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アドルフィーネとアドルフ 中 編

アドルフ・アドルフィーネ視点




 今日は待ちに待った狩りの日だ。本当はもっと前に連れて行ってほしかったのに、俺が来るとフィーもついて来るからって、14歳になるまで待たされた。父さんは絶対にフィーに甘いと思う。


 朝の暗いうちから起き出して、愛用の弓と短剣、それに、もしもの時の為の非常食と水。まあ、必要無いだろうけど、用意しとかないと連れて行ってもらえなくなるかもしれないし、ちゃんとフィーの分も用意してやらなくちゃ。


 食事を簡単に済ませて三人で家を出る。父さん一人なら翼であっという間なんだろうけど、俺とフィーはまだうまく飛べないから三人一緒に並んで歩く。


 翼人族は成人を過ぎたころに上手く飛べるようになるから、後少しの辛抱だって父さんが教えてくれた。きっともうじき羽も大きく生え変わる。


 絶対にフィーより早く飛べるようになってやるんだ。


 道すがら父さんはいろんな話をしてくれた。


 昔、父さんが遠くの町に行った時の話。村の反対側に住んでるシグさん家のお姉さんが今度別の村にお嫁に行く話。これから行く森にいる魔獣の話。そこで採れる薬草の話。たくさんたくさん話したら、ずっと歩きっぱなしだったのにあんまり疲れなかった。


 その森はいつも俺がフィーと薬草をとる森とは雰囲気が全然違って薄暗かった。


 入る前に父さんが俺たち二人を前に真剣に、ゆっくりと言い聞かせるように、決して無理をしない事、無理だと思ったらすぐに逃げる事、離れずに側にいる事、深追いしない事、って、指を折り曲げながら何度も繰り返してた。


 最後に、緊張して強張ってた俺たちに、にっこりと笑いながら、でも、この辺はまだ強い魔獣は出ないから大丈夫だけどね、だって。結構いい性格してるよな。


 森に入ると少し拍子抜けするぐらいに何もなかった。周りの気配に気を配りながらも、父さんが森で採れる薬草をいろいろと教えてくれた。


 どんな場所によく生えてるか、何に効くのか、家でも父さんが採ってきた薬草を使ってずっと教わってたけど、実際に採りながらだとまた違う感じ。


 たまに何かの気配を感じたけど、こっちが警戒する前にみんな逃げて行った。父さんの言ってた通りこの辺ならまだ大丈夫なんだって、すっかり気が緩んだときそいつは現われた。


 その後はよく覚えてない。父さんが必死でそいつを相手しながら逃げろ、逃げろって、叫んでた。


 舞い散る翼、父さんの叫び声、折れた弓、父さんだけなら空に逃げられるのに………。俺たちがいなければ父さんには翼があるのに………。


 俺は必死で腕に抱えた温かいものを引きずって走った。どこに向かっているのかも、腕の中のものが何なのかもその時の俺はわかってなかった。


 ただ、この温かいものだけは守らなくっちゃ、それだけを思って走ってた気がする。


 自分の粗い呼吸の音で気がついた。別に気絶していたわけじゃないのに『気がつく』って変だけど、本当にそんな感じ。


 そしたらお腹と肩がいきなり痛み出して立っていられなくて、折角気がついたのに、今度は本当に意識が薄くなっていく。




 遠くでフィーの声が聞こえた気がした。






     ※  ※  ※






 私の腕の中でアドが血まみれで倒れてた。


 お腹にも肩にも酷い怪我をして……どうしよう。どうしようっ。取り合えず、肩を必死に抑えながらお腹の服を剥ぐ。どうやらお腹の肉は持って行かれてないみたいだ。でも酷い怪我。肩の方はお腹より酷そうに見える。


 自分の体を必死に探ると、腰に括りつけてあった短剣が無事だった。私の服を切り裂いて止血用の布を作る。本当は荷物の中に傷薬と綺麗な布を入れてあったんだけど、今は私もアドも何も持ってなかった。


 取り合えず、お父さんに習った止血をしてアドを横にする。


 アドがこんなに重たいなんて、………布を巻くのに上半身を持ち上げただけで、息がゼーゼーいってる。




 アドハキゼツシテル、ワタシハアドヲミテル、ワタシハアドノシケツヲシタ、ツギニスルコトハ、ツギニスルコトハ…………。




 考えちゃダメ、考えちゃダメ、何も思い出しちゃダメ。私の頭はおかしなフレーズを延々と繰り返す。


 すぐ側で草がガザリとなった。私は全然気付かなかった。恐いのは魔獣だけじゃなかったのに。いきなり頭が痛くなって、私の意識は遠ざかって行った。


 でも、………ああ、やっと眠れる。


 どこかでそう思った気がする。








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