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「――ようするにだ、キミは女装好きのカマ野郎、もしくは、男のくせに乙女の園に入り浸る変態野郎というわけだな」
「違います! あっ、ち、違わないけど、違います!」
真っ赤な顔で否定するもののことがことだけに否定しきれず、駿河は恥じるようにうつむいている。なんともまあ、いじりがいのあることだ。どれ、もう少し様子を見てみるとするか。
「ふむ、違うが違わない。ということはだ。女装好きの変態野郎ということなのだね」
「そうじゃありません!」
私の軽口に駿河は真面目に怒鳴って否定した。律儀なものだ。からかいがいが実にある。手のひらの中で他人が踊るというのは存外に愉悦らしい。今ならなぜ母親という人種が隠していたアダルトなBL本を机の上に置くのかわかる気がする。なるほど、これが成長というやつか。ということはお赤飯の出番か。だが待て、それはきっかけとなる彼に与えられるべきではないのか。ならば、アレがふさわしいか。
「駿河くん、今日のおかずにこんにゃくを進呈しよう。二つの意味でのオカズだぞ、まさに一石二鳥だ!」
「何に使わせるつもりですか!」
「そんなもの、ナニに決まっているじゃないか!」
「もう黙ってください!」
「うむ、アレだな、いわゆる、口より手を動かす――」
「――本当に黙ってください!」
威嚇するように目を釣り上げ駿河は声を荒げるが、その顔は湯気が今にも出そうなほど赤い。よほど恥ずかしいのだろう。実に初々しいことだ。それに加えてさすが男子だ。まだ荒削りだがツッコミはお手の物だな。いくら私たち女子が突っ込まれてなんぼだとは言え、この学校では賞賛に値する対応だ。
久々に鼓動が早くなるのを抑えられない。まだまだだな私も。だあそれも仕方ないだろう。なにせ久々に下ネタを口にできたのだ。思っているだけではなく、口にできたということは大事なことだ。下ネタ的にも。
「駿河くん、私はときめいてきたよ!」
「なんで、そうなるんですか!」