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「おかげではなく、『せい』というところがいいな! 流石だよ、駿河くん!」

「……なんかもう、怒る気が失せました」

 げんなりという言葉を体現するかのように、駿河は肩を落としている。理由はよくわからないが、センチメンタルな性格か、ナーバスな状態なのかもしれないな。まあそれも、無理ないことだろう。なにせ、性別を偽り女子高で過ごしているのだ。疲れも溜まるだろうし、精神も摩耗していくだろう。不器用なものだな。ろくに発散できず、心だけが擦り切れていくというのは。擦り切れるほど、発散させたいものは別にあるだろうに。よし、ここは私が一肌脱ぐとしよう。それもまた礼の一つだ。

 私はポケットからポケットティッシュを取り出すと、彼の手を取り握らせた。

「駿河くん、これで全てを吐き出すといい。そうすれば気も楽になるというものだよ」

「――気を使っているつもりなんでしょうけど、逆効果ですからね」

「ん? 罵って欲しいということか? 中々コアな趣味をしているな」

「そういうことじゃありません!」

 駿河はそう怒鳴ると、片手で顔を覆い疲れたようにため息をついた。怒りに疲労がこう何度も色濃く出るということは、それほど女装というものが大変なのだろう。確かにバレないようにするということは、多大な労力を使うものだ。私も十八禁のBL本を購入するときは、少女漫画二冊に挟み少しでもカモフラージュできるよう細心の注意を払うものだ。

 うん、ここは少しでも彼の役に立てるよう、なぜ女装をしているのか聞くべきだろう。もしかしたら、下衆な理由かもしれないがその時は脅して、ツッコミ係にすればいいし、何か理由があるのだとしたら手伝えばいい。その際に会話を楽しむのは、ささやかな報酬というやつだろう。完璧だ。何一つ、私にデメリットがない。

「時に駿河くん、一つ質問をしていいかい?」

「……下ネタじゃなければどうぞ」

 うさんくさげなものを見るような細めた目で彼は、彼は私を見据えた。何を言っているんだろう。下ネタは生き様だ。わざわざ、了解を取るようなものではない。言うと決めた時にはもうすでに口にしているのだよ。そのことを言葉ではなく魂で理解したまえ。

「そんな高尚なことじゃないさ。なぜキミが女装しているのかが聞きたくてね」

 

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