白銀狼さんからの試練です
目の前の光景に、声も出せず驚いていると、白銀狼がクロを鼻面でつつき出す。
一体、この状況はどういうことなのだろうか。
美紀の様子を見る限り、美紀も状況についていけてないようだ。
クロは、この状況をわかっているのか分からないが、白銀狼にじゃれついている。
2匹の触れ合いが終わったのか、クロがこちらに駆け寄ってくる。
白銀狼がこちらを視界に捕らえ、目の前でお座りの模様を見せる。
と、突如、
『お前が、小僧のパートナーか?』
脳内に響く声。
状況的に、誰が声を出しているかを考えるが、目の前の白銀狼しかいない。
小僧とは、私たちは女だしクロのことなのだろう。
よくわからないが、あっているので頷いておく。
『そうか。』
それだけを呟くと、クロの方を見る白銀狼。
何か会話があったのか、クロがワンワンと鳴く。
それに、白銀狼は頷き、
『試練を受ける気はあるか?』
試練とは何なのか。
よく分からないが、こちらと戦う気はないようだ。
質問しても大丈夫なのだろうか。
「えっと・・・。狼さん?質問してもいいですか?」
『ふむ。何を聞きたい?
そちらの小僧からの話でわからぬことでもあったのか?』
少し、目を見開いて返答をしてくれる。
この白銀狼の話を聞く限り、クロと会話をしているものと思っているようだ。
「いえ・・・。クロとは会話できていませんので。
できれば最初から説明していただけると助かります。」
戦っても勝てる気はしないので、怒らせないようにしておく。
白銀狼は、何か納得したようで頷き、説明をしてくれる。
『ふむ、それでは説明をしておこうか。
私は、フェンリルという。
調教師が新たに生まれる時、眷族が選ばれた場合、その調教師に試練を与え、加護を与えるのが役目だ。
その辺のことは聞いておろう?
試練の内容だが、簡単なことだ。
あそこに、森が見えるだろう?そこのボスを討伐するだけだ。
他に聞きたいことはあるか?』
説明を受けるが、ますます頭が混乱してくる。
ひとまず、整理する。
この白銀狼はフェンリルさんという。
新しく調教師になった人が、眷属、つまり狼の子をパートナーにした場合、その人の下に出向き、試練を与え、達成したら加護を与えるのが仕事である。
フェンリルさんの口調からして、恐らくティムさんが話さないといけないのだろうが聞いていない。
試練の内容は、【迷いの森】、この第1ステージのボスを討伐するのが達成条件である。
こんなもんでいいだろうか。
受けるとしてもまず聞きたいのは、
「試練を受けるにあたって、期限とか条件はありますか・・・?」
「ないぞ。自分のペースで達成すればいい。」
とのこと。
期限はない。
街を移動するにしても、ステージ毎のボスを倒さなくては進めないようになっている。
いずれ、迷いの森のボスも討伐する必要が出てくる。
それならば、一緒に受けてしまえばいいのではないか。
「わかりました。試練を受けます。」
まだ、驚いてはいるが、試練を受けることにした理沙であった。




