幸せって
ふーっと息を吐く。
「幸せって何だろう」
僕の白い吐息が流れていく様子を見ながら呟いた。
人に愛される事だろうか
お金を稼ぐ事だろうか
他人と談笑することだろうか
薄暗い階段を、一歩一歩確かめるように登ってゆく。
「幸せって何だろう」
階の途中で足を止め、呟いた。
自分の好きな事に打ち込む事だろうか
人を好きになる事だろうか
美味しいものを食べる事だろうか
4Fと書かれた明かりが、薄暗く点灯している。
僕の呟きに反応する人は居ない。
再び僕は階段を登り始める。
「幸せって何だろう」
そう考える事も幸せに入るのかもしれない
けど
屋上の扉を開け、町の風景を見た。
「どれも叶えられなかった僕はどうなんだ」
フェンスを乗り越え、真下を見る。
辺りは漆黒の闇で覆われていた。
そして僕は両手を広げ、飛び降りた。
この綺麗な景色と闇と濁った僕の思いを抱えて飛び降りた。
頭と足が逆さになって、僕は落ちてゆく。
「あはははははしあわせだああああああ」
どんどん落ちるのが速くなる。
眼に飛び込んだ満天の星空は一瞬で真っ赤に染まった。
最後の瞬間まで僕は惨めな思いで満たされていた。