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転生魔女と天才聖女 ~居場所をなくした私たち二人が、最強の相棒となって幸せを見つけにいく物語  作者: 汐柳伊織


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46.任務達成に驚く大人たち。そして報酬に笑う幼女二人

「――神の恵みだっ」


「女神アイシス様! 感謝しますっ。この()()()、ありがたく頂戴いたします!」


 村に戻ろうとしたら、なんだかよくわからないけれど、倒れたつるに群がっていた人たちがいっせいに(ひざまず)き、いきなり天に祈りを捧げ始めてしまった。


 イセリアさんが言うには、どうやらわたしがやらかした拘束魔術で出てきた植物は、この村で普通に作られているカーボと呼ばれるウリ科の野菜のものだったらしい。


 それが、わたしの暴走魔術によって、通常の数倍もの大きさに成長してしまい、結果的に、できた実まで巨大になったそうな。


 なんでそのカーボという植物がつるとして出てきたのかはわからない。


 イセリアさん曰く、村の外に農園があって、そこから村の中にカーボを運んでくることが多いから、そのときに種でも落ちたのではないかとのことだったけれど、すべては謎のまま。ただ、


(村に恵みをもたらすとか。あんたの暴走もたまには人の役に立つものね)


 頬をひくつかせながら、話を聞いていたわたしに向かってすかさずクロニャンが揶揄してきたため、


(やめてぇっ。こっぱずかしいからやめてっ)


 思わずそう悲鳴を上げてしまうわたしだった。


 村の北門を潜る際、もう一度、つるの後処理やら実の収穫に大わらわになっていた村人たちを振り返った。


 彼らに取り囲まれたカーボのつるには、まだ、色とりどりの花が咲き乱れていた。


 どうやら村人たちは普段から接していて慣れているからか、花粉にやられている風には見えなかったけれど、それでも、美しい花には毒がある。


 そんなことを彷彿とさせる、花火のように華やかな花々だった。






 村に戻ったわたしたちはそのままの流れで、イセリアさんとともに冒険者ギルドへと足を運んだ。


 道中、さっきの神官たちのことが話題にあがったけれど、やっぱりわたしたちのことを探しにきた、ザルツークからの追っ手のようだった。


 イセリアさんの話だと、彼らがわたしたちの名前や人相、背格好を告げて、根掘り葉掘り聞き出そうとしていたらしい。


 しかし、わたしたちが訳ありで旅をしていると事前に話してあったからか、詳しくは説明していなかったのにもかかわらず、気を利かせてくれて、「こっちには来ていない」とそう突っぱねてくれたらしい。


 そのせいで彼らと揉めて、あんなことになってしまったらしい。


 ホントにごめんなさい……!


 そして、「すっごく感謝してますっ。ありがとうございます!」


 わたしたちは自分たちの諸事情を詳しく伝えられなかったこともあり、少し気まずかったものの、ひたすら頭を下げて感謝した。


 そのうえで、採集してきたルアン魔鉱石を早速、イセリアさんに鑑定してもらった。


「……ホントに、あんたたちには驚かされることばかりだよ。まさかこんなに取ってくるだなんて思いもしなかったからね。しかもなんだい、この純度。こんなの見たことないよ……」


 カウンターの中に入ったイセリアさんは、村の外で浮かべていたときとまったく同じような驚きの(まなこ)を見せながら、ひとつひとつ、石を物色していった。


「そんなにその石、凄いんですか?」


「当たり前じゃないか。ルアン魔鉱石自体は現状、どの国でもあまり使い道がないと言われているくらい、含有魔力量が低い魔鉱石だから、価値としては大したことはないのよ。だけれど、それはあくまでも、魔力量が少ない場合に限ってのこと。あたしは専門家じゃないからよくわからないけど、どう考えてもこれは見たことがないくらいの純度の高さだからね。これだけあれば、依頼主が求めてた最低数量をさっ引いたとしても、全部売れば相当な金額になるんじゃないかい?」


「そんなにですか?」


「あぁ、間違いないね。うちの方ではちょっと怖くて引き取れないけど、おそらく、ヘルミネアのとこもってけば引き取ってくれるんじゃないかい? 五十万ゴル――金貨五枚くらいで」


「金貨五枚!?」


 わたしはぼそっと告げられたその台詞に、ひとり茫然となるのだった。






「今回は本当にお疲れさん。今日はゆっくり身体休めるんだよ」


「はい! 何から何までありがとうございましたっ」


「ありがとなのです!」


 わたしとリアは、依頼達成の証文と依頼報酬十枚銀貨五枚――この国の貨幣価値で、五万ゴルをもらうと、感謝の言葉を告げながらギルドをあとにした。


 そしてそのままお隣の魔術師協会へと向かう。


「あら。聞いたわよ。いろいろ大変だったみたいじゃない」


 中に入るなり、とんがり帽子のお姉さん、ヘルミネアさんが、例によって飄々(ひょうひょう)としながらも、どこか心配そうにわたしたちに声をかけてきた。


「はい。本当に苦労しました。ですが、なんとか無事、ギルドの依頼を達成してきました。これが証文となります」


 わたしたちは早速、手に持っていた達成票をカウンター内にいたヘルミネアさんに見せた。


 彼女はしばらくの間、神経質にそれを眺めていたけれど、最後には笑顔でわたしたちを見た。


「よくがんばったわね。イセリアからは依頼内容聞いてたけど、まさか本当に終わらせてしまうとは思ってもみなかったわよ。あそこ、この村の冒険者でも、誰も入れないような酷い有様になってるって話だからね。ギルドを紹介したのはわたしだけど、さすがに肝を冷やしたわよ」


「はは……ご心配おかけして申し訳ありませんでした。ですが魔物とも運良く遭遇することがなかったので、こうして無事、完了させることができました」


 わたしは顔ではにこにこ笑顔、心の中では汗をかきながら、なんとかやり過ごそうと苦慮した。


 まさか、魔術暴走させたり、ヴィーが岩盤ぶち抜いてクレーターできたとか、口が裂けても言えるはずがない。


「ま、無事ならそれでいいわ。それで、イセリアから魔鉱石の鑑定がどうとか書いてあるけど、早速見せてもらえる? 品がよければこちらで買い取るから」


「あ、はい!」


 わたしたちは言われるままに革袋ごと魔鉱石を渡したのだけれど、やっぱり、ヘルミネアさんまで目の色変えた。


 それだけじゃない。血相変えてカウンターから飛び出してくると、両膝立ちになって、わたしの肩を揺さぶり始めた。


「ちょっとこれっ、どこで手に入れたの!? 詳しく教えて!」


「へ……?」


 あまりにも想定外な反応を見せたため、呆気にとられてしまった。


 そうこうするうちに、わたしはぶんぶん振り回されてしまう。


「なんなのよ、これ! とんでもなく膨大な魔力含んでるじゃない! ホントにこれ、ルアン魔鉱石なの!?」


「そ、そんなこと言われましても、指定された場所で普通に取ってきただけですよ?」


 まさかヴィーが岩盤ぶち抜いて、掘り起こしたなどと、口が裂けても言えない。


 もっと言えば、氷の世界になっただなんてとてもとても。


 そんなことを魔術に詳しいはずのこの人に言おうものなら、別の意味で何が起こるかわかったものではない。


 魔鉱石だけでこれなのだ。


 きっと、目をキラキラ輝かせながら、わたしのことを改造手術しようとするに決まっている。


 こわっ。


「はぁ……その様子だと、嘘はついてなさそうね」


「も、もちろんですよっ。あはは……嫌ですよぉ、ヘルミネアさんったら」


 ひたすら乾いた笑い声しか上げることのできなかったわたしに、彼女はもう一度派手な溜息をついたのだけれど、そんなときだった。


 何を思ったのか、それまでぽかんとしていただけだったリアが、


「メっ。アネット、虐めちゃダメっ」


 眉を吊り上げながら、そんなことを言って、ヘルミネアさんをわたしから引き剥がした。


 そしてそのまま、間に割って入って両手を広げる。


 どうやら文字通り、わたしが虐められていると思ったらしい。


 なんて優しい子!


 久しぶりに見る彼女のお姉さん振りに、心がじ~んとなっていると。


「や、やぁねぇ。そんなじゃないわよ。おほほほ」


 彼女も引きつった笑みを浮かべながら、気まずそうにカウンター内へと再び戻っていくのだった。そして、


「――はい。これ代金ね。それからライセンスカードも書き換えといたから。これであなたたちは晴れて無事、正式に魔術師として登録されたわ」


 そう言って、イセリアさんが言っていたように魔鉱石の引き取り価格金貨五枚と、品物が相当品質がよかったからなんとかといって、追加で金貨二枚も色をつけてもらえた。


 そして、渡されたライセンスカード。


 つい先程まで、そこには仮登録の文字が書かれていたけれど、今はもうどこにもなかった。


 ――下級魔術師。


 そこにはそう書かれていた。


 わたしとリアは顔を見合わせ、どちらからともなく笑った。

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