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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

オッサンとオッサンの朝

作者: 一ろと

壊れたと言うから貸しっぱなしの安物の腕時計がブランド物だと錯覚するほどの高級スーツを着こなして、髪をオールバックに整えて、


「じゃあ、行って来る。あ、今日は暑いから、やっぱり上は脱いでネクタイも少し緩めて行こうかな。それに俺、前髪上げるの好きじゃないんだよな。他社の人間に会うから仕方無くこの髪型にしたけど、オッサンくさいと思わねぇ?」


「いや、充分オッサンだろ。つーか、毎朝言ってるが、お前の足跡を見ろ」


モデルばりに決まってる男が朝の身支度をするために通った後には脱ぎ捨てた衣服が散乱している。


「ったく、出した服は仕舞って脱いだ服は洗濯機に入れろといつも言ってんだろエイジ」


怒りながらも毎朝拾って歩くこと数ヶ月。ハルカはエイジという男を拾ってから拾い運がついてしまった。


「悪いな、ハルカ」


二カッとイケメンスマイルを放つこの男は全く悪びれてはいない。


「お前な、こんなダラしねぇと歴代彼女達にも結構愛想つかされたりしたんじゃねぇの?」


「彼女達は皆、出来の悪い子供を叱るみたいな言い方で仕方ないわねぇって言って色々やってくれてたぜ」


「……心底、愛されてたんだなお前。アイツもそうだったよ」


愛する人の欠点すら愛おしくて、我知らず叱る言葉すら甘くなってしまう。


側に居るからこそ叱ったり叱られたり出来る幸せ。


「…んじゃあ、ハルカも俺のこと愛してるってことか。毎朝の叱り方に滲み出てるぜ」


「バカ言ってねぇでさっさと会社行けよ」


声をかけたことで玄関へと続く廊下で立往生する羽目になったエイジに背を向けて、視界の先に落ちている洗濯物を拾おうと屈み込んだら、背後からエイジが覆い被さってきて太く筋肉質の腕で両目を圧迫するように押さえ付けられた。後頭部に当たるガッシリとした肩。

急に降りかかってきた災いにも負けずに拾うという目標を成し遂げた左手には、今妙な技をかけてきてる奴の脱ぎたてパンツ。

よし、この生き物に対するオレの我慢は限界だ 、どうしてくれよう。

と思ったところでエイジが耳元に唇を押し当て、


「俺の前で、奥さんのこと思い出して泣きたくなっても我慢する癖、直して欲しいけど仕方ねぇなって思うぜ」


囁くから、洗って干してアイロンまでかけてやったシャツの腕を滲み出る塩辛い水滴で汚してしまった。


この後、新しいシャツを出して着せて、汚れたシャツを洗って干して、またアイロンをかけて。

唯一の救いはスーツを脱いでくれてたことだなと、ハルカはエイジの腕の中でぼんやりと考え、愛しい記憶と共に沸き起こった痛みが去るのを待った。



愛する妻を思い泣くオッサンと、泣いたオッサンを慰める為遅刻したオッサンの爽やかじゃ無い朝。



読んで下さってありがとうございます。


前回は評価、ありがとうございました。


書いてみたくなって書いてみたオッサン同士の友情以上恋人未満のお話を読んで下さって更には評価まで頂けるとは思いもせず、喜びに咽び泣いて、うっかり続きを書いてうっかり載せてしまいました。


文章って本当に難しいですね。


では、本当にありがとうございました。


「オッサンとオッサン」心の中では出会いとか色々と妄想してるので、もしまた見かけたらよろしくお願いします。


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