オープニング
巨大に聳え立つ塔。その塔を目の前に一人の男がいた。
その男の格好は、鈍く光る黒色の鎧を装着し背中には大きな剣を背負っていた。
男は塔に向け歩みだす。
中には様々な仕掛けがあった。しかし、男は障害などものともせず突き進む。
やがて、男は一つの扉の前に到達した。
その扉は煌びやかな装飾などは一切ないが、容易に開けることを拒むかのような術式が組まれていた。
男が手を翳す。
すると、扉は音もなく消え、部屋の中が見渡せるようになった。
その部屋は今までの様子と違った。まずは大広間のようになっていた。
そしてその中央にはこの塔の主であろう存在がいた。
全長として数十メートルはあろう巨体、真紅という表現がピッタリの鱗、こちらを捉える黄金色の瞳、巨木の幹以上に太く棘の生えた尾。
その主は”ドラゴン”であった。
男が部屋に入った途端、消えていた扉が再び現れ、部屋に閉じ込められた。
『汝は何を望む?』
短く、簡潔な問い。少しの沈黙が場を支配する。
「」
男の口が開くが、その言葉は出てこない。しかし、
『よかろう。ならばその力を見せてみるがいい。』
ドラゴンにはなにかが伝わったようだ。
そして男は剣を、ドラゴンは爪を振りかざし
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そこでこのCMは途切れた。
「意外とリアルに作りこんであるんだねぇ」
と一人呟く少女。彼女の名前は「周藤 理沙」。
今のはVRMMOの一つ【Fantasy Of Grace】通称FOGのCMである。
よく見るようなCMであるがこのゲームを友達に誘われたので一度見てみることにしたのだ。
「これは自分も楽しめるかな?」
そう呟き公式HPを覗いてみることにした。
「ふ~ん?職業って色々あるんだねぇ~」
あれから公式HPを見て世界観などを見ていた。
そして今目に付いているのは職業である。
剣士、戦士、騎士といった前衛職や弓使い、魔法使い、銃士といった後衛職。
特殊職業として琴使い(ハーピスト)・召喚士・宝探士といった職や錬金術師、鍛冶師といった生産職。
主にこの4つのジャンルでわけられていた。
その中で理沙が注目したのは
「ん!?特殊職業調教師!?これはチャンス有りってことかな!?」
特殊職業欄に記載されていた調教師という職業であった。
説明欄には
【動物を使役し、戦わせ共に成長していく。】
と書かれているだけ。しかし、それだけでも理沙にとっては価値の有る説明だったのだろう。
「これで動物と触れ合える!よっし!参加決定!!」
上機嫌で即決の判断をくだす。職業を決め、ゲームに対する期待を膨らまし、HP内に記載されたオープンの日時を確認する。
記載された日付は今日から3日後である。
「このゲームが始まったら絶対動物モフモフするんだ~」
一人決意し、明日友達に参加することを伝えようと考える理沙であった。
2月7日
2話を1話にまとめました