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いっそう

いっそう、鳥であればよかった

翼に風を受けて飛びたかった

何にも縛られず、空に居たかった

気の向くままに木の実と水を啄み

やがて死にたかった


いっそう、野ねずみであればよかった

木々草花の中を駆け抜けたかった

必死に敵から逃れたかった

いつか自分の子供をもうけて

やがて死にたかった


いっそう、獅子であればよかった

灼熱の草原を闊歩したかった

生きるために命を食らいたかった

空腹のために狩りをして

やがて死にたかった


いっそう、花であればよかった

道端に咲く一輪でありたかった

風に揺蕩い流れていたかった

美しく咲いていつか散り

やがて死にたかった


いっそう、空であればよかった

ただただ蒼くありたかった

その身に雲を浮かべたかった

刻々と色を変えながら

やがて死にたかった


いっそう、太陽であればよかった

さんさんと光を与えたかった

いつもと変わらずに輝いていたかった

東から昇り西に沈み

やがて死にたかった


いっそう、月であればよかった

暗い夜を照らしたかった

陽の光を受けて輝きたかった

ただそこにあるように浮かび

そして死にたかった


いっそう、人間でなければよかった

何も考えずに生きたかった

己のままにありたかった

純粋に生きて

やがて死にたかった


私は、いっそう人間でなければよかった


そうであれば

私は自分の心を殺さず

私は後悔などなく

私は義務のままに生きる人間にならなかっただろう


私は、いっそう人間でなければよかった


そうであれば

私は友と夢を語らい

私は希望を胸に抱いて

私は純粋に生き生きとした人間になれただろう


こんな苦悩を、後悔を、屈辱を、憎悪を得るのであれば


私は


私は


いっそう、死んでしまえばよかった

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