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転生魔女と天才聖女 ~居場所をなくした私たち二人が、最強の相棒となって幸せを見つけにいく物語  作者: 汐柳伊織


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41.憩いの時間、そして青天の霹靂

「……はぁ……やっと出てこれた……疲れたぁ……」


 ルアン魔鉱石の採集を終えたわたしたちは、一路、来た道を辿ってなんとか無事、森の外へと帰ってこれた。


「ホントに、一時はどうなるかと思ったわよ……」


 今回のギルドの仕事は最初から大変なものになるとはわかっていたけれど、ここまで酷いことになるとは夢にも思っていなかったから、余計に疲労感が半端なかった。


 結局、なんだかんだで、お目当ての魔鉱石をたくさん採集することができたからよかったものの、骨折り損になっていたらどうなっていたことか。


 ――だけれど、なんなのよ、あれ!


 結果よければすべてよしとはいうものの、さすがにヴィーが繰り出したあの一撃だけは怖すぎた。


 だって、あれだけ固くてびくともしなかった岩盤が、意図もたやすく豆腐みたいにぐちゃぁって砕け散っちゃうんだもの。


 しかも、ヴィーのせいで、地面がクレーターみたいにえぐれて周辺が大きくひび割れちゃったし……ホントやばすぎる。


 さすが、厄災級と言われるだけのことはある、といったところだけれど――それはそれ、これはこれ。


『ちょっとっ。なんてことするのよっ。危うくわたしたちまで、地割れに巻き込まれるところだったじゃない!』


 当然怒ったけれど、白銀の巨狼さんは我関せず。さっさと石を詰めろと得意満面だった。


 はぁ……まったくもう。


 運良く……ていうか、結界が張ってあったからよかったものの、正直あれ、大怪我確定だったんだからね……。


 溜息つきながらも、あのとき恨めしげに睨んではみたけれど、相変わらずあの大きな狼さんは、鼻息荒く、どや顔のままだった――


 とまぁそんな感じで、結界に弾かれたものや安全な場所から魔鉱石を拾い集めたあとは、特に何事もなく、無事、ここまで戻ってこれたという次第だった。






「それにしても、最初に出会ったあの繭みたいな卵以外、魔物と遭遇しなかったのは本当に運がよかったよね」


「うん。でもちょっと残念。リア、敵と戦いたかったのです」


「ちょっとっ。戦いたかったとか言わないで! 危ないからっ」


 森の外に出たとき、ちょうどお昼になっていたので、宿のおばちゃんからもらったお弁当を食べながら、わたしたちはようやく一呼吸つくことができていた。


 改めて拾い集めてきた魔鉱石が入っている革袋の中を覗き込んだ。


 結局、大量に魔鉱石が取れたものの、わたしたちに持てる分量なんてたかが知れているから、袋の半分にも満たない量しか入っていない。


 最初に入れてあったつぶつぶしか含まれていなかった石ころは、当然全部捨てた。


 代わりに、比べものにならないくらい、そのすべてが真っ青になっている魔鉱石をいっぱい詰め込んである。


 見れば見るほど綺麗な石だった。


 太陽の光を反射させると、中に含まれている粒状の何かがキラキラと光り輝いた。


 クロニャンが言うには、その粒ひとつひとつに、かなりの魔力が含まれているのだとか。


 それ以外の部分にも当然魔力が含まれていて、これが金属みたいな何かに加工されるらしい。


「これ、ひとつくらいもらっちゃってもいいのかな? 初めて受けた依頼だし、宝石みたいで綺麗だから、記念に取っときたいな」


 掌に収まりきらないくらい大きな石を右手に持って太陽にかざしていたら、


「それ、いい考え。リアもこれ、キラキラしてるから、好き」


 お昼を食べ終えた彼女もそんなことを言いながら、大きな瞳と口を目一杯広げて楽しそうに笑った。わたしと同じように、太陽の光に反射させている。


(まぁ、現状、ギルドや国といった公的機関が管理しているわけでもなさそうだし、取ってきたものすべてを渡しなさいとも言われていないみたいだから、ひとつくらい、いいんじゃない? 今後どこかでそれを加工して、宝飾品とか作るっていうのもありだし)


「あ……それいい! 凄くいいよ、クロニャンっ」


 わたしはその考えにわくわくして、リアに向き直った。


「ねぇ、リア。この石、お揃いのペンダントか指輪に加工してもらって、記念品にしようよ!」


「ん。やる。リアもそれほしい!」


 大変な仕事や緊張、不安から解放されたからということもあってか、わたしたちはお互い、心の底から笑い合った。






「さて、それじゃ戻りますか」


 休憩を終えたわたしたちは、来たとき同様途中まではクロニャンたちの背に乗って、帰路につくことにした。


 あとは村に帰って、取ってきた石をギルドに納めれば依頼完了。


 お金もらって、さらに魔術師協会にも報告しに行けば、ようやくわたしたちは正式な魔術師になれる。


 ふふ。


 わたしはこのあとのことをいろいろ想像し、ひとりほくそ笑んだ。


 しかし、そんなうきうき気分は長続きしなかった。


(ん? あれ? クロニャンどうしたの?)


 あと少しで村まで半分というところまで戻ってきたときだった。


 行きとは違い、比較的ゆったりと歩いてくれていたクロニャンとヴィーが、突然歩みを止めて後ろを振り返った。


 心なしか、それまであったのどかな雰囲気がいっさい消えていて、足もとから寒気すら感じるくらいの殺気みたいなものが漂ってきた。


(ふたりとも、今すぐ降りなさい。緊急事態よ)


 そう言って、身体を低くして、乗り降りしやすくしてくれる。


(緊急事態って、いったいなんのこと?)


 クロニャンたちの声があまりにも鋭すぎたせいもあり、和やかな気分が一瞬で吹き飛んでしまった。


 地面に降りたわたしとリアは、お互い身体を寄せ合いながら、顔を見合わせる。


 そんな困惑するわたしたちを守るかのように、クロニャンとヴィーが左右を固めてくれた。


 そして、すでに効力が切れていたクロニャンの結界の代わりに、ヴィーがそれを展開してくれる。けれど、警戒するふたりに、わたしの頭は依然、混乱したままだった。


(ね、ねぇ。ちょっと、いったいなんなの? 何が起きているのかわかりやすく説明して)


 万が一に備えてすぐに逃げられるようにと、リアと手を繋ぎながら、右側にいた真っ黒い巨大猫を見つめた。


(おそらく魔物よ)


(え……?)


 ぽかんとするわたしのあとに続き、ヴィーが口を開く。


(こいつは面白い。あそこにおったときにはあれだけ息を潜めておったというのに、出てきた途端にこれとはな。索敵能力の低い我でもひしひしと感じるわ。大群ひしめく魔物の気配をの)


(た、大群……!? それってどういうこと!?)


 獰猛な眼差しを一心に森へと向けながら舌なめずりしているヴィー。


 わたしは思わず金切り声に近い甲高い声を上げてしまったけれど、


(はぁ……まったく。たぶん、ヴィーが暴れたせいでしょうね。怒ったのか命を脅かされるとでも思ったのか――とにかく、見なさい、あれを。そこの脳筋狼じゃないけれど、本当やばいくらいの数が集まってるわよ。凶悪な魔物どもが)


 そう、バカにしたような、それでいて冷徹な声色を吐き出すクロニャンが示唆した場所をわたしは目を凝らしながらじっと見つめた。


 ここからでもまだ見える、森のたもと。そこに何かがいた。


 十や二十どころではない、本当に数え切れないくらいの何かがいた。


 そしてそれが、風に揺らめく木々とは別に、おかしな動きを見せている。


 ――地響きを伴う左右前後の蠢き。


 その光景を前にして、鳥肌たつのを抑えられなかったわたしにただ一言。


(……あれ、ほっといたらたぶん、エーシェン村は壊滅するでしょうね)


 そう静かに、クロニャンが告げた。


本エピソードをもちまして、「初めてのお仕事編」が終了し、次話以降、「○○編、そして――」に突入していきます。

引き続き、応援、ご愛読のほど、よろしくお願いいたします。

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