調教師への道その5
まずは餌を用意することにする。
この草原にいる子供たちが食べているのはティムさん特性のフードと牛乳らしい。
それらを貰い受け、子犬の所に向かう。
子犬の所まで後50歩もない、という場所で、子犬はグルルと唸り声をあげ始めた。
威嚇しているようだ。
懸命に毛を逆立てて、自分を大きく見せようとしている
しかし、その様子は子供であるためか迫力はない。
むしろ可愛らしくて微笑ましくもあった。
ここで無視して近づいてもいいが、ここは信頼関係を得るのが優先である。
子犬のために近づくのはやめて、餌を置き一旦離れ、子犬の反応を見ることにした。
遠ざかっていく私を子犬が眺めているのがわかる。
私が十分に餌から離れた後でも警戒してこちらにこようとはしない。
5分くらい様子見をみるが未だに警戒を解こうとしない。
さすがに駄目だったかなと諦めていたが、漸く子犬は餌に近づき匂いを嗅ぎだした。
(これで第一関門は突破かな?でもここからどう近づこうかな~。)
思案から戻ると、子犬は餌を食べているところであった。
微笑ましく様子を見守っていると、餌を食べ終えた子犬は、こちらに近づきまた唸り声をあげる。
(ん~唸れば餌が貰えると思っちゃったかな?ここはちょっと躾けるべきなのか・・・)
子犬は、唸っているのに餌をくれないことに気づいたのか首を傾げ始めた。
可愛いと思いながらも、ここは思い切って近づいてみることにする。
子犬はビクッと反応を示すが逃げはしなかった。
むしろ、威嚇してこちらを迎撃するかのような態勢をとる。
(確か犬を慣れさせるには・・・)
子犬に近づき、子犬を抱き寄せる。
子犬は、突然の出来事で驚いて固まってしまったようだ。
その状態を見逃さず撫でる。可愛がるように撫でる。
本心では、やっと触れたことによる興奮をひたすら隠して、子犬が気持ちよくなるように撫でる。
子犬が警戒を解くまで、ずっと撫でてやろうと考えながら撫でることに没頭したのだった。
あれからどのくらい撫でまくったのだろう。
ハッと気がついたときには、子犬は大人しくなっており、心なしか恐怖の色が瞳に映っている。
尻尾にいたっては股を通ってお腹を隠すようにしている。
確実に、こちらを恐れていることがわかった。
(やりすぎた!!あ~どうしよう。)
そう思うが後の祭りである。
なんとか機嫌を取ろうと考え、残りの特性フードを与えてみる。
恐怖を宿らせた瞳でこっちを見ながらもチラッチラッと特性フードを見ているのがわかる。
特性フードを手に乗せ、子犬の前に持っていくと我慢できなくなったのであろう。
少しずつ食べ始めてくれた。
子犬が食べ終え、横で毛繕いを始めたので、この子のステータスを確認することにする。
「【ステータス確認】。」
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種族:フォレストウルフ ◎
名前:なし
LV:1
HP:20/20
MP;5/5
STM:115:115
STR:11
DEF:8
INT:4
MR :4
QUI:13
DEX:5
SKILL:噛み付き 引っ掻き
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(えっと、つまり、この子と信頼関係を結べたってことかな?
よかった~。やり過ぎて嫌われたかと思った・・・。
というかこの子、狼だったんだ・・・子犬かと思ってた、ごめんね。)
後は【テイム】を唱えるだけである。
だが、パートナーとなったのだ。
折角だから聞いてみたい。
「それじゃ、一緒に来てくれる?」
それに対し、子狼は少し首を傾げたが、意味は理解したのだろう。
首を縦にし、尻尾をぶんぶんさせだした。
「ありがとう!それじゃぁ【テイム】!」
唱えたら何かが起こるのだろうかと思っていたが、何の変化も起こらない。
だが、目の前の子狼がワンと鳴くと共に、目の前に半透明のウィンドウが現れる。
【フォレストウルフが調教モンスターとなりました。
ステータスの方で確認できます。
名前を付けてください。
スキル:リリース、指示、協力を得ました。】
スキルが開放されたようだ。
これも調教師のスキルなのだろう。
横で子狼は尻尾を振って、自分の指示を待っているようだ。
「名前か~・・・。この子の名前・・・。
黒いからクロは単純すぎるか。」
すると、子狼の身体が光り始める。
突然のことに驚き、呆然としていると光は少しずつ収まってきた。
その場にいたのは、少しだけ体が大きくなった子狼。
その子狼の上に、HPとMPのバーが見える。
そして、二つのバーの隣にはクロという名前がついているのも確認できた。
「もしかして・・・さっきの呟きが適用されちゃった?」
その呟きを理解したのかはわからないが子狼、クロがワンと一声鳴く。
決まってしまったものはしょうがないか、と思いクロを両手で持ち上げる。
ティムさんに報告するために、クロを抱きしめ、部屋の入口に向かうことにした。
ネーミングセンスは本当にないです。
期待しないでください・・・。




