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転生魔女と天才聖女 ~居場所をなくした私たち二人が、最強の相棒となって幸せを見つけにいく物語  作者: 汐柳伊織


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44/48

43.後の祭りと本当のお祭り騒ぎ。そして新たな――

 ――見渡す限りのクレーターの山。そして、抉り取られた草原の至る所から立ち上る黒煙と、凍りついた大地。


「え……っと……」


 わたしは疲れていることもすっかり忘れて、茫然としながらその光景を眺めていた。


「え……っと……これ、何が起こったの……? 誰の仕業……?」


 頬を引きつらせながらぼそっと問いかけるも、


(あんたでしょ)


 クロニャンとヴィーとリアが一声にこちらを向いて、代表してわたしの相棒が鋭いツッコミを入れてきた。


 ……うん。まぁ、なんとなく気がついていたけれど……。


「ていうか、魔物は? 魔物の群れはどこ行ったの? どこにも見当たらないんだけど……」


 クロニャンたちの反応を見るに、どうやら我を忘れて、めちゃくちゃに魔法――魔術を連発していたらしく、本当に酷い有様になっていたけれど、肝心の魔物の死骸? そう言ったものがまったく見受けられなかった。


 文字通り杖を支えに立ち上がったわたしは、荒い呼吸を整えつつも、困惑しながら周囲を眺めた。しかし、そんなわたしにクロニャンが溜息をつく。


(あんたねぇ……本当に覚えていないの? ていうかまぁ、恐怖に怯えて目を瞑ってたみたいだから気づいてなかったのかもだけれど、あんたがめちゃくちゃに魔術ぶっ放したせいで、片っ端から消し炭になったわよ)


「へ……? け、消し炭? どういうこと? なんで?」


(知らないわよ。たぶん、いつも以上に火力調整ミスって、あほみたいに強力な一撃でもお見舞いしたんじゃないの? それで耐えきれずに死骸まで消滅した――ていうかまぁ、魔物の場合は魔獣と違って、死ぬと核だけ残して跡形も残らず消滅しちゃうんだけどね)


「そ、そうなの……?」


 困惑気味に呟くと、


「本当に、凄かったのです! アネットの魔法、最高なのですっ。ちゅど~ん、かっこよかったのです!」


 そう興奮したようにリアがはしゃぎながら、わたしの首にむしゃぶりついてきた。


 ちょっとっ……疲れてるんだからやめてよ……。


 だけれど。


 わたしは改めて周囲を見渡した。


 本当に酷いことになっていた。誰よ、こんなことしたの。


 まぁ、わたしらしいんですけど。


 でも、正直覚えてないから、突っ込まれても実感がわかないという。


「それにしてもこれ……もし本当にわたしの仕業なら、人のこと言えないよね……」


 大災害になるからやめろだなんて、クロニャンたちに言っておきながらこれだもん。


 ただ、幸いだったのが同時に氷結魔術を使っていたらしかったこと。


 一歩間違えたら、火魔術で火事になるところだった。


「でも、これ見た通りすがりの人とか、どう思うんだろう……」


 再び頬をひくつかせながらぶつぶつ言っていると、


(まぁ、さすがに駆け出しの幼女が魔術ぶっ放した跡だとは誰も信じないでしょうね)


「で、でしょうねぇ~」


 他人事(ひとごと)みたいに答えるわたし。


(おそらくだが、上級魔術師の上に位置する、精霊級とかエフェラムとかいうランクに相当する人間がやったと判断されるのではないか?)


「精霊級って……」


 無責任な台詞を吐くヴィー。


 下級や中級以外にもいろいろランクがあるみたいだけれど、わたしに魔術を教えてくれたジョアンナですら中級なのに、さらにその数ランク上とかありえないんですけど。


「バレたら絶対やばいよね、これ……」


 何か聞かれても知らん顔決め込んでおかないと。


(まぁともかく、何事もなくすんでよかったってところね。あんたのお陰で村が救われたのは事実なんだし。たぶん、おそらくだけど、わたしの読みだと、さっきので森の魔物全滅したんじゃないかしら?)


 ……全滅って……何そのいらない情報。やばすぎるんですけど……。


「だけれど、こうなったのももとはといえば全部ヴィーのせいよね。森の中で大暴れしたからこんなことになっちゃったんじゃないの?」


 目を細めながらジロリと見つめるも、


(ふふん。我はやるべきことをやったまでのこと。大いに褒め称えるがよいぞ)


 そんなことを言って、なぜか得意げに胸を張るもふもふ狼さんだった。






「はぁ……」


 一難去り、わたしはげっそりしながら軽く溜息をついたあと、再び帰路につくべく、クロニャンの背に乗ろうした。


 しかし、そんなわたしに、思い出したように彼女が声をかけてくる。


(あ、そうそう。言い忘れてたけど、ちゃんと核を回収しておきなさいよ?)


「え? 核?」


(なんだ。忘れちゃったの? ジョアンナから教えてもらったでしょ。魔物は動力源となっている魔力の塊の核、即ち魔結晶を体内に保有しているから生きていられるって。つまり、さっきそれを破壊したから魔物は消滅したの。そして魔結晶はちゃんとした場所で売ればお金になるから、あんたたちにとっては貴重な収入源になるわよ)


「そうなの?」


 わたしとリアは互いにぽかんとしながらも、次の瞬間にはすっかり疲れてるのも忘れてお祭り騒ぎとなっていた。


「お金っ……! お金お金お金っ。いっぱいかき集めておいしいご飯食べるよ、リア!」


「わかったのです!」


 いまだにくすぶる大地をそこら中駆けずり回りながら、わたしたちはそう、瞳を輝かせて、魔結晶と呼ばれる黒曜石みたいな掌大の破片を集め続けるのだった。






 ギルドで預かった革袋とは別に、もともと持っていた携帯用革袋にいっぱい石を詰め込んだわたしたちは、さすがにはしゃぎすぎたようで、すっかりくたびれ果ててしまった。


 そのため、クロニャンたちの背に乗り帰路につく頃には背中の上でぐったりしていた。


(まったく。あんたは魔力使い過ぎてヘロヘロになっているっていうのに、暴れすぎなのよ)


(仕方がないじゃない……。クロニャンがお金になるなんて言うから……)


 お金の大切さを人一倍理解しているわたしにとって、あれはすべて宝の山だ。うち捨てるなんてとんでもない。


 たとえ、それがまったくお腹の足しにならないような代物であったとしても、放っておくことなんかできるはずがない。


(まぁ、気持ちはわかるけどねぇ――と、まずいわね)


(へ……?)


 呑気(のんき)に会話していたら、急にクロニャンの雰囲気が変わった。


 殺気だってはいなかったけれど、それまでゆっくり歩いてくれていた彼女が、(きびす)を返すように、大慌てで方向転換した。


「ちょ、ちょっとっ……どうしたのよ、急に……!」


(どうしたもこうしたもないわよ。さっきあんたが大暴れしたからでしょ)


 そう言って、クロニャンはあと少しで村の柵に辿り着くというタイミングで、近くに生えていた巨木の陰に身を潜めた。


「どうしたです?」


 あとを追うように、ヴィーとリアも、巨木と草木の中に身を隠した。


 クロニャンから降りたわたしは前方の様子を窺った。


「あれ……? あの人たちって、イセリアさんたち……? なんであんなにいっぱい、村の外に出てきてるの?」


(あんたがそれを言う?)


「へ?」


 なんだかよくわからなかったけれど、北へとそよぐ草原の向こう側――北門付近に大勢村人が出てきていた。


 今いる場所は、ちょうど村の西側に位置する柵から数メートル離れた大樹辺りだったから、ここからだと表情まではわからない。


 服装などの特徴からしか判断できなかったけれど、みんなこちら側――正確に言えば、森の方を見つめているような気がした。


「……て、まさかこれって、わたしのせい……?」


(はぁ……今頃気がついたの? そうよ。さっきあんたが魔術ボコすかぶっ放して、大爆発させたから、その音にびっくりしてみんな出てきたんでしょ)


「そ、そんなこと言ったって仕方がないじゃない……! あのときは本当に怖かったんだからっ。ていうか、そんなに音酷かったの?」


(酷いなんてものじゃなかったわよ)


「そうそ。アネットのちゅど~ん、凄かったのです」


 そう呆れるクロニャンとは対照的に、身を潜めながらも、きゃっきゃしているリア。しかし、


(呑気に戯れている場合ではなさそうだぞ)


「え?」


 わたしは、どこか警戒感をあらわにしているヴィーの言葉を受け、彼が見つめる場所を凝視した。


 視線の先。イセリアさんたちらしき村人の間を割って出るようにして、誰かが進み出てきた。


「あれは……!」


 白いローブを身につけた兵士のような人たち。


 ――ノルド聖教会に所属する神官。


 槍を手にした彼ら数人が、何かを探すように散開し始めた。

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