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 目を覚ますと、真白い天井が視界に入った。続いて鼻腔を消毒液の匂いがくすぐる。そうして、気づく。ここが保健室だと。

「……私はどうして、こんな場所にいるんだ」

 どうも記憶が曖昧だ。何か衝撃的なものを見た気はするが、そのせいで意識がぼやけている。そもそも、誰が私をここに運んでくれたんだ? 胡乱げな記憶を思い返していると白いドアが開き、駿河蒼が入室してきた。なぜだろう、なぜか脳裏に象が思い浮かぶ。しかもなぜか、これでもかというくらいの勢いで花を振り回している。

「よかった! 気がついたんですね! 養護教諭の方は留守にしているようで、寝かすことくらいしかできなかったんですが無事だったみたいでよかったです!」

 駿河はそう言うと、安堵したかのように息を吐き微笑んだ。花のような笑という言葉が実によく似合う笑顔だった。まさに女性らしいものなのだが、どうしてだろう、違和感が拭えない。何かを間違えているような、そんな気がしてならない。

 とりあえず、疑問は置いておくとして、まずは礼を言うべきだろう。話を聞く限り、わざわざここまで運んできてくれたのだ。感謝の一つも伝えないでは、無作法すぎるというものだろう。

「君の話ぶりからするに、ここに私を運んでくれたみたいだね。礼を言わせてもらう。ありがとう。理由は覚えていないのだが、なぜだか気を失ってしまったみたいでね」

 苦笑を混ぜそう口にすると、目を見開き、駿河は驚きの表情を浮かべた。

「お、覚えていないんですか?」

「うむ、全くと言って記憶にない。ただ――」

「――ただ?」

 私が眉根を寄せると、駿河も釣られるように首を傾げた。

「なぜか、象が頭から離れないんだ。こうパオーンと大変元気な象の姿がね、脳裏に浮かぶんだよ」

「ぞ、ぞうですか!」

 私の身に起きたささやかなミステリーを話すと、なぜか駿河は慌て顔にも朱が走っていた。今の話のどこに頬を染める部分があったのだろう。まあ性癖は人それぞれだ、触れないことが優しさだろう。

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