが、クラドールにも似たようなスキルはあるのじゃ。しかし、どれもわし特製のに比べると足元にも及ばん性能での。アイテム倉庫も時間経過あり、容量制限ありが普通じゃ。」
ほー。流石が神様特製だな。
どれもこれもかなり便利で強力なようだ。
「最後はパラメータじゃな。因みに基本的な人間の成人男性の平均はHPが50で他が10から15じゃ。魅力と運は人によってかなりばらつきがあるが、高くても20くらいかのう。」
「え?じゃあ俺超人?」
だって全部10倍近いし。
てか神様の魅力50も、かなり高かったんだな。
「まぁ超人とまではいかんが、まずそこらの者にやられることはないじゃろう。」
「魅力と運って具体的にはどういうこと?」
「まず魅力は高ければ高いほど人に好かれ安くなる。運はそのままじゃ。高いほどラッキーなことが起きるんじゃ。お主はどちらも100にしといたからの。モテモテのウハウハになれるかもしれんぞ?」
うおー!これはすげー!しかし顔はフツメンなんだが?
「顔は普通でも魅力が100もあれば補ってもお釣りがくるわい。」
バンザーイ!地球ではモテ期が一度もこなかったが、まさか異世界にその可能性があるとは。
胸が熱くなるぜ。
「さて、これで大体の説明は終わったが、何か質問はあるかの?転移してしまうと、簡単には交信できんからの。」
「簡単にはってことは、しようと思えばできるの?」
「可能じゃ。とは言ってもわしからせねばならんからの。わしも忙しいからできて月に一回くらいかのぅ。」
俺からは神様に連絡できないのか。
まぁそれ仕方ないよな。
すでに至れり尽くせりだし。
「そうかー。うーん。クラドールのこととか聞きたいことは色々あるけど、それは向こうについたら自分で知って行くよ。そっちの方が楽しいし。」
「ふむ。それもそうじゃの。よし、では念動力の練習をしたらお主を異世界クラドールに転移させるとしよう。」
3時間ほど神様に念動力について教わり、ほぼマスターできた。
しかし、これマジで便利すぎる。
あらゆる物を自分の思い通りに動かせるのだ。
神様がだしてくれた1000tの超巨大な岩も何の苦もなく動かせたし。
よし、これで準備は万端だな。
「矢太郎、いやもうアロウじゃったな。アロウよ。ついに異世界に送ることになるが、準備はよいか?」
「うん。神様色々ありがとう。」
「なーに、わしが好きでやったことよ。気にするでない。それとこれを持って行くがよい。」
そういうと神様が透明で七色に輝く指輪を渡してきた。
とんでもなく綺麗で思わず目を奪われる。
「これは?」
「これはゴッドリングと言っての、あらゆる状態異常、精神異常を防ぎ、ステータスも隠すわし特製の指輪じゃ。餞別じゃよ。」
これまた流石神様ともいうべきスーパーアイテムをくれた。
もう頭が上がりません。
「サンキュー!大切にするよ!」
「まあ核爆弾が落ちてもこわれんからの。安心せい。」
ずっと指にはめとくとしよう。
そういや、ひとつだけ、聞きたかったことがある。
「なあ神様。」
「なんじゃ?」
「俺が向こうの世界に行ったら、これをしてくれとか、逆にこれはするなとかあったりする?」
これが少し気になっていた。
実際この力があれば大体の事は出来ると思うし。
「なんじゃ、そんなことか。そんなものは何もないわい。最初に言ったが、クラドールは儂等神々が遊びで作った世界。まあ規模的にはそこそこ大きいがの。じゃから何も気にせず、好きに生きていいぞい。」
好きに生きていいって?
「わかった!好きに生きるよ!」
「うむ!では送るぞ。一応人目がない草原に送るからの。そこからはすべてアロウ次第じゃ。達者での!」
「ありがとう神様!」
神様が俺に手をかざすと、体が光に包まれた。