Self Produce
セルフ プロデュース
例えて言うとするならば………うん、今日はお花見日和ですなぁー♪ 的な、所謂ところのぽかぽか陽気。桜の花はその色を変えて葉桜へとまっしぐらな頃ではあるのだけれど、そのまんまそのとおりの青い空な青空の下、僕は端から見れば何の変哲も特徴もない動きで地面やら何やらを踏み進んでいた。
………のかどうかは実のところよく覚えていない。パニックまで残り数ミリくらいの空気を醸し出していたかもしれないし、何を考えているのか判らないと評判の僕でいたかもしれない。ま、どちらにしてもそれを気に留めた人はいないだろうけれど、ね。だってさ、隣に住む人さえ知らないような世の中なんだし。って、自分自身がどんな感じだったのかすら覚えていない僕が言うのも変な話しだな。
ま、兎にも角にも電話にて呼び出しを喰らった僕は、その青天の霹靂に面食らっていた。例え平静を装えていたとしてもその内側は裏腹に。端から見ればたぶん意外にもかなり激しく。詰まるところ僕は、焦燥していた。教えられた目的地に近づけば近づく程に、それは皮肉にも色めき立って増量。そして、目的地の外観が視界にキャスティングされる頃にはもう、背伸びをしなくても天辺に手が届く辺りにまで到達していた。
の、だけれど。
実のところそれだけではなかった。まだ先があった。その僅か数十分後にはそんな心持ちさえ軽く凌駕していたし、更にはその形態を著しく変えてしまう瞬間にも遭遇した。それは、教えられた病室のドアをコンコンと鳴らして自ら来訪を告げ、どんな表情をすればイイのか判らないまま入室した直後の事。それまで考えていた何もかもや、決して少なくはない程度くらいは持っていた覚悟ってヤツが吹き飛んで暫し硬直し、戦慄さえ覚えてしまう事態に陥ったのだ。
………えっ?!
「な、そん、ば、う………」瞬間的に、反射的に、僕は我が目を疑った。視界に映る何気ない風景にポツンとキャスティングされていたのは、想像していた女性とはあまりにもかけ離れた姿形をしていたからだ。視線の先にある視界に映るその姿形を説明不十分すぎる程度で伝聞されていたので受け止めきれず、僕の心を脳を身体を鋭く抉ってくる攻撃力若しくは破壊力をモロに浴びてしまい、血の気がスーッとどこまでもひいていくような感覚に襲われる。
「えっと………」しかし、とにかく平静を装おわねばという考えが現実逃避しかけた僕を揺すり起こしてくれたので、兎に角ただただまずは落ち着けと自身に念じた。懸命に念じた。何度も何度も念じた。
「よ、よっす!」笑顔で元気良くという事を心掛けたつもり。ま、上手く出来たのかどうかは定かではないのだけれど。だって、それはそうだろう。焦燥を越えて愕然を登り終え、ガチガチに硬直している状態にいるのだから。
「久しぶり、だな」故に、モチベーションを維持しきれず尻切れトンボとなっていく。それでもなんとか、本当になんとか凡庸な言葉を搾り出す。時間で言うなら見慣れたと表現すべきで、時期で言うなら見覚えのあると表現すべきなのに、実際にこの現実という事実にこのようにして立ち会ってみるとはじめましてと表現しなければならないのではと思ってしまうような光景が、僕の視線の先にある視界で脳を、心を、身体を、詰まるところ僕という僕の何もかもをどれもこれもをあらゆる全てを、それこそアッと言う間に支配している。
「………」故に、次の言葉が見当たらない。作り出せない。描けない。唖然、茫然、どちらも当てはまる。立ち直れない予感もする。ざわざわとした痺れが身体中を這いずり回っている。辛うじて声は出せたのだけれどそれ以降、再びピクリとも動けない。動かない。動かせない。もしかしたら、呼吸する事さえ忘れていたかもしれない。更に言えば、鼓動するという事さえすっかり滞っていたかもしれない。
「えっ、と………」しかし、僕という個体の内側にある中身ではたしかに、様々な思考や感情のあれやこれやがそれぞれに、激しくも身勝手な自己主張を続けている。自身の内情を知る自分が客観的に自分自身を総括するならば、少し乱暴ではあるものの何もかもをひっくるめて、『想像していた展開への覚悟しかしていなかったのに、予期せぬ事への理解を必要とする事態に接して困窮』と、纏めてしまうのが妥当といった感じかもしれない。予想、予測、推察、推測………それらを試みる余裕なんて何処にもない。頭の中で描ける事態を遥かに超えている光景が、表面上では無機質に、心情的には無遠慮に、まるで全ての始まりの始まりから決定していたかのように、確定事項として組み込まれていたかの如く、僕の眼前に表れたのだ。
「………」僕は今この時に至ってこの現実に対応する事が出来ず、そうであるが故に真っ逆さまに脱落しかけている。しかし、脱落しようが脱落しまいがこのステージから抹消されはしない。リタイアやリセットも用意されていない。否応なくその状態での参加を余儀なくされるだけだ。一歩でも入ってしまったならばそのステージが現在であり、現状であり、現実となる………それが生きている者の宿命なのだ。運命なのだ。
「「………」」
音のしない時間が続く。
「………」それは僅かだったかもしれない。もしかしたらそれなりにだったかもしれないし、或いは永遠を想起するくらいだったかもしれないのだけれど、兎にも角にも酷く重苦しい何かを背負い込んでいるかのような静粛。体感する余裕がなかったので定かではないのだけれど、何一つざわめかない空気を振動させたのは………。
「来てくれたですか」
僕を見据えているのか、それとも見つめているのか、或いは続く言葉に期待を込めつつ待っているのか、今の今までただジッと正視していた絵馬だった。
………いいや。
絵馬らしき人、だ。
「アタシ………この日が来る事をずっと待ってました。ずっとずっと待ってたんですよ。ずっと、ずっと………来てくれて凄く嬉しいです」
感慨深いといった感じでポツリ、噛み締めるようにポツリ、僕に語りかけてくる。
「エマ………」僕は彼女をそう呼んでいた。呼んでいる、のではなく。
「ユウさん………嬉しい」
時間で言うなら聞き慣れたと表現すべきで、時期で言うなら聞き覚えがあると表現すべき声。丸みのある柔らかなその声は幾分だけ暗く、そして重く沈んでおり、口を動かしにくいのだろうかかなりくぐもってもいたのだけれど、間違いなく絵馬が所有している声色と一致していた。何より僕の事を『ユウさん』と、呼んでいる事からも誰あろう絵馬とピタリと合致している。
坂本夕暮、さかもとゆうぐれ。
これが、僕の氏名だ。
「そ、そっか………」いつの頃からだろうか、絵馬は僕をそう呼んでいた。僕をそう呼ぶのは絵馬だけだ。だからきっと絵馬は、今に至るまでの間もずっとずっと変わる事なくそう呼び続けていたのだろう………いいや、呼び続けているのだろう。返答に窮した僕は中途半端な言葉しか出せず、それを誤魔化す為に無理やり微笑んだ。どうやら、視線の先に存在している人物が絵馬その人であると受け入れなければならないようだ。
「はい。ずっとです」
島崎絵馬。
「………うん」しまざきえま。それが彼女の本名。久しぶりの再会にあたってこのような設定を加味されるなんて、運命とは時に残酷なモノだなと思わざるをえない。
「ずっとずっと、ずっと会いたかったです」
続く絵馬の声は、一転して弾みを帯びていた。その表情は覆い隠されている為に定かではないのだけれど、嬉しそうだという事はその声色それだけでも存分に判った。そして、言い終わるや否や僕に向かって駆けてく、って、え? その状態から察するにそんな、
「ユウ、さっ! あうっ!」
ほら、やっぱりだよ全く!
「ちょっ、エマ!」駆けてこれたのは僅かに二歩。よろよろ、がくがく、わなわな。と、崩れていく絵馬を大慌てで駆け寄ってなんとか支える。絵馬が駆け出した瞬間、そんな姿で危ないのではと反射的に感じたので、その分だけ早く行動に移せた結果、床に衝突してしまうという事態はどうにか回避する事が出来た。
「間に合って良かった………」条件反射なのか、おもわずホッとする。
「はう、う、ありがとうです………こんな姿でゴメンなさい。でもこうなる事で会えたんですから、こうなって幸せです」
こんな姿。そう、そんな姿。僕が電話で聞いていた事は、絵馬が左手首を傷つけて自殺を図ったという事だけだった。それなのに眼前の絵馬は、目視可能な範囲の殆どが包帯でグルグル巻きになっている。例えば目や口など部分的に隙間を残しているのみの、見るからにとても痛々しい姿。声を聴くまではこれは夢だと思いたかったくらいだった。しかも、絵馬を抱えている事で着ている衣類の隙間から意図せずにチラリ。それと、それによる感触。これらを合わせて推測するとたぶん、包帯は全身に及んでいる。手首を傷つけて全身に包帯とは、はたして絵馬に何があったというのだろう? あ、痩せたのか窶れたのか更に華奢になったような気がする。詰まるところそれらをひっくるめてみるとたぶんきっと、僕のせいなんだろうなぁ………。
「ユウさんに抱きしめてもらったのって凄い久しぶり………幸せ」
前のめりに倒れゆく絵馬を大慌ての大急ぎで受けとめたのでたしかにギュッと抱きしめるような形になってしまったのだけれど、会話としては不成立。返答に困る発言を無自覚に繰り出すところはあの頃と変わっていないようです。
「え、あ、ゴメン。痛むか?」しかし僕は、あの頃みたく絵馬に合わせるような事はせず、都合上として仕方のない事ではあったもののギュッてしてしまった事を詫びて離れようとする。
「え、そ、そんな事ないですお!」
しかし絵馬はたぶんきっとそうはさせまいと思ったのだろう、僕の首に両の腕を絡める事でそれを拒否………いいや、阻止してきた。自然と、あの頃の記憶が更に蘇る。多大にして屈強な恐怖と共に。
「でもこの様子だとさ、こうして触れてたら痛いだろ? ゴメンな」とかなんとか苛まれつつも、僕は出来うる限りの平静さを装って素直に詫びた。あの頃とは違い、詫びる事は出来たから。あの頃はいつだって、そのまま口を塞がれる事態に陥っていたから………どのように塞がれたかは勿論の事、敢えて説明するまでもない。
「そんな事ないもん! あ、えっと、その、全然そんな事ないです。そんな事ないですお。だから、だからこのままでいてください。お願いですから、お願いですからこのまま………」
僕による詫びとその後の挙動に対して絵馬は、よりいっそうのチカラを込めて反発した。しかしそのすぐ後にそんな自身を取り繕うかのように発した絵馬のその声色は、甘える時に見せるそれへとガラリと変わった。だからなのか、気持ちとしては繋がっているのだけれど再び、最後が会話不成立になっていた。
「いやその………あの、さ」僕は途端に逡巡する。やっぱり絵馬は未だそのつもりなのか………と、完全に実感したからなのだけれど、突き放すのも受け入れるのも正解ではない場合はどうすれば良いのかという難問に対しての解答が判らなかったからというのもあった。
「ユウさん、大好きですお。アタシ、アタシはずっと、ずっとずっと、ずっとアタシ………」
囁きながら、絵馬の瞳が潤みを増す。その声は甘味を帯びて震え、その身体は甘美な刺激を求めて震え、僕を絡め捕ろうと纏わりついてくる。それは、僕の記憶に色濃く残る仕草と同じだった。
「………」故に、逡巡が困惑に変わる。絵馬のそれとは違う種類の震えが、僕という僕の身体の至る所で自己主張を始める。
「会いたくてたまらなかったです。寂しかったです。悲しかったです。苦しかったです」
言いながら、絵馬が眼前僅か先まで顔を寄せてくる。
「………」故に、困惑が焦燥を育てる。力任せに突き放して逃げ出してしまえと心が叫ぶ。しかし、それを身体に命令する余裕を脳が持ち合わせておらず、僕はただただ絵馬のなすがままといった有り様で震えるのみ。
「このまま離れたくないよぉ………」
絵馬の吐息が口元にかかる。絵馬の瞳が妖しさを増す。
「………」故に、焦燥が記憶とリンクする。そして、それだけを映像化して脳内を独占する。
「もう、このまま………」
は、な、れ、て、な、ん、か、
あ、げ、な、い、か、ら、ね。
と、唇が動いたのが判った。
「………」故に、更なる恐怖を呼び覚ます。震えが増していき、ガクガクと揺れる。
「ユウ、さぁ………ん」
僕の唇に、絵馬の唇が触れる。
「………」僕は動けない。
「ん、んっ、んぐ」
僕の唇に、絵馬の唇が吸いつく。
「………」僕は動けない。
「んっ、はあ、んぐ、はあ、はあ、きっと、ひゃん、はあ、はあ、あむ、はむ、んく、きっとしゃん、はう、あう」
僕の唇を解放するや否や、今度は舌が顔中を這う。
じゅる。
れろ。
ねちゃ。
と、いう有り難くない効果音を奏でながら。そして、吐息があからさまに荒くなっていく。
「………」僕は動けない。
「んく………っ、はあ、はあ」
ひとしきり堪能して取り敢えず満足したのだろうか、それとも名残惜しく感じつつも次のターンに進む事にしたのか、絵馬は僕を味わう事をヤメて再び僕を見つめる。乱れた吐息が僕の顔を這う。
「………」僕は動けない。
「はあ、はあ………ん、大好き」
乱れた吐息を飲み込んですぐ、絵馬は僕への想いを声に乗せた。甘く囁いた。あの頃のように。あの頃みたいに。あの頃のままに。
「………」捕獲され、捕食され、辿り着いた先は後悔。こうなってしまったという事実に五割。こうさせてしまったという事情に五割。絵馬が入院している此処が何故か精神科病棟であるという事からしてみても、絵馬は壊れてしまったのだろうかとそう思わずにはいられないのだけれど………もしもそうであるのなら、それは僕のせいだ。僕のせいで、この僕によって。それを思うと、邪険にはとても出来ない。綺麗事とかいった偽善的な理由ではなく、同情とかいった独善的な感情でもなく、だからと言って愛情なんかでもなくて………やっぱり、後ろめたさなのだろう。罪悪感なのだろう。だからこうして来たんだし。例え、散々に弄んだ挙げ句に飽きたから冷めたから楽しくなくなったからという理由でポイしたと罵られても、僕には言い逃れなんて出来ないのだから。例えそこに、病的なくらいの一途さによって見え隠れする想いの重さが煩わしくなってきたからとかそれさえも突き抜けた時に見せる狂気が怖かったからとかといった僕なりのそうするに足る理由があろうとも、少なくとも絵馬にとってはそれも愛情表現の一つなのだから。
『このままだと、お互いダメになる。だからオレ達、暫く離れた方がイイと思うんだ。だから、さ………』
それは、僕からの別れ話のつもりだった。ズルいヤリ方だとは感じていたのだけれど、正直に告げたりなんかしても面倒な事になるだけなのは判りきっていたので、そう伝え………はい、ただの言い訳です。僕への依存心が強くなっていた絵馬が嫉妬心と執着心に囚われて自暴自棄を繰り返すようにもなっていたので、正直に言うとウンザリしていた。そういう意味で言えば、飽きたとか冷めたとか楽しくなくなったと言うよりも疲れたと言った方が正しいのかもしれない。視覚や聴覚や触覚を刺激する甘美な感触とか同じく淫靡な反応にマンネリ感を抱いていたという最低な自分も少なからず存在していたので、飽きたとか冷めたとか楽しくなくなったという表現も間違いではないのだけれど、何はともあれ。兎にも角にも。理由は様々で色々だと言えるのではないかと………はい、これも言い訳です。詰まるところ、僕はそれで平和的に逃げおおせたと思っていた。
しかし絵馬は、どうやら絵馬は、僕によるそれを別れ話だとは思わなかったようだ。たぶんきっと、少しも。欠片も。僅かほども。今この時に至ってみて察するに、お互いに寄りかかるのではなくて支え合うようになりたいと僕が思っていると受け取ってしまったのかな………いいや、そう受け止めたに違いない。だから頑張ったのだろう。だから耐えようとしたのだろう。
まだかな、と。
まだダメなのかな、と。
もしかしたら、と。
まさか、と。
そんな筈はない、と。
けれど、でも、と。
ううん、でもね、と。
違う、違うよ、と。
でも、やっぱり、と。
きっといつか、と。
………で、壊れた。
「あああの、ユウさん………」
だから此処に居るのだろう。しかも、このような姿で。
「………え、あ、どうした?」全ては僕のせいで。
「アタシってこんなだから、暫くは退院とか出来ないみたいなんです。迷惑かけちゃってゴメンなさい」
申し訳なさそうに、心の底から申し訳なさそうに告げる。迷惑、か………。
「………ううん、大丈夫だよ」罵られて叩かれる筈が、話しをすればする程あの頃と変わらない毎日へと引きずり戻されていく。
「でも、浮気とかしちゃダメですお」
逃げ道を塞いでいく。
「うん………」逃げ道を塞がれていく。
「アタシの事、もう棄てないてくださいね」
そして、トドメの一言。
今この時に至るまで気づかなかった。絵馬は、もう。と、言った。もう、棄てないで。と、そう言った。
「………」いいや、気づけなかったというべき、か。
「やっと会えたのに、また会えないなんてイヤですからね」
病的なまでに執着するほどに僕という人間には魅力なんてないとしか思っていなかったから。
「………」けれどそれは僕から見た僕であって、絵馬から見た僕ではない。
「ここまでしたんですから、ね?」
今この時ここに至るこの場合においては、実際の僕がどういう人間なのかが問題なのではなく、絵馬が想う絵馬が思い込んでいる僕がどういった存在なのかが全てなのだ。
「………」それが、答え。
「判ってもらえたですか? 私の想いの深さ。今度こそ、今度こそ責任とってくださいね? だって、これなら問題ないでしょ? これなら………これなら貰ってくれるですか?」
絵馬の目が、声が、様子が、何もかもが、あの頃よりも格段に怖い。あの頃にも増して怖い。
「………」言葉を発しようとするのだけれど、何を言えばイイのか思いつかず、ただただパクパク、ガクガクと、身体の震えと同調する。
「来てくれたって事は、勿論そういう事ですよね?」
これが、答え。
「………」そこまで僕を好きなのか、それとも相手がたまたま僕だっただけで実のところ誰でも構わないのか、その心根にある感情は島崎絵馬ではない僕には判らない。
「アタシ、ユウさんの言うとおりにしたです。ここまでしました。何でも言うとおりにするです。だからお願いですユウさん………こんな姿になっちゃったアタシを支えてください。アタシも頑張ってユウさんを支えますから」
やっぱりそうだ。支え合うという関係性を作る為に………こんな事まで。
「………」僕はこの先、どうすれば良いのだろう? 自身の事なのにそれすらも判らない。
「ねぇ、ユウさん………」
怖い。
「………」絵馬が怖いよ。
「ユウさぁーん♪」
誰か助けて。
僕を………。
………。
………。